第一章
フィルムツーリズムについて
第一節 関心が高まるフィルムツーリズム
『冬のソナタ』『世界の中心で愛を叫ぶ』などの大ヒットを記録したドラマや映画において、そのロケ地が観光スポツトとして注目を集めている。映画『世界の中心で愛を叫ぶ』のロケ地となった
第二節
相次ぐフィルムコミッションの設立
第一項
フィルムコミッションとは
前節で述べたフィルムツーリズムの動きがある一方、フィルムコミッションという組織が、近年日本各地で激増していることについて述べたい。一言に、フィルムコミッションといっても、フィルムコミッション、フィルム・コミッション、ロケーションサービス等、様々な名称が存在するが、本論文ではそれらをまとめて、フィルムコミッション(FC)と表記する。
フィルムコミッション(以下FC)とは、簡単にいうと映画、テレビドラマ、CM等のロケーション撮影を誘致し、その撮影を支援する団体である。以下に、全国フィルム・コミッション連絡協議会が掲げるFCの三原則とFCのサービス内容について載せる。なお、全国フィルム・コミッション連絡協議会とは、会員が、日本各地にあるFCの活動を支援し、映像文化の発展に資することを目的とした組織である。
FCの三原則とは、以下のように示される。
1)非営利公的機関であること。主に都道府県や市町村の自治体や観光協会などの公的機関がFCの事業を行っている。
2)OneStopServiceの提供。当該地域の撮影に関する相談を一括して受ける窓口である。なお、具体的なサービス内容は各団体により異なる。
3)作品の内容は問わない。作品の内容を問わず撮影の相談を受けるが、実際に撮影を支援するかは各候補地の所有者や管理者に提示され、作品内容や条件により拒む場合もある。 (全国フィルム・コミッション連絡協議会ホームページより)
次に、具体的なサービスの内容とは、ロケーション場所に関する情報のほか、宿泊、食事、機材、レンタカー、許可申請についてなど、地域で撮影する際に必要な情報の提供を無償で行うことが挙げられる。また、警察署、公的機関などへの撮影許可手続きの代行、エキストラの手配、撮影の同行などのサービスは個々のFCによって異なってくる。なお、第三項において、高岡フィルムコミッションの活動について述べるので、そこからFCの働きをより詳しく把握していただきたい。
第二項
フィルムコミッションの動向
前項において、FCが日本各地で激増していることについて述べたが、ここではFCのこれまでの動向について確認しておく。
樫村(2005)によると、1940年代にアメリカ、ロサンゼルスで初めてFCが設立し、1967年にはアメリカ国内での設立が急速に広がった。1975年には国際フィルムコミッショナーズ協会(AFCI)が設立され、以来カナダ、ヨーロッパ、オセアニア、香港、釜山など世界各地で設立された。AFCIには2005年時で31カ国約300団体、日本国内でも7団体が加盟している。日本においては、2000年に東京にFC設立研究会、そして大阪に日本で初めてとなるFC、「大阪ロケーション・サービス協議会」が設立され、翌年には全国FC連絡協議会が発足された。全国FC連絡協議会には2006年7月時点で93団体が加盟しており、ここに加盟していないものを含めると100近くのFCが日本にあるといわれている。また、2004年にはアジア・フィルム・コミッションネットワークが設立し、6カ国18団体、日本からは10団体が参加している。(樫村2005)
特に、日本初となる大阪ロケーション協議会が発足した2000年からここ近年に至るまで日本各地におけるFCの設立の動きはめざましい。わずか6年の間に100近くのFCが設立されている。この背景には、ひとつに、既存の組織形態の中で、もともとある自分たちの地域の景観を資源にできるといったFC設立の手軽さ、ふたつに、設立によって生じるメリットを期待する人々の期待の高さが感じられる。 FC設立のメリットとしては、全国フィルム・コミッション連絡協議会によると、地域の情報発信の機会の増加や、撮影隊がその土地に落とす宿泊費や食事代などの「直接的経済効果」、映像を見て訪れた観光客による「間接的経済効果」、映像制作活動による地域文化の創造や向上(全国FC連絡協議会ホームページ)などが挙げられている。
第三項 高岡フィルムコミッションの活動
高岡フィルムコミッション(以下高岡FC)の活動については、社団法人
平成13年、全国で5番目に高岡FCは設立した。事務所は
高岡FCの設立の経緯は、隣県石川県の
FC活動のひとつである、地元高岡へのロケーションの誘致は現在特に行っていない。平成13年の設立時に東京都内の映画会社やテレビ局へパンフレットを郵送したが、その後は一切積極的な誘致活動はしていない。全国FC連絡協議会のホームページから高岡FCのホームページへアクセスできるため、それを見て連絡が来る場合もあるという。FC側からの誘致よりも、都内の映像関係者同士による情報のやりとりがFCを選ぶ上で有力になる場合もある。一度、現地で撮影を経験した制作者側が、東京へ帰ってから、同じ業界の人たちと交流する中で、どこどこでのロケは行い易いなどと話をし合うことで情報が広まり、誘致につながっているという。
平成13年の設立から約5年が経過したが、市の活性化について、北本氏は、手ごたえを感じていない。目に見えての活性化はしていないと述べる。クイズ番組やバラエティ番組など地道なところで露出をし続けることで、市のPRをはかり、活性化というのはその先であると述べていた。一方で、住民たちの協力態度は向上してきているという。以前は、都会の見知らぬ人々が自分たちの町を撮る事に抵抗を感じる人もいたが、最近は、「また来たの?」という感じで撮影があることにも慣れて、あたたかく見守ってくれているようだ。
しかしながら、日本中にFCの設立が相次いでいることに触れると、「(FCの激増について)やめてほしい。正直、うちよりいいところは沢山ある。他のところが本気になれば、都市間競争に勝てっこない。逆にいえば、昔に比べ、FCに対する関心が高まってきている証拠でもある」と冷静な意見を述べていた。
以上のように、活発化するFCの活動とフィルムツーリズムについ述べてきた。日本全国にFCが存在し、邦画やドラマなどの撮影が行われているなか、本論文では、