第4章 インタビュー調査と分析

 

第1節 インタビュー調査の概要

 

今回の調査では、どのような人々がJリーグのチームではない1企業のサッカー部を応援しているのか、またどのような動機や経緯で応援するにいたったかを調べるために、個人に対してインタビュー調査を行った。方法としては、試合の始まる前や、試合の終わった後、アローズ北陸の中心的サポーター(ここではアローズのユニフォームを着ていて、必ず立って応援し、応援歌を声に出して歌ってる人を中心的サポーターと定義し、対象とした)の人々に調査に協力してもらえないかということを話し、了解を得た時点で、その場でインタビューを敢行した。今回お話を聞かせていただいた方は計13人で、北陸電力の社員、社外、または県外の方も含まれている。以下はインタビュー時に用いた軸となる質問項目である。

 

【質問項目】

・いつ頃からファンクラブに入っているのか?

・ファンクラブに入った動機は?

・ファンクラブに入って良かったと思うことは何か?逆に悪かったことは?

・ファンクラブに入って自分自身が変わったことはあるか?

・ファンの動員数について思うことは何か?

・どのくらいのペースで試合を見に来ているか?

Jリーグ入りに対してどう思っているのか?

・アローズ北陸はどのような存在か?

 

 

第2節 インタビュー結果

 

【社員サポーター】

1、■Aさん(男性) 45歳 社員 富山県在住■

いつ頃からファンクラブに入ったのか?何がきっかけでファンクラブに入ったのか?

 たまたま自分の仕事が労務の関係で、当時サッカーを担当していたのがきっかけ。自分も昔サッカーをしていた。当時3部リーグだとか2部リーグにいたときから世話をしていて、もう15年近くやっている。Zさんとは同期入社だが、Zさんのほうが2、3年先にこの仕事をやっていた。当時は会社側から労務のほうに、サッカー関係を担当してくれと頼まれた形。

 北陸電力富山支店の労務課の中に人事担当、労務担当、福祉担当(社員の厚生)があり、福祉がスポーツ関係を担当していたのでサッカーも担当していた。強化スポーツチームというのがあったが、10年前に富山国体が開催されたのをきっかけに今のチームができたようなもの。チームをどんどん強くして、富山国体で優勝しようというのが10年前の計画だった。バレー部も同様。

 ファンクラブ組織ができたのはチーム発足の5年後。北信越リーグに上がるまでに4年かかった。最初の頃は社員だけ(上司や家族)で応援していたというのが現状だったが、ファンクラブを組織してからは社外にもPRし、社外の人が次に友達を連れてきたりという形で増えていった。

 自分はイベント関係(激励会、総会)を担当していて、ファンクラブ会計の責任者でもある。会計の仕事としては、応援部のZさんとタイアップして遠征費を組んだり、バスツアーを組んだりしている。

 ファンクラブの中には総務部、応援部、広報部があり、自分は総務部に属している。応援部は毎試合の応援団の組織運営を行っていて、どうしたら観客が増えるかという動員計画、シーズン前の駅前でのビラ配りも担当している。広報部というのは会報誌の内容計画などをしている。それぞれの部には確実に部長1人はいて、その下に2〜3人がいるという形なのだが、3つの部を含めると約15人の人がいて仲間内という感じ。

 

ファンクラブに入って良かったと思うことは?

 歳を忘れてストレス解消ができることがよい。若い人とも出会えるし、社外の人間の輪ができたこともよかった。人間の幅が広がる感じ。いろんな企画力(人を動かしたりする)もつくし、仕事にかなり生きていると思う。また、たくさんの人に会うことで会社のPRにもなる。

 

ファンクラブに入って悪かったと思うことは?

 入って悪かったと思うことは考えたことがない。多分あるとは思うが、それを考えると嫌になると思うから、前向きにしか考えたことがない。指摘されたりすることはあることはあるが、前向きに考えないと、他のファンクラブの人たちがついてこない。自分はそういう信条を持ってやっている。

 

ファンクラブに入って、自分自身が変わったと思うことは?

 入って自分が変わったと思うことは、考えが若返ることだ。昔からのアローズへの思いは今も変わってなく、歳はとっているが、考えは若いつもり。

 

観客動員数について思うことは?

 みなさん方の口コミが一番であり、アローズというチームを愛してもらいたい。私たち真髄のファンは負けているときこそ応援してやろうという気持ちになるが、ミーハーな人は負けると嫌になってくる。そういうミーハーではなく、選手を好きになってもらって、チームを好きになってもらいたい。やはりチームが強くなってくれれば、おのずとファンが増えていき、そのファンがどんどん人を連れてきてくれるのではないか。

 

Jリーグ入りについてどう思うか?

 私たちはファンだから、やはりJリーグ入りは目指してほしい。Jリーグ入りをすれば、注目も集めると思う。なので、県のサッカー協会も富山市もうちの会社を動かしてもらいたい。Jリーグに入ったとしても、北陸電力にメリットがないとだめだし、評判もよくないとだめ。正直北陸電力の腰は重い。半民営的な部分と官僚的な部分があり、昔の体質だ。

 JFLの試合でも料金をとっているが、必ずマイナスで終わる。仕方なしでやってる部分もある。地域貢献のためにチームを発足させたのが目的だが、これは建前にすぎず、もう一つ別の目的として行政から依頼された富山国体での優勝があった。建前上地域貢献と言わなければ、世間体でサッカーにお金を使っているとか言われても困る。貢献とは要はみんなを楽しませることもあるだろうし、ジュニアにサッカー教室を開くのも1つだ。またマスメディアにアローズが映ることによって、北陸電力のPRにもつながる。

 

アローズは自分にとってどういう存在か?

 もう生活の一部になった。最近は忙しかったため、アウェーはみなさんにおまかせしているが、ホームはほとんど来ている。来るのも見るのも楽しいし、ストレスの発散にもなり、勝てばおいしいお酒が飲める。これが私の日曜日の日課になってしまった。私にとって嫌いになるようなチームじゃないし、そうじゃないとファンクラブの役員をやってない。

 

 

2、■Bさん(男性) 57歳 社員 富山県在住■

いつ頃からファンクラブに入ったのか?何がきっかけでファンクラブに入ったのか?

サッカー部が創部された時から、創部の仕事にたまたま携わっていて、そのときからファンクラブに入っている。サッカーは高校の体育の授業でやったことがあるくらいで、ルールなどはあまり知らなかったが、徐々にサッカーが好きになっていった。当初、北陸電力はコーポレート・アイデンティティということで、各県(福井、石川、富山)にスポーツチームを作った。富山県にはサッカーチームが作られ、多くの人に知ってもらい、サッカーチームを強化するために、最初の頃は会社も組織を上げて力を入れていた。しかしJFLにいってからは、応援は個々の気持ちが大事ということで、会社は関係なく、自発的に声をかけて動くようになった。

 

ファンクラブに入って良かったと思うことは?逆に悪かったことは?

県外から来てくれる人々や、少年サッカーの指導者など、社外との輪が広がった。YKKとはいいライバルで、試合を離れると、お互いに応援の悩みを打ち明けたりもしている。

 悪かった点は特にない。

 

ファンクラブに入って、自分自身が変わったと思うことは?

目立つのは好きじゃなかったが、ファンクラブに入って殻がやぶれたのではないかと思う。

 

観客動員数について思うことは?

理解者(動員数)を増やすアクションがどうしても社員などのメンバーからなので、限界があるのではないか。おばさん、おじさん、若者など、もう少し一般の人に入ってもらえるようにしなければならない。そうするとファンクラブだけでは限界がある。市や県、商工会議所、経済界にもサッカーで町おこしができればいいという共通認識はあるが、現在の個々のバラバラな思いを1点に集中させるためのアクションが必要。

 

Jリーグ入りについてどう思うか?

1企業が支えるだけでは無理。地域の広い理解と支援がないとダメだろう。関連組織の共通認識に基づいてやれば、勢いもつき、そう長くはないうちにJ入りが実現できるかもしれない。しかし、同じ思いの人がどれだけいるかは、今の状況では分からない。みんながそれぞれ勝手に思っているだけだから、それをつなげていくためのアクションが必要(誰がリーダーになってまとめていくかなど)。その前に必要最小限強くないとダメ。それが第一ステップだが、今のアローズはその第一ステップにも達していない。

 

アローズは自分にとってどういう存在か?

創部の時から携わっているし、みんなに広く愛され、地域の活性化に役立つようなチームになっていくのを楽しみにしながら応援している。

 

 

3、■Cさん(男性) 49歳 社員 富山県在住■

いつ頃からファンクラブに入ったのか?何がきっかけでファンクラブに入ったのか?

 北陸電力で事務局をやっていたため、ファンクラブができたときから携わっている。北陸電力として強化スポーツというものを取り入れた(コーポレートアイデンティティ)。自分がたまたまスポーツ関係のことをやっていて、初年度に事務局ということで担当していた。1年くらい続けて担当から外れたが、選手だけじゃなく周りのサポートも必要だということで、応援の組織作りのために、2・3年ほど関わっていた人間と話し合い、ファンクラブの創設に至った。そのころからずっとファンクラブにいる。

 スポーツの強化担当というのは会社側が組織をあげて作った。労務課に福祉担当(社員の文化・体育関係、福利厚生などを扱う)というのがあり、上のほうから依頼されて各県がスポーツ強化担当を立ち上げた。福井県はハンドボール、石川県はバスケットボール、富山はサッカー。

 自分はサッカーをやっていなかったため、そんなにサッカーに関して知識があったわけではなかった。

 

ファンクラブに入って良かったと思うことは?逆に悪かった点は?

 ファンクラブに入って良かったと思うことは、会社の同じ仕事をしている仲間ががんばってプレーをしているところに、自分たちも入っていって一緒に応援できるという一体感を感じることができるところ。ただ残念なことに、だんだん社員の選手が少なくなってきているが、ユニフォームのところに北陸電力の名前が入っている以上は、誰かが応援しなければならない。忠誠心というか、同僚ががんばっているんだから応援しようという気持ちがある。

 悪かった点は特にない。若い人にとったら休みの日になんでわざわざこんなところに応援しにこなければいけないのかと思うかもしれないが、自分は歳をとって子供も大きくなったため、日曜日の余暇を楽しむことができるし、ちょっとした運動にもなるため、プラス面のほうが多いと思う。

 また、初めはサポーターはほとんどが社員だったが、JFLに加入してからは外部の人たちがだんだん増えてきたため、輪が広がり、いろんな話ができるということが自分にとって大きい。

 

どのくらいのペースで試合を観に来ているのか?

 ホームゲームはほとんど応援に来ている。アウェーのゲームはここ2年ほどは行ってない。

 

Jリーグ入りについてどう思うか?

 Jリーグ入りについては、周りの環境が整えば自然とそういう流れになっていくと思うので、積極的にJリーグに入ってほしいという思いは今のところない。1企業チームとして活躍してほしいし、がんばっていく中でおのずとプロ化が見えてくればいいのではないか。実際は自治体や県のサッカー協会の協力が必要なので、あまりチームが先走ってしまうと自治体や協会との間にしこりができてしまう。Jリーグ入りについては期待はしているが、今すぐにというわけではない。動きが急速になって来年度にもJリーグチームを作ろうということになればそれでもいいが、自治体や協会からの呼びかけがない限り、そういうことは考えなくてもいいのではないか。

 

観客動員数について思うことは?

 今の観客数はやっぱり少ない。企業で力は入れているが、市や県ぐるみで予算を増やさないと厳しいのではないか。そういう意味では、まさに今のアルビレックスはお手本のような存在だと思う。

 

アローズは自分にとってどういう存在か?

 私にとってアローズというチームは、企業の活性化の一躍を担っている存在である。

 

 

4、■Dさん(男性) 52歳 社内 富山県在住■

いつ頃からファンクラブに入ったのか?何がきっかけでファンクラブに入ったのか?

社員だからといって会社の強制力があったわけではなく、自分の会社のスポーツだから入ってみようと自発的に入った。夫婦でファンクラブに加入していて、一緒に応援したいという思いから、妻を誘ったところ、了承した。自分は去年から、妻は今年から加入したそうで、今では共通の楽しみになっていて、時々一緒に観戦に来る。

 

どのくらいのペースで試合を見に来ているのか?

仕事がない限り、ホームゲームはだいたい観戦に来ている。

 

ファンクラブに入って良かったと思うことはあるか?逆に悪かったことは?

ファンクラブに入って良かったことは、天皇杯のアウェーゲームのバスの割引があることで、今までに大宮や大阪にも行ったことがある。宇治に娘がいて、娘の顔見ついでに観戦に行ったこともある。

逆にファンクラブに入って、チームの成績がかんばしくないために、もっとがんばって応援しなければならないのかという使命感みたいなのも感じる。

北陸電力の社員であるため、社内で選手と会うこともあり、そのときには声をかけたりしているが、サインをもらうというような行為はしない。

 

ファンの動員数について思うことは何か?

観客数についてだが、田舎のチームだから仕方がないような気がする。正直それほど期待はしていない。ボールボーイ(コートからボールが出たときに素早く選手にボールを渡せるように、コートの周りに待機している人。主に中学生がやっている。)がいるだけでもまだマシだと思う。だいたいの試合が日曜の1時からだが、土曜に試合をした方が観客も集まるのではないだろうか。

 

Jリーグ入りに対してどう思っているのか?

Jリーグ入りについては、入ってほしくないということはなく、身近な存在だからやはり入って欲しい。しかし、入ったら入ったで北陸電力からは離れていくだろう。雰囲気は今のままでも十分いいし、ひょっとするとJFLが一番いいのかもしれない。観客動員が商売ではないから、本当の意味でその場を楽しめる。

 

アローズ北陸はどのような存在か?

自分にとってアローズ北陸の試合は、金もかからない、身近に楽しめるもので、レジャー感覚で観戦している。帰った後のビールがまた美味い。試合がないと休みの日は寝ているだけだが、試合があると外の空気が吸えるのも利点だ。

 

 

【社外の県内サポーター】

5、■Eさん(男性) 32歳 社外 富山県在住■

いつ頃からファンクラブに入ったのか?何がきっかけでファンクラブに入ったのか?

自分がサッカーをしていたこともあって、2001年に富山市の地元のチームが全国リーグで戦っているのを応援し、盛り上げたいという思いから、アローズ北陸のファンクラブに入会した。

 

ファンクラブに入って良かったと思うことは?逆に悪かったことは?

ファンクラブの知り合いになれて良かった。雰囲気がとてもいいと思う。あと、自分の声を選手に届けたいという思いがあり、届くとやはりうれしい。

 悪かった点は特にない。

 

試合に来るペースはどれくらいか?

ホームゲームにはほとんど顔を出しているのだが、個人で車でアウェーまで応援しに行くこともある。

たまに妻とも試合を見に来ることがある。そのとき自分は熱心なサポーターに交じって応援するが、妻はちょっと離れて座る。

 

ファンクラブに入って自分が変わったと思うことはあるか?

ファンクラブに入ったことで、以前よりも前向きになれた。個人で応援していたときは、どうしてもヤジのほうが多くなってしまっていたが、ファンクラブに入ったことで、みんなと励まし合ったり、喜びを分かち合えるようになった。また、負けたときは、自分の声が選手に届いていたのかと考え直すようにもなった。

 

観客動員数について思うことは?

できればもっと来て欲しい。メディアやTJ(タウン情報とやま)などを使って大々的に宣伝をして、まずチームの存在を知って欲しい。また県内のサッカー好きにアピールをして、そこから徐々に広げていくのも一つの手だと思う。シーズン前に行われるビラ配りにも参加したことがあるが、正直言って反応はいまいちだ。それでもビラ配りをしているのに気づいて、遠くからビラを取りに来る人もいた。

 

Jリーグ入りについてどう思うか?

J入りについてだが、昨年のぶっちぎりで優勝した徳島を例に、JFLでまずはいい成績をとり、それから足元を固めていってほしい。入ってほしいと思ってはいるが、コスト面や現在いる選手の解散などが気になる。自分が生きている間にあればいいという考えで、あまりJ入りに対しては積極的に入ってほしいという思いではない。

 

アローズは自分にとってどういう存在か?

アローズ北陸の試合は、1週間に1回ある生きがいであり、楽しみだ。アウェーでの試合もインターネットで欠かさずチェックしている。アローズ北陸の勝敗によって気持ちが左右されるほどで、次の週の気分も決まってしまう。

 

 

6、■Fさん(男性) 32歳 社外 富山県在住■

いつ頃からファンクラブに入ったのか?何がきっかけでファンクラブに入ったのか?

 JFLに加入した年からファンクラブに入っている。サッカーが好きで、地元にチームがあったので試合を見に来るようになった。その中で自然と社員の人たちと話すようになった。そのころはユニフォームを着ている人はそんなに多くなかった。

 

ファンクラブに入って良かったと思うことは?

 ファンクラブに入って良かったと思うことはあまりない。よく考えてみると、うちのファンクラブにはあまりメリットがないかもしれない。アウェーの試合に行きやすいというのはある。

 

ファンクラブに入って悪かったと思うことは?

 逆に会報誌をもっとちゃんと出してほしいというのが要望だ。グランド内の選手はどんどん補強していって成績もそこそこだが、サッカー部の事務局やファンクラブの事務局に携わっている人数が少なく、広報などが追いついていない。また会社の広報を通さないと、アローズの広報活動ができないらしく、サッカー部の事務局がこういうことをしたいと言っても必ずしもできるわけではない。ホームページも会社の管理のため、更新されるペースも非常に遅く、サッカー部だけでやらしてくれとは言っているが、なかなか許可が下りない。しかしここ最近は徐々に改善されている。

 

ファンクラブに入って自分が変わったと思うことは?

 ファンクラブに入って自分自身が変わったことは特にないが、より積極的に応援するようになった。アウェー戦でも一人で太鼓を叩いてがんばっている。

 

観客動員数について思うことは?

 観客動員数はやはり少ない。観客動員数もJリーグに上がるために必要な条件なので、いくら試合の成績が良くても、それだけではJFLどまりになってしまう。JFLの段階で常時4ケタの人数が入らないと厳しいと思う。個人的な意見だが、ファンクラブももっと社員に召集をかけてもいいのではないか。ホンダやソニーは社員に積極的に呼びかけて試合を観戦してもらうが、北陸電力は一切やらず、サッカー好きだけ集まって、その他の人たちはまったく来ない状態。たまにはホンダやソニーのようにやってもいいのではないか。

 

Jリーグ入りについてどう思うか?

 Jリーグ入りはできるに越したことはないが、現時点では成績や観客動員数、県の盛り上がりから見たらまだまだ条件に達していない状態だ。またYKKとの問題もある。両チームの選手はJリーグに上がりたくてプレーしているが、富山県にJリーグのチームを2つ抱える余裕があるかというとない。逆にJFLのチームが2つあることが富山県にとってネックになっている部分もある。

 

アローズは自分にとってどういう存在か?

 もう何試合見てきたか分からないが、アローズは自分にとって苦楽をともにする存在だ。

 

 

7、■Gさん(男性) 32歳 社外 富山県在住■

いつ頃からファンクラブに入ったのか?何がきっかけでファンクラブに入ったのか?

3年くらい前にファンクラブに入った。それ以前はファンクラブに入っていなかったが、試合は見に来ていた。地元にJFLのチームがあることは知っていたが、最初は横浜FC目当てで試合を見に行った。しかし横浜FCが特別に好きというわけでもなかった。たまたま年に数回高岡でも試合があり、アローズの試合を見続けていく中で、見ているだけじゃなくて、自分も騒がなかったら面白くないだろうという想いから、自然とずうずうしくファンクラブの輪の中に入っていった。YKKの試合も見に行ったことがあり、そのころの成績はYKKの方が上で、アローズは降格すれすれのチームだったが、なぜか応援したくなったのはアローズだ。見に行くと必ずといっていいほど負けていたアローズに、何か分からないが惹き付けられるものがあった。特別どうしてかという理由はない。あとはアローズサポーターの雰囲気がよく、応援が楽しそうだった。

 

ファンクラブに入って良かったと思うことは?

ファンクラブに入って、いろんな人とのつながりができたことが良かった。入る前は客観的にバックスタンドの隅で見ていただけだったが、どんどん入り込んで仲良くなっていった。

 

ファンクラブに入って悪かったと思うことは?

入って悪かった点は家庭を犠牲にしていると妻に言われること。しかし、妻もアローズのサポーターである。去年までは一緒に観戦をしていたが、今年3人目の子供が出きたため、妻は応援に来れなくなった。たまに子供と観戦に来ることもある。妻と一緒に来たときは、妻もユニフォームを着てみんなと一緒に応援している。自分が妻を引きずり込んだ感じ。子供には今サッカーをさせている。

自分はサッカーはやったことがなかったが、サッカーがもともと好きで、テレビで中継されれば必ず見ていた。妻が新潟出身で、実際に新潟までアルビレックスの試合も見に行ったことがある。アルビレックスのグッズも持っているが、ファンクラブには入っていない。ファンクラブの資料は取り寄せたが結局入らなかった。実際にアルビレックスの試合を見に行くと、サポーターの集団が大きすぎて、自分たちがお客さんのような感覚を覚える。また、オラがチームのような地域密着型で、子供からお年寄りまで大きい集団で応援できることがうらやましく思うこともある。いずれ自分たちも県総合陸上競技場をアローズカラーのブルーに染めることが夢である。そして富山に本拠地を置く2つのJチームが、ダービー戦のような形で試合をし、県総合陸上競技場が満員になるのが理想だ。

JFLでダービー戦ができるのも珍しいこと。初めてのダービー戦には3000人くらい来ていた。昔は雨の日の試合は全然行かなかったが、最近騒ぐようになって雨の日でも来るようになり、アウェーの試合にまで足を運ぶようになった。今シーズンは子供の行事で行けなかった1回を除いて、ホームの試合は全て来ている。来れなかった1試合の分は、アウェー戦3、4試合でカバーした。

 

ファンクラブに入って自分が変わったと思うことは?

ファンクラブだからということはなく、家族や子供のサッカーを差し置いてでもアローズを応援しに来るようになった。勝敗によって気分が左右されるが、去年までの戦績を考えると贅沢な悩み。

昔アローズは降格すれすれで、綱渡りチームだとか言われて嫌な思いもしてきたが、今では懐かしい。2003年の前期には1勝しかできず、降格かなと思っていたが、後期に3勝して、解散したチームもあり何とか降格を免れた。また、2001年もチーム数の増加(18チーム)に助けられ、降格は免れた。実は結構JFLのワースト記録を持っている。

 

観客動員数について思うことは?

JFLの認識度が低い。また、アローズはJ入りを表明していないが、何らかのアクションを起こしたら変わってくるかもしれない。J入りを表明すれば、テレビとかも大々的に扱うし、ファン層も増えると思う。また社外の人間がいかにアピールできるかもカギになってくるのではないか。Jを目指すか目指さないかで変わってくると思う。富山県の県民性的に言えばミーハーだから、結構集まるだろう。

 

Jリーグ入りについて思うこと?

Jリーグには当然入ってほしい。自分の夢は県総合陸上競技場をブルーに染めることだが、プロの試合じゃないとそれは難しい。また、チーム自体もJ入りを表明しないと選手たちがかわいそうだ。元Jの選手もいるのに、モチベーションが上がらないのではないか。逆に選手側から、これから一体どうするつもりなのかという声が聞こえてこないが不思議だ。それとは別に行政とか、企業の問題もあるだろう。

 

アローズ北陸は自分にとってどういう存在か?

 自分にとってアローズは絶対的な存在であり、家族と比べてみても同等である。

 

 

8、■Hさん(男性) 38歳 社外 富山県在住■

いつ頃からファンクラブに入ったのか?何がきっかけでファンクラブに入ったのか?

 昔はそんなに興味はなかったが、アローズがJFLに昇格した年に横浜FCとの試合を観戦したのがきっかけだ。そのときはほとんどが横浜FCのファン(約1000人)で、アローズのファンは500人いるかいないかだったため、これではダメ(もっとファンを増やすべき)だと思った。ファンクラブに入ったのはそれから1年後で、今年で4年になる。

 

ファンクラブに入って良かったと思うことはあるか?逆に悪かったことは?

ファンクラブ入って良かったと思うことは、やはり選手の近くにいれることや、いろんな情報が手に入ることだ。

 ファンクラブに入って悪かったと思うようなことはない。

 

ファンクラブに入って自分自身が変わったことはあるか?

ファンクラブに入って自分自身が変わったと思うことも特にない。

 

どのくらいのペースで試合を見に来ているのか?

ホームの試合にはほぼ来ている。昔からサッカーを見るのが好きで、Jリーグの前の日本リーグ時代から試合を結構見ている。

 

ファンの動員数について思うことは何か?

 ファンの動員数については、もうちょっと増えてほしい。今のチームの状態がいいので、もう少し来てほしいと思う。チームを知ってもらうにはやはりメディアが一番。この前天皇杯で湘南ベルマーレ(J2)を破ったときも、試合模様はほとんど流れず、結果だけが伝えられていた。J2のチームを破ることはなかなかないことなので、もうちょっと試合模様を流してもいいのではないかと思った。見たくてもどうすればいいか分からない人もいると思うので、何時から試合があるなどの情報を流すだけでも違ってくると思う。

 

Jリーグ入りに対してどう思っているのか?

個人的な意見として、Jリーグには無理して行かなくてもいいと思う。無理してJリーグに行って、ボロボロになる可能性もある。今のザスパ草津も経営面で厳しいらしく、やはり一番の問題は金銭面だ。また、試合内容もボロ負けだとみっともない。Jリーグ入りには協会の協力はもちろん必要だが、行政(市長や知事)の助けも必要。昔の新聞の記事で石井知事のコメントを読んだが、企業中心のチーム作りと書かれてあった。企業中心のチーム作りということは、裏を返せば市や県はあまり関わらないというふうにも捉えることができ、少しがっかりした。現段階では行政はあまり積極的ではないのかもしれない。アルビレックス新潟や大分トリニータの場合は知事や市長がJ入りを明確にしていたし、正直そういう人たちが積極的になれば案外簡単にいくような気がする。

 

アローズ北陸はどのような存在か?

アローズ北陸は自分にとって生きがいのようなもの。応援したくなるようなチームであり、はっきり言ってそうでないと試合を観に来ない。アローズの勝敗によって気分も変わるため、一時期ひどく負けていたときは憂鬱な感じだった。最近はチームが好調なので、翌週の気分もいい。

 

 

9、■Iさん(男性) 44歳 社外 富山県在住 *ファンクラブに入っていない■

何がきっかけでアローズを応援するようになったのか?

ファンクラブにはまだ入っていない。そこまでお世話をすることができないため、今のところ入る予定もない。17番(渡辺誠)と19番(松下和磨)の選手がうちにアルバイトにきていて、プロ契約でやっているが稼ぎが十分でないため、北陸電力の総務の方か誰かが連れてきた(北陸電力が選手のアルバイトの面倒も見ているらしい)。一週間のうち2、3回で、しかも時間が限られているが、どこかないか探していて、たまたまうちにやって来た。そのアルバイトの子たちを応援しようと、こうしてユニフォームを着て試合を見に来ている。

中にはたくさんの給料をもらっている選手もいると思う。県のサッカー協会の人が自分たちの間に入っていて、その紹介で来ている。学生ではない彼らに、食べられるくらいのお金は自分たちで稼げという北陸電力の方針だと思う。サッカーだけしか知らない彼らが、今後のために世の中のことを分からせてやらなければならないということで総務の人たちが世話しているのではないか。富山にいる間は真面目に働くということで、2人を紹介してくれた。

 

どのような会社で、選手はどれくらい働いているのか?

水産物の中卸をやっている。午前8時から、遅いときは午後2時3時くらいまで働いている。だいたい4、5時間がアルバイトの時間になっている。

 

今後ファンクラブに入ろうという思いはあるか?

もしファンクラブに入るからには、時間も十分とってあげて、選手またはファンクラブ自身をサポートしてあげるくらいのことができないと、逆に失礼になる。自分たちは仕事柄年間を通じてサポートすることができない。暇なときに応援に来ているが、忙しいときは日曜日も仕事をしているので、試合の結果なんかはアルバイトに来ている選手に聞くくらいしかできない。ファンクラブうんぬんではなく、行ける日には応援してやろうという気持ちで、姿を見せている。

 

ファンクラブに入ってない立場から、ファンクラブについて思うことはあるか?

ファンクラブという組織は会員の維持が難しいのではないかと思う。会員が半数までに減ったという話も聞いている。Jリーグなんかを見ても、ファンクラブが基点となって、その輪をどんどん広げていくというようなことが必要だろう。また試合の入場料やグッズ販売で得たお金で初めてチームを運営することができるから、多くの人に来てもらって、阪神の応援団のようにみんなに選手の応援歌が浸透している状態になれば、もっと面白くなると思う。

 

観客動員数について思うことは?

リーグ戦の観客数については徐々に増えてはいると思うが、この調子で輪を広げていって欲しい。

 

Jリーグ入りについてどう思うか?

やっぱり富山にJリーグのチームはあってほしい。富山にだって国内だけでなく海外で通用している企業もあるんだから、サッカーを企業の広告の媒体として使ってもらえるようなコンタクトをどんどんとっていくべきだ。北陸電力1社だけだったら年間に使っていい広告宣伝費は限られているので、北陸銀行やコーセル、YKKなど富山にある有力な企業の目をもっとサッカーに向けてほしいし、そうなれば街ぐるみでサッカーを盛り上げることができる。

 

ファンクラブに入ることでの利点みたいなものはあるか?

ファンクラブに入らずに応援に来ることの利点というのは特にないが、責任がいらないということはある。自分は来たいときに来て、応援している。

 

アローズは自分にとってどういう存在か?

私たちにとってはアルバイトに来ている子たちあってのアローズだが、彼らにとってはアローズあってのわが社とのつながりである。そして静岡と大阪から来た子がなぜ自分たちのところで働いているのか、縁のようなものを感じる。その縁を大切にしたいし、逆に来てくれたからには地元の会社だし、精一杯応援してやりたい。今はどちらかというとチームよりも2人に愛着を感じるが、彼らもアローズというチームに属しているため、チームを愛することが最終的に彼らを愛することになると思うし、応援し続けていくうちに徐々にそうなっていくのではないか。

 

 

【社外の県外サポーター】

10、■Jさん(男性) 40ちょっと過ぎ 社外 埼玉県在住■

いつ頃からファンクラブに入ったのか?何がきっかけでファンクラブに入ったのか?

 アローズがJFLに昇格した年(2001年)からファンクラブに加入した。

栃木のグリーンスタジアムというところでアローズ対栃木の試合(アローズ北陸の初勝利)を、大宮アルディージャを一緒に応援している仲間と見に行った。そのときに応援部の方々とお話をしていた中で、また応援しに来ますと言って、富山にも来るようになった。アローズの選手のがんばっていた姿と、アローズのサポーターの方々とのフィーリング(考え、話、応援)が合ったことが、ファンクラブ加入のきっかけになった。それからだんだんグッズなども買うようになっていった。今はほとんどがプロの選手だが、社員の選手だと関係が近いし、身近で話かけることができる。試合中は言いたい放題言って、試合後の出待ちのときには「お疲れ様」「またがんばろうね」などと声をかける。たまに「ちゃんとやらなきゃ応援してやんねーぞ」といじめたりもし、そこはプロとは違う親しさがある。

佐川東京やホリコシ、横河の試合も見に行くがファンクラブに入ってはいない。

 

ファンクラブに入って良かったと思うことは?逆に悪かったことは?

 ファンクラブに入って良かったと思うことは特にないが、総会や試合会場で会長や社長など滅多に話すことがないいろんな人と話すことができる。会社の重役も一般の人たちと近い位置にいるのかもしれないし、会社自体にそういう雰囲気があるように思う。だからみなさんも良く接してくれるのではないか。

 悪いという感じではないが、私からすると富山の人間はのんきだと思う。もっといろんなことをやったり、アピールしたりして観客動員も増やせるのに、そういうアクションがちょっと弱い。周りにYKKしかいないから刺激が少ないのかもしれない。

 

ファンクラブに入って自分が変わったと思うことは?

 ファンクラブに入ってどうということはなく、サポーターとして関わっているということがメイン。ファンクラブというくくりは意識していない。アローズのサポーターになって自分自身が変わったと思うことはないが、お金を使いすぎている。貯金もしなければならないのに。しかし趣味でやっているのだから仕方がない。

 

観客動員数について思うことは?

 今の動員数の状況は世間的に見たらそこそこだが、サッカーをやっている人たちへのアピールばかりではなく、世間一般に対するアピールというのがまだまだ足りないような気がする。同じキャパシティの中でサポーターをYKKと取り合っている(サッカー好きをどっちに引き寄せるか)感じもする。サッカーに興味を持っていない人たちに対しても、見に来てもらえるような活動をもっとしてほしい。しかし電力会社という公共性が強い会社なので、あまりアローズを前面に押し出すこともできない。本当は営業所ごとにポスター貼ってもらって、車にもステッカーを貼ってもらったりするのが一番だが、やはり会社の縛りでできないように思う。会社の富山支店長がサッカー部の部長をしていて、各県(福井、石川)の支店長はそれぞれの強化スポーツを応援しているので、あまりアローズを前面に出すと、他県の支店長の反感を買ってしまう。そういう会社内のバランスもあるだろう。しかし自分達でそのことを考え過ぎて、いろんなことをできなくしてしまっている感じもする。

 

Jリーグ入りについてどう思うか?

 無理してJリーグに上がるよりは、地道に地元の声援を集めてほしい。また子供の目標になるようなチームになってほしい。今はほとんどがプロの選手だが、理想としては富山県人がもっと増えてほしい。今は気運を高める時期であり、100年構想(注2)を念頭において、焦らずに歴史を作っていくべきだ。

 

アローズは自分にとってどういう存在か?

 来るペースは月に1,2度が限度だが、アローズの試合は毎試合楽しみ。富山県の人たちも温かく接してくれるので、居心地がよい。しかし、富山県の人たちはアローズのアウェー戦にあまり行かないので、もっと行くべきだし、そこのとりこみも重要だ。またサポーターの平均年齢が上がりぎみなので、もっと若い人に入ってほしい。

 

 

11、■Kさん(女性) ?歳 社外 東京在住■

いつ頃からファンクラブに入ったのか?何がきっかけでファンクラブに入ったのか?

 もともと石橋選手のファンで、石橋選手がアローズに入って以来アローズを応援するようになった。石橋選手は初めは横浜FCにいて、それからサガン鳥栖に行き、今のアローズに入った。石橋選手が18歳のとき(横浜FC時代)から応援している。石橋選手がアローズに来てから、もう丸2年経つ(2年前の天皇杯のときに加入)。

 

試合に来るペースはどれくらいか?

 月に2回は富山に来ている。

 

ファンクラブに入って良かったと思うことは?

 ファンクラブに入って良かったと思うことは、いろんな情報をくれることだ。私は東京にいてそれほど試合に来れるわけではないので、この前の石橋くんはどうだったかなどの情報をくれる。自分は石橋くんの個人サイトを持っているので、そこに書いてくれたりもする。はじめて試合を観に来たときも歓迎してもらったので、とても入りやすかった。

 

ファンクラブに入って悪かったと思うことは?

 悪かった点は、私は特に感じない。

 石橋くんと同じ年の選手が他に2人いて、今でもこの3人を応援している。他の2人は横浜FCとザスパ草津に属しているので、それぞれのファンクラブにも入っているが、この2つはわりと大きな応援団で応援しているのに対し、アローズのファンクラブはみんなで応援している感じがあり、私が唯一声だしをするファンクラブである(他のファンクラブは人数が多いく、やってくれるので自分は声だしをしなくてもよい)。

 

観客動員数について思うことは?

 JFLの観客動員数は絶対少ない。他の2チームの試合と比べても全然違う。おもしろいからもっと観に来てもいいと思う。他の2チームとの違いはメディアへの露出度ではないかと思う。テレビにもっと選手が出れば、あの選手を見てみたいと思い、試合に足を運ぶきっかけになると思うが、そういう仕掛けがない。県総合陸上競技場という大きなサッカー場もあるのにもったいない。

 

Jリーグ入りについてどう思うか?

 アローズだけではJリーグ入りは無理だと思う。やはりYKKとの折り合いが重要になってくると思うが、簡単ではなさそう。急には無理だと思うが、将来的に1つになってやってくれたらおもしろいと思う。そうすれば富山県のサッカー熱も盛り上がるのではないか。

 

アローズは自分にとってどういう存在か?

 アローズは私にとってなくてはならない存在。いやだが、石橋くんが例え他のチームに移籍したとしても、ずっと応援したいと思えるチームだし、それだけの魅力を感じる。応援する側とされる側の関係がいい感じ。サポーターの数は少ないが、少ないなりに一生懸命応援している。Jのチームになると、大きな応援団と選手という関係になってしまって、選手に対する要求も大きくなる。アローズのサポーターは選手に対する要求ももちろんあるが、俺達もがんばるから一緒になってがんばろうという感じがして、熱い応援の中にも温かさがあると思う。しかし決してぬるいというわけではない。

 

 

12、■Lさん(男性) 30歳  社外 関西在住■

いつ頃からファンクラブに入ったのか?何がきっかけでファンクラブに入ったのか?

 6年前の9911月に、地域リーグ決勝大会で6戦全勝したとき(JFLに上がる前年)からアローズには注目していた。入ったのはそれから2年後の2001年。

 2001年の金沢での試合のハーフタイム中に、抽選会でアローズのユニフォームをもらったのが実際のきっかけ。もともと趣味で全国のサッカークラブを見て回っていて、6年間くらい続けている。全国のサッカークラブ(サッカースタジアム)にはもちろんファンクラブもあって、それぞれの雰囲気があるのだが、アローズのファンクラブには快く他人を受け入れる親しみやすさや、サポーターがコツコツと地道に活動している姿、応援の丁寧さに共感を覚え、その雰囲気もファンクラブに入った1つの要因である。

 

どのくらいアローズの試合に足を運んでいるのか?

 富山に訪れるのは年に1,2度だが、関西で試合がある場合はほとんど足を運んでいる。

 

Jリーグ入りについてどう思うか?

 個人的には入ってほしいが、実際は難しい。「人」「金」「モノ」が揃えば、楽に入れるだろう。「金」を集めるには、やはり1つの会社では難しく、県内のいろんな企業から出資してもらわないとだめだろう。ただし、工業、設備などの条件は決して悪くはなく、むしろ全国と比べてもトップレベル。そして富山県内のサッカーをまとめていかなくてはいけない。岡山県の三菱水島FCJ入りを明確にしており、スポンサーも積極的に増やしていっている。こういった動きが大切じゃないかと思う。

 

観客動員数について思うことは?

 地元の新聞やテレビなどの媒体を使ってPRするのが1番。しかし、新聞やテレビは企業イメージのバランスが難しい。他にも少年を対象にしたサッカースクールを通して知ってもらったり、会社自体がPRしていかなければならない。チーム名に会社のイメージが出てない分、伸びるチャンスはまだあると思う。また、岩瀬スポーツ公園、高岡スポーツコア、五福公園、県総合陸上競技場などの他のクラブにはない設備をもっとPRしてもいいんじゃないか。これらの競技場への足がないわけではなく、不便ではないので、こういったことのPRも観客動員増加のためには効果的ではないか。

 

 

13、■Mさん(男性) 29歳 社外 埼玉県在住■

いつ頃からファンクラブに入ったのか?何がきっかけでファンクラブに入ったのか?

もともと大宮アルディージャのファンだった。趣味で他県の試合を見に行っていた中で、JFL元年にたまたまアローズの試合を見たところ、アローズが延長Vゴールで初勝利を飾り、その偶然と選手のがんばりが印象的で、その年にアローズのファンクラブに入り、グッズも手に入れた。

サッカーはバレーボールなどと違って、企業があまり力を入れていない分、一般の人でも入りやすい雰囲気がある。バレーボールなんかは企業主導型の体質なので、どうしても会社員や選手の家族しか楽しめない。

 

ファンクラブに入って良かったと思うことは何か?逆に悪かったことは?

つながりがあって、いろんな情報を手に入れられるメリットはあるが、それほどファンクラブ入ってどうということはない。

他のチームが行っているようなファン感謝デーがないのが悲しい。YKKもやっているのにアローズはやってない。アローズが3月に行っているのは総会で、社員がたくさんいるために、気軽に行ける会ではない。どちらかというとフォーマルな場で、自分はスーツを着ていく。

 

ファンクラブに入って自分自身が変わったことはあるか?

仲間内の交流やつながりが目的であり、ファンクラブ自体で行動することはないため、入ってもさほど変化は感じない。

はたから見たら、こういったサポーターの雰囲気はどうなんだろうと感じる人もいるかもしれないが、自分自身は居心地がいい。

当初は県外サポーターも少なく、社員の人たちと一緒に応援していく中で、ホームゲームに来る人が増え、それから本格的にやっていこうというふうになった。

 

     ファンの動員数について思うことは何か?

成績が一番なのだが、いろんな人と話していく中で話題になるのが県民性である。家のことを優先させたり、応援に行くくらいなら違うことをやったりするというような県民の性格も関係してくる。後は選手の移籍があると、その選手目当てでファンクラブに入る人も多く、実際にアローズのファンクラブに入っている、社員以外の地元の人は少ない。そういった地元の会員を増やしていかなければならない。試合に勝って、紙面に載って、それを見て感じてくれる人がどれだけいるか分からない。ビラ配りをしても受け取ってくれる人はいるものの、リピーターを増やしていかなければならない。これからも急には増えないと思う。

 

Jリーグ入りに対してどう思っているのか?

Jリーグ入りには反対。補強する度に選手が変わっていき、Jのチームから選手を呼んでくるために、現在応援している選手や社員の選手がいなくなるのは悲しい。できればスタートした当初のメンバーでがんばってほしいという思いがある。

 

アローズ北陸はどのような存在か?

アローズ北陸は自分の夢である。自分もサッカーをしてみたかったし、チームにも入りたかったが、それができなかったので、アローズを応援することで夢を託している。また、富山の人も温かく、話してもちゃんと受け答えをしてくれるのが嬉しい。他のチームではしてくれないところもある。そういった意味でもファンクラブは付き合いやすい存在。

 

 

第3節 分析

 

まず動機についてだが、サポーター個人個人が様々な理由で応援していることが分かる。

Dさんの話から分かるように、社員の方々は、会社からの強制力ではなく、自発的にファンクラブに加入している。社員の中でもAさん、Bさん、Cさんのように、サッカー部が創設された当初からずっと応援している人もいて、Bさんが語るように、サッカー部ができた当初は会社側も組織を上げて力を入れていたが、JFLに入ってからは、個々の応援する気持ちが大事ということで、事務局が自発的に声をかけて動くようになっていったそうだ。あくまでも個人の意思に基づいて応援していることが分かる。また、Cさんは、ファンクラブに入った利点として、「会社の同じ仕事をしている仲間ががんばってプレーしているところに、自分たちも入っていって、一緒に応援できるという一体感を感じることができる。」と語っている。しかし、社員選手が減っていき、Jリーグのチームから引き抜かれてきた選手が多い今のチームの現状に関しては、「残念だが、ユニフォームに北陸電力の名前が入っている以上は誰かが応援しなければならない。忠誠心というか、同僚ががんばっているんだから応援しようという気持ちがある。」と語る。元プロの選手が多くなってきている現状について残念に思ってはいるものの、同じ北陸電力の名の下に戦う選手を、同僚としてとらえ、応援しようという気持ちがうかがえる。同僚としてとらえることによって、ファンクラブに入った利点に挙げられる「一体感」が生まれるのであろう。

次に社外の方々の動機に目を向けてみる。富山県に在住の方は元々地元にJFLのチームがあることを知っている人が多かった。Eさんのようにサッカー経験がありサッカーが好きで、全国リーグで戦う地元のチームを応援しながら盛り上げたいという思いからファンクラブに入る人もいれば、Gさんのように高岡市でも行われるJFLの試合にたまたま足を運んだところ、負けの多かったアローズになぜか惹かれていき、ファンクラブに加入した人もいる。またHさんのようにJFLに昇格した年に横浜FC対アローズの試合を見たとき、横浜FCのサポーターに比べ、アローズのサポーターが少なすぎたことに驚き、もっとアローズのサポーターを増やさなければいけないという思いから、ファンクラブに加入した人もいる。

そして、県外のサポーターの方々も色々な思いでファンクラブに入っていた。関西に在住のLさんは、もともと全国のサッカークラブを見て回るのが趣味だったのだが、地域リーグ決勝大会の時から注目していたアローズの試合を金沢で見た際に、ハーフタイム中の抽選会でアローズのユニフォームをもらったのがきっかけになっている。埼玉に在住のJさんとMさんは、もともと同じ大宮アルディージャのサポーターで、友人である。2人は趣味で他県で行われる大宮アルディージャ以外のチームの試合も見に行くのだが、アローズがJFLに昇格した年の栃木グリーンスタジアムで行われた栃木SCとの試合で、アローズがVゴールで初勝利を飾った瞬間に立会い、その偶然と選手のがんばりに惹かれ、ファンクラブに加入した。関西在住のLさんや、埼玉在住のJさんとMさんの場合は、趣味であるサッカー観戦の中でアローズというチームに触れ、ユニフォームが当たったり、初勝利に立ち会うといった偶然的な要因がファンクラブに加入する後押しになったようだ。東京に在住のKさんは、石橋選手のファンで、石橋選手が横浜FCにいた18歳のときから応援している。石橋選手が2003年の天皇杯の時にアローズに加入して以来、アローズのファンクラブに入っていて、アローズというチームの前に石橋選手個人のファンであることが、動機につながっているようだ。またKさんは石橋選手の個人サイトを持っている点でも、熱狂ぶりがうかがえる。

以上のように各個人が様々な加入動機を持っているのだが、動機やファンクラブ組織についてのお話の中で数多く聞くことができたのは、「雰囲気がよい」や「輪が広がった」というような言葉であり、その言葉からファンクラブの「アットホームさ」を感じ取ることができた。

社員サポーターであるAさん、Bさん、Cさんに着目する。Aさんはファンクラブの利点として「若い人とも出会えるし、社外の人間の輪ができたことも良かった。」と語る。BさんやCさんも同様に、県外の人々や少年サッカーの指導者など、色々な社外の人々と話すことができ、ファンクラブの輪が広がっていったことを利点に挙げている。この3人は昔からファンクラブ組織に携わっており、少ないながらも地道に人数を増やしていった過程から輪の広がりを実感しているのかもしれない。また、Bさんが語るように、会社は関係なく、自発的に声をかけて動くようになった点から見ても、アローズ北陸を応援してくれる社外のサポーターを大事にする社員サポーターの姿勢の表れではないかと思う。

次に社外サポーターに着目する。Gさんはファンクラブの加入動機のお話の際に、「アローズサポーターの雰囲気がよく、応援が楽しそうだった。」と、雰囲気のよさも加入動機の1つであることを語った。また、ファンクラブの利点として「いろんな人とのつながりができたことが良かった。」と語り、その後に「(ファンクラブに)入る前は客観的にバックスタンドの隅で見ていただけだったが、どんどん入り込んで仲良くなっていった。」と続けた。このことから、ファンクラブという組織が溶け込みやすい存在であり、来る者は拒まない性質が分かる。同様にEさんもファンクラブに入った利点として雰囲気がよいことを挙げている。Fさんも加入動機の話において、「サッカーが好きで、地元にチームがあったので試合を見に来るようになった。その中で自然と社員の人たちと話すようになった。」と語っており、ファンクラブの人々は話しやすく、溶け込みやすい存在であることが分かる。

県外のサポーターの人々もまた、口を揃えてアローズサポーターの雰囲気のよさを語っている。

関西在住のLさんはファンクラブに加入したきっかけとして、「全国のサッカークラブ(サッカースタジアム)にはもちろんファンクラブもあって、それぞれの雰囲気があるのだが、アローズのファンクラブには快く他人を受け入れる親しみやすさや、サポーターがコツコツと地道に活動している姿、応援の丁寧さに共感を覚え、その雰囲気もファンクラブに入った1つの要因。」と語っている。Lさんは趣味で県外のサッカースタジアムを回り、サッカーの試合を見ていることもあって、他のチームのサポーターを目にする機会も多い。その中で他のチームのサポーターと比較して、アローズサポーターの印象として上記のような特徴を挙げている。県内サポーターもLさんが語った「快く他人を受け入れる親しみやすさ」を肌で感じており、アローズ北陸ファンクラブのこのような姿勢は、県内サポーターだけにとどまらず、県外サポーターにも向けられていることが分かる。

埼玉在住のJさんは、ファンクラブに入った利点として次のように語っている。「総会や試合会場で会長や社長など滅多に話すことがないいろんな人と話すことができる。会社の重役も一般の人たちと近い位置にいるのかもしれないし、会社自体にそういう雰囲気があるように思う。だからみなさんも良く接してくれるのではないか。」。Jさんは、毎年開催されるファンクラブの総会(北陸電力の社員も参加する)に出席したこともあり、その経験や試合会場で一般の人たちと一緒に応援している社長についても言及している。そして、そのような役員ともコミュニケーションをすることができる環境ゆえ、同じ会社の社員サポーターの人々も他の一般の方々に暖かく接しているのではないかと語っている。

同じく埼玉県在住でJさんとも知り合いのMさんはサポーターについて、「はたから見たら、こういったサポーターの雰囲気はどうなんだろうと感じる人もいるかもしれないが、自分自身は居心地がいい。」と語っている。他人から見たら自分たちサポーター集団は異色な存在に映るかもしれないという客観的な視点で自分たちを捕らえながらも、自分たちのサポーター活動が楽しいものであり、自分自身は非常に居心地のよさを感じていることが分かる。また、最後にファンクラブについて、「富山の人も温かく、話してもちゃんと受け答えをしてくれるのが嬉しい。他のチームではしてくれないところもある。そういった意味でもファンクラブは付き合いやすい存在。」と語っている。Jさんも同様に、「富山の人たちも温かく接してくれるので、居心地がよい。」と語っている。この2人もLさんと同様、全国各地で行われるサッカーの試合を見るのが趣味であり、他のチームのファンクラブと比較した結果、コミュニケーションを多くとることができるアローズのファンクラブの「温かさ」をよい点として挙げている。

試合会場に足を運ぶと、上記のような「温かさ」、または「アットホーム」な雰囲気を実際に目の当たりにすることが多々ある。例えば、県外から来た人が持ってきたお土産を、Gさんが箱を持ってファンクラブの方々に配っていたことがある。それは中心的サポーターだけに配るのではなく、ユニフォームを着ることなく、そばに座っている人にも配っていた。そして私も何回か頂いたことがある。こういうちょっとした気配りができ、自分たちだけではなく、周りの人びとにも配って歩くという1コマも、「アットホーム感」を十分示しているように思う。その他にも、ハーフタイム中に、さっきまで中心的サポーターに交じって応援していたおばさんが、水筒を取り出して温かいコーヒーを紙コップに注ぎ、中心的サポーターに配るという光景も見られた。

第3章でも書いたが、アローズの試合には誰でも使えるように、メガホンが余分に並べられている。しかし、富山県総合運動公園陸上競技場のような大きいスタジアムで試合をする場合、応援席も広く、なかなかメガホンに気がつかない人もいる。そのような時、Jさんは大量のメガホンを持ちながら応援席を歩き回り、メガホンを持っていない観客に親切に配っていた。

また、中心的サポーターの談笑する姿も良く目にすることができる。中心的サポーターは応援席である程度固まりながらアローズのユニフォームに着替えるのだが、そのとき(だいたい試合が始まる1時間以上前)はいつも談笑している。会話の内容は主に今のチーム状態、他のチームの状態、アローズの特集が組まれたメディア(新聞、テレビ)、応援部の方々がラジオに出演された際の話、リーグ戦のランキング、Jリーグ、ジーコや日本代表の話など、多岐にわたっている。そして、後からユニフォームを持ってその固まりにやって来た人にも必ず誰かが挨拶をしていて、加わった人もすぐに輪に入り、談笑していた。この「挨拶」という点に着目しても、何も中心的サポーター同士に限ったことではない。ファンクラブ事務局次長のZさんは、試合当日に忙しく動き回っている中でも、必ず知っている人(中心的サポーターから少し離れた位置に座っている人)にも挨拶をしたり、ちょっとした話をしていた。このような場面からでも、コミュニケーションがきちんとなされている様子をうかがい知ることができる。

試合終了後に、カーテンレザーマッチでグッドプレーヤー賞に選ばれた子供の名前が発表される際に、中心的サポーターは1人1人の子供の名前が呼ばれる度に、太鼓を叩いて賞賛を送っていた。第3章にも、サイン入りミニボールをサポーターが子供に優先的に取らせる場面が出てきたのだが、このように自分たちよりも、地域の子供たちに対する姿勢からも、親が子供を見守るかのようなアットホームな一面がうかがえる。

そして印象的だったのが、アローズ北陸ファンクラブのコールリーダーを務めていた人が愛知に引っ越すことになり、今期でコールリーダーを辞めるということで、JFL最終節のハーフタイム中に、ファンクラブの会長からコールリーダーにアローズのフラッグが贈呈されるというセレモニーが行われたことだ。客席に向かっても、その旨を説明し、フラッグが渡されたときには、会場中から拍手が沸き起こり、中心的サポーターも太鼓を叩きながら祝福をしていた。コールリーダーもスピーカーを使って、「愛知から来ますんで、そのときはよろしくお願いします。」と挨拶をして、その後に中心的サポーターは集合写真を撮っていた。

以上のように、少人数ながらのアットホームな雰囲気というのを目にすることができる。また、そういったアットホームな雰囲気を感じ取れるということも、サポーターが少ないからなのかもしれない。アローズの試合ではこのような雰囲気の良さを感じ取ることができ、また実際に感じ取っている人も少なくない。

東京在住のKさんは横浜FCとザスパ草津のファンクラブにも加入しており、その2つと比較しながら、アローズのファンクラブの長所を次のように語っている。「私は東京にいてそれほど試合に来れるわけではないので、この前の石橋くんはどうだったかなどの情報をくれる。自分は石橋くんの個人サイトを持っているので、そこに書いてくれたりもする。はじめて試合を観に来たときも歓迎してもらったので、とても入りやすかった。」。毎回試合に来ることができない県外サポーターに対して、石橋選手のファンであるKさんに石橋選手の情報を丁寧に提供している方もいるようで、きめの細かいコミュニケーションを図っていることが分かる。その人が知りたい情報を把握していることも、相互のコミュニケーションがきちんと図られている証拠ではないかと思う。

 実際に試合会場でもこのようなコミュニケーションの一端を見ることができた。ある試合の前に、中心的サポーターだけで、読売新聞社の方に写真を撮ってもらうことになった。その写真に私も一緒に入らせてもらったのだが、その後、1113日の五福陸上競技場での試合の前に、Zさんが読売新聞の「よみうり タウンタイムズ」という記事を、私を含め写真に写っている人全員に配っていた。

 また、11月3日に富山県総合運動公園陸上競技場で、第85回天皇杯全日本サッカー選手権大会の4回戦、アローズ北陸対名古屋グランパスエイトの試合が開催され、対戦相手がJ1のチームであり、県勢初の4回戦進出とあって新聞やテレビもこぞって特集を取り上げ、試合前から注目されていた。案の定、この試合には1万人以上の観客が集まり、試合模様もテレビで中継されることになった。後日このテレビ中継を録画したビデオを、Zさんがあるサポーターに渡していた。

 以上のように、アローズや自分たちに関する記念物や情報を仲間同士で共有するという場面を見ることができる。共有だけではない。Kさんが語ったように仲間に対する情報提供もなされており、こういった情報の提供や共有も「アットホーム感」に大きく寄与しているように思う。今回のインタビューにおいて、KさんをはじめHさん、Mさんは、「情報が入る」ということもファンクラブの利点として挙げていた。

また、Kさんは2つのファンクラブとアローズのファンクラブを比較して、自身の応援の違いについて次のように語った。「この2つ(横浜FCとザスパ草津)はわりと大きな応援団で応援しているのに対し、アローズのファンクラブはみんなで応援している感じがあり、私が唯一声だしをするファンクラブである。他のファンクラブは人数が多いので自分は声出しをしなくてもよい。」。サポーターの応援活動にとって声を出すというのは欠かせないことだが、横浜FCとザスパ草津の応援団は人数が多いため、自分が声を出さなくても、十分大きい声になるという。しかし、アローズ北陸のサポーターは人数が少なく、また、試合中ずっと立ちながら声を出す人も限られていて、多い時で30人、少ないと10人程度である。そのような応援体制の中、より大きな声にするためにKさん自身も声を出さなければならないと感じている。そのような想いは、声を出すことによって「自分も」応援に参加しているという意識を高め、「自分も」参加型の応援をつくり上げるのだろう。そして、「自分も」参加するということは、「みんなで応援している感じ」という想いをより一層強め、一体感を感じることへの寄与になるのではないだろうか。

このJリーグに加盟している規模の大きいチームの応援に参加した感想は、Gさんのインタビューの中でも見られた。Gさんは妻が新潟出身ということもあり、アルビレックス新潟の試合に足を運ぶことが時々あるという。そしてアルビレックス新潟の応援について、「実際にアルビレックスの試合を見に行くと、サポーターの集団が大きすぎて、自分たちがお客さんのような感覚を覚える。」と語っている。ある程度知名度もあり、ファンクラブの人数が多いところになると、試合に訪れる人の数も多くなる。すると、試合を見に行っても、応援する側にいるのにもかかわらず、お客さんのような感覚を覚えるという。もちろんGさん自身がアルビレックスのファンクラブには入っていないために、応援に対する情熱に差があるのかもしれないが、サポーターの集団が大きすぎると、「お客さんのような」感覚になってしまうものなのかもしれない。私自身もJリーグや日本代表の試合を観戦した経験が何度かあるのだが、応援をする際に中心となるのが、ユニフォームを着て固まっている応援団である。Jリーグの試合の際にその応援団の近くで試合を観戦したとしても、応援の迫力こそあるものの、その輪にすぐに溶け込み、一緒になって応援することは容易ではないかもしれない。ある程度大規模な応援団になると、戸惑ってしまい、応援者という立場よりも、観戦者という立場になってしまうように思う。それはKさんの語りでも表れていたように、声を出さなくてもいいというような「自分も」参加型の応援から身を引くことにつながる。少なくとも今回調査に協力してくれた中心的サポーターは、応援に自分が参加しているという意識があるようだ。

Kさんはアローズサポーターのアットホームな雰囲気に加えて、アローズの選手とサポーターとの関係、そしてサポーターの応援の姿勢について、インタビューの最後に次のように語っている。「応援する側とされる側の関係がいい感じ。サポーターの数は少ないが、少ないなりに一生懸命応援している。Jのチームになると、大きな応援団と選手という関係になってしまって、選手に対する要求も大きくなる。アローズのサポーターは選手に対する要求ももちろんあるが、俺達もがんばるから一緒になってがんばろうという感じがして、熱い応援の中にも温かさがあると思う。しかし決してぬるいというわけではない。」。

野球の阪神のファンにみられるような味方への野次、ブーイングという姿はアローズの試合では全く見られない。実際に試合の最中に、選手の集中が切れてきたなと思うようなプレーが見られたときには、「集中しろー」というような声も飛び交うが、このような言葉は選手を傷つける言葉ではなく、むしろ選手たちを鼓舞する声である。また、アローズが攻めているときは、「逆サイドの選手が空いてるぞー」、相手に攻められているときは、「セーフティ、セーフティ」などのアドバイス的な言葉も見られた。アローズサポーターが繰り出す声というのは、要求というよりも、戦っている選手を自分たちの仲間と捉え、その仲間を鼓舞したり、応援席という広い視野から見たアドバイスを送っているという印象である。

また、試合中にアローズの選手が決定的なチャンスを外すことがあると、一瞬「アー」と残念がる光景はあるものの、すぐに応援に入り、決定的なチャンスを外した選手名をコールし、エールを送っている。個人的な感情はあるが、その余韻に浸っている暇はないといわんばかりに応援に切り替えるのである。そして、決定的なチャンスを外したときほど、さっきまでの応援よりも声が一段と大きくなる。彼らは選手やチームを自分たちの声でサポートしたいというサポーターの役割を常に意識し、遂行しているように思う。それは試合が終わった後、アローズが勝っても負けても引き分けても必ず「アローズ北陸!」とコールする応援スタイルにも影響を及ぼしているのではないかと思う。

アローズの場合、選手とサポーターというように別々に括るよりも、同じチームの仲間というように一緒に括った方が、しっくりくる。「俺たちもがんばるから一緒になってがんばろうという感じがして、熱い応援の中にも暖かさがあると思う。」というKさんの語りは、上記のようなアローズサポーターの選手に対する応援の仕方を表しているように思う。

関西在住のLさんは、ファンクラブに入ったきっかけとして、「サポーターがコツコツと地道に活動している姿、応援の丁寧さに共感を覚え、その雰囲気もファンクラブに入った1つの要因。」と語った。この丁寧さも、実際に競技場に足を運ぶと理解することができる。

試合前や試合後には必ず、ユニフォームを着た中心的サポーターほぼ全員でフラッグ、または選手名が書かれた横断幕の設置や取り外しを自発的に行っているのである。それは規模の大きさに関わらず、他のどのチームのサポーターにも見られることであるが、少ない人数ながらも、応援したい、サッカーにおける応援スタイルに近づけたいという思いが伝わってくる。

スタジアムに入る際、チケットの確認と同時に、選手の1人1人の顔写真が載った青いシートや、ファンクラブが作成したアローズの応援歌が全員に配布される。その応援歌が載った水色の紙を見ると、基本コールとされるアローズ北陸応援コール(5パターン)、アローズ北陸チーム・サポートソング(8パターン)、2005アローズ北陸プレーヤーズ・サポートソング(24人分)が分かりやすく書かれている。(*実際に配られた応援歌集を巻末に掲載[資料1])各選手の応援を考え、また分かりやすいようにまとめて掲載し、来場者に配布している点も丁寧であり、1人でも多くの人に応援歌の存在を知ってもらい、歌ってほしいという姿勢の表れのように思う。第2章で紹介したALO’ HOURSという掲示板には、新加入選手の応援歌についての話題が持ち上がり、自分が考えた応援歌を載せている方もいた。編集がワトソン博士と書かれているのは、掲示板におけるハンドルネームだと思われる。このように試合のない普段の日でも、選手の応援歌を考え、他の人に知ってもらえるような工夫を練っている方もいる。

Zさんは、選手入場のときにスピーカーを使って、「青いシート(スタジアムに入場する際に配布されたもの)や青いタオルを両手で掲げてください」と観客に応援の仕方を示したり、入場が終わると、「ありがとうございます」とお礼を言っていた。選手入場のときにタオルなどを両手で掲げる応援スタイルは、サッカーでは一般的なものであり、日本代表や海外の試合でもよく目にする。このように観客に向けた応援スタイルの丁寧な説明と、やってくれたことに対するお礼もなされているのである。

 Zさんは他にもハーフタイム中に、「残すところ後半の45分だけです。選手と一緒にがんばりましょう。」と、士気を高めるためにスピーカーを使って観客に呼びかけ、観客から拍手が巻き起こるという場面もあった。応援のために士気を高めるという行為も行われていた。

 以上のように、アットホーム感も加味された地道な活動と丁寧さも、アローズサポーターから感じ取ることができる。

 アットホーム感は、なにもサポーター同士に限ったことではない。選手とサポーターの間にもそれを感じ取ることができる。Hさんはファンクラブに入った利点として「選手の近くにいれる」ことを挙げていた。Jさんは、「試合中は言いたい放題言って、試合後の出待ちのときには『お疲れ様』『またがんばろうね』などと声をかける。たまに『ちゃんとやらなきゃ応援してやんねーぞ』といじめたりもし、そこはプロとは違う親しさがある。」と語った。実際に出待ちの光景を見ると、何人もの人が選手を待っていて、「今度は頼むぞ」などと気軽に選手に話しかけている人もいた。また選手もサインを頼まれると、それに丁寧に応じていた。プロの選手を出待ちしても、実際は警備員や多くの人だかりに阻まれて選手と直接コミュニケーションをすることは容易ではない。カメラで写真を撮っても選手が小さくなったり、正面からきちんと撮ることは難しい。しかし、JFLの試合では選手とまるで知り合いのような感覚で接することができ、選手もまた丁寧に応じてくれるのだ。また、稀ではあるが、Iさんのように、ファンクラブに加入してはいないが、アローズの選手が自分の会社にアルバイトに来ている縁もあって、彼らを応援するためにユニフォームを着て会場まで足を運ぶ人もいた。プロではない選手たちの中にはアルバイトをしながら生計を立てる選手もいるのだが、Iさんはその縁を大事にしたいという思いから、アローズを応援するようになったようだ。

ある日のアローズの試合では、このような光景が見られた。応援席の近くで1人でウォーミングアップをしていたアローズの選手にむかって、「先週出れんだから、今週出んと。」とあるサポーターが話しかけると、選手も笑顔でそれに答えていた。また、ゴールキーパーの選手には、「完封、完封」と言って選手を盛り上げ、選手も手を振るような形で応えていた。この様子には、アローズサポーターに交じって談笑をしていた他のチームのサポーターも、「ああいうふうにしてくれて(声援に応えてくれて)、いいな。」と羨ましがっているほどだった。選手だけではなく、監督もそうである。毎試合監督の名前もコールするのだが、監督はその後に必ずサポーターの方を向いて、両手を振って応えてくれる。

このような双方向のコミュニケーションがなされることもアローズの試合での魅力のように思う。双方向のコミュニケーションがなされることによって、Jさんが語るような「親しみやすさ」が選手に対しても沸いてくるのだろう。それはチームが少人数ながらも自分達を応援してくれる人達を大事にしていることの表れかもしれない。

一方、今回のインタビューでは、今まで見てきたような利点ではなく、問題点をサポーター個人個人が意識していることも分かった。

ファンクラブに入って悪かった点については、ほとんどの方がないと答えていたのに対し、Fさんからは「会報誌をもっとちゃんと出してほしい」、Mさんからは「ファン感謝デーがないのが悲しい」というような声を聞くことができた。どれもファンクラブ活動の充実を願うものであった。ファンクラブ事務局の人数や、Aさんが語ったように活動に限界を感じてしまうというようなことを考えると、ファンクラブ活動が充実しているとは言い難いかもしれない。

試合の観客動員数については、全員がまだまだ少ないと感じているようだった。それ以前に、アローズ北陸やJFLの認知度が低いという声も聞かれた。改善するための方法としては、メディアが一番であるという声が多かった。その中でKさんとHさんはそれぞれ、選手をテレビに映すことによって選手目当てのお客さんを増やすことができるのではないか、アローズの試合中継をテレビで流してもよいのではないか、という考えを持っていた。新聞やテレビにアローズ北陸が取り上げられることで、より多くの県民に知ってもらうことが先決だと考えているようだ。また、現状の問題点を指摘する声も聞かれた。Jさんは、同じ富山県をホームタウンとし、同じJFLに所属するYKK APとアローズが、サッカー好きをどちらに引き寄せるかという形になっていると考え、サッカー好きでない人たちに対してもっとアピールするべきだと語った。この意見はBさんのインタビューの中にも見られた。他には、Bさんのように、観客動員を増やすための活動がどうしても社員サポーター中心になってしまうので、限界があるのではないかと考え、行政やサッカー協会の協力も必要になってくると語る人もいた。CさんもBさん同様、1企業では限界があるので、行政の協力が必要になってくると語った。サッカー好きではない一般の人に向けたアピールと、その方法が今後の課題になるかもしれない。

Jリーグ入りについては、驚くほどに全員が慎重な意見を持っていた。Jリーグに入ってほしいという思いはあるものの、実際は難しいと考えているようだ。まず、1番多かった意見として、北陸電力1社だけでは難しいということである。財政的な面を見ても、富山県の色々な企業から出資してもらい、そういった企業の理解を得なければJリーグ入りは難しいということだった。もちろん、その中には同じJFLで活躍するYKK APの名前も挙がっていた。企業だけではない。Hさんは、サッカー協会や県や市の協力も必要になると語った。そしてアルビレックス新潟と大分トリニータを例に出し、行政のリーダーがJ入りを表明することで、J入りが早まることを示していた。また、無理してJリーグに行くよりも、このまま地道に活動をしていって、その延長線上にJ入りがあればいいというような慎重な意見も多かった。成績を見ても、J2に昇格できるJFL2位以内に入っていない。また、観客動員数を基にした県民の盛り上がりを見ても、アローズの1試合の平均観客数は600人前後である。このように、成績や県民の盛り上がりが足りないことを、サポーターたちは感じ取っていて、まずは成績を上げ、地道に地元の声援を集めることが必要不可欠だと思っているようだ。中には、社員サポーターであるDさんのように、Jリーグに入ると北陸電力から離れていくだろうと少し複雑な心境で予想しながら、雰囲気は今のままでも十分であり、JFLのままでもいいかもしれないと語る人もいた。Mさんにいたっては、社員選手が少なくなることを嘆きながら、Jリーグ入りには基本的には反対であると語った。富山県からJリーグチームが誕生するかもしれないと紙面やテレビで騒がれる中で、実際にアローズの試合を見ている人たちは、実情を知っているせいか、それほどJ入りに積極的ではなかった。