第3章 アローズ北陸JFL公式戦 観戦日記

 

この章では、実際にアローズ北陸の試合を見に行った様子を描写する。

 

*以下の文中に出てくる「CK」、「FK」、「PK」は、それぞれコーナーキック、フリーキック、ペナルティキックを意味する。

 

 11時に家を出発する。車で会場となる岩瀬スポーツ公園に向かう。外に出てみると、今日は澄み切った青空で、絶好のサッカー日和になった。富山市内から国道8号線にのり、魚津方面に向かい、岩瀬スポーツ公園の看板が見えたところで左に左折する。またしばらく直進し、左折すると岩瀬スポーツ公園が見えてきた。意外と早く、20分くらいで会場に着いた。岩瀬スポーツ公園の駐車場に入ると、アルバイトだと思われる若い男性スタッフが、水色のアローズ北陸のTシャツを着ながら、車の誘導をしている。その男性が私の車に近づいてきたので、窓を開けると、「サッカーですか?」と聞かれ、私は「はい。」と答えた。すると、「前の車について行ってください。」と言われ、前の車について行く。やはり富山での試合は車で来る人のために少ないながらも誘導係まできちんと配備されていた。コンクリートの駐車場は、車で一杯になったらしく、臨時駐車場である土の小さなグラウンドに車を止めることにした。その駐車場はコーンだけが並べられている、簡易なものだった。駐車場にはもうすでに156台くらいの車が停まっていた。車を降りて、グランドの方を見ると、芝生の上にマスコットキャラクターの載ったアローズのフラッグ(少し大きめ)が数メートル間隔で、数十本並んでいた。それらを見ながら、みんなが向かっているテントの方に私も向かった。駐車場からテントに向かう間、サッカー場には大音量でジャパニーズポップや女性のアナウンスが流れ、非日常的な雰囲気をつかむことができた。

 グランドの出入り口の前にはテントが1つだけ立っており、そこにもアルバイトだと思われる女性3人が、黄緑色のジャケットを着ながらチケットのもぎりをしていた。さっきの誘導していた人や、もぎりをしている人はどのように募集され、時給はいくらで、どこの会社が支給しているのだろうか?昨日ローソンで買ったチケット(500/前売り)を1人の女性に渡すと、選手や監督1人1人の顔写真とプロフィールが書かれた青い応援シートを受け取り、中に入った。

 出入り口を通り、サッカー場の中に入ると、前にはコンクリートの通路があり、芝生の競技場と観客席はコンクリートの小さなフェンスで区切られていた。通常のサッカー場はフィールドと観客席は遠いものだが、岩瀬のサッカー場はフィールドがとても近いため、選手を間近で見ることができる。陸上用のトラックがあるとどうしても選手が小さく見えてしまうが、そのような心配はなさそうだ。通路を挟んでフェンスの反対側には緩やかな傾斜の芝生席がある。50人くらいの人がもう芝生席に座っていた。通路の中央部分にはファンクラブの中心的存在であろう5人がアローズの青いユニフォームを着て陣取っていた。そして、サッカーの応援には欠かせない大きなフラッグも3つフェンスに掛けられている。JFLといえども、Jリーグに見るような大きなフラッグが存在していることに驚く。そして、通路には20個のメガホン(2つに割れていて、叩くと音が鳴る)が1列の置かれている。私は中央部分に近い芝生席の1番後ろに陣取った。ここなら通路の中央部分にいる中心的サポーターの動きもよく分かる。周りを見渡すと、芝生席にいる人たちもほとんど1番後ろの方に座っていた。そして、子供連れの家族が多いことに気付く。グランドに目を向けると、ゴール裏のフェンスには、選手個人の名前が書かれた横断幕が何枚も取り付けられていた。これもサッカーの試合には欠かせない必需品のようなものだろう。アローズ北陸の応援グッズはJリーグと比べても、そんなに差はない。サッカー場全体を見ると、芝生席の反対側にはコンクリートでできたスタンド席があり、芝生席とは違って高い位置から試合を見ることができる。そこにはすでに200人程の観客がいる。スタンド席は約50メートルで、その両サイドには私たちが座っているのと同じ芝生席があった。反対側の芝生席にも20人くらいの観客がいる。

グランドの中には両チームの選手たちがアップをしている。アローズの選手たちは私から見て右側で、センタリングからのシュートといった形式の練習をしていた。センタリングからダイレクトでシュートを打っていたのだが、決定率の高さに少しビックリした。センタリングの精度も高く、見ていても気持ちいい練習風景だ。自分も12年間くらいサッカーをしてきたが、こういう高いレベルでサッカーをするチームが身近にいる環境がうらやましく思えた。アローズが公開している練習も、自分のチームの練習に取り入れることができるからだ。基礎もしっかりしていて、ミスの少ないアローズの選手たちは、小さい子供から、大人までサッカーを楽しむ人にとっては、まさにお手本のような存在だと思った。選手がシュートを決めると、中央部分にいる4人は拍手をしていた。他の人たちは拍手まではしていなかったが、練習はじっと見ていた。中心的なサポーターたちは練習から選手たちを盛り上げようという雰囲気を感じ取ることができた。それは本当に心の底から応援しようという姿勢の表れだと思った。選手たちがアップをしている中、場内には女性のアナウンスが流れたり、スピッツや鈴木あみなどの曲が流れたりと、場内が静まることはほとんどなかった。アナウンスの女性は、今日行われる抽選会などの催し物の案内や各地で行われている試合の途中経過などを知らせたり、「アローズカラーで染めましょう!」と場内を盛り上げるアナウンスもしていた。ミュージシャンの曲が流れ、しばらくすると女性のアナウンスが入り、そのアナウンスが終わるとまた曲が流れ出すという感じだった。

 すると、女性のアナウンスで選手のスターティングメンバーが呼ばれる。アローズの1人1人の名前が呼ばれると、中央の5人は選手の下の名前を叫び盛り上がっていた。例えば、1人が「カズト!」と叫ぶと、それに続いて5人が揃って「カズト!」と叫んでいた。ふと、中央に目を向けると、5人の他にも水色のTシャツを着た人が彼らの少し後ろに立っていて、6人になっていた。スターティングメンバーの発表が終わると、中央の6人は座って談笑をし始めた。スターティングメンバーが発表されるときには、立って決められたコールを叫ぶなど、ある程度の決まりを遵守していたが、メリハリをきちんとつけていることが分かった。自分の左側には、子供連れの母親らしき女性が3人で日傘を差しながら座っている。時折、右斜め前にいる団体の子供が数人、女性の方に向かって走ってくる。多分、団体の保護者なのだろう。私の右側には子供連れの父親が座っている。先ほどから右斜め前の団体の子供たちは思い思いに動き回っており、中には弁当を食べている子もいる。芝生の上で弁当を食べることもでき、その風景はピクニックに似たものだった。日曜日の午後1時から試合が開始されるため、晴れた日にはレジャー感覚で訪れるのも悪くないと思う。サッカーが好きな子供たちにとっては、ピクニック気分を味わうことができ、身近にレベルの高いサッカーの試合を見ることができるため、一石二鳥だと思った。また、日ごろ外に出ない人にとっても、緑の芝生に触れることができ、いいリフレッシュになるのではないかと思う。試合開始の5分前くらいになると、私たちが座っている芝生席に座っている観客は80人程に増えた。グランド内には10人のボールボーイと呼ばれるボール拾いがフィールドを囲うように座っている。JFLの試合にもボールボーイが配備されていることに驚いた。本格的なサッカーの試合であることが伺える。観客席にも2人のスタッフが見回りをしていて、試合のための警備も万全だ。

選手の入場曲が流れ始める。すると周りの人たちはアローズカラーの青いポスターのようなものや青いタオルを両手で持ち上げている。以前日本代表の試合を見に行ったことがあるが、そこでも同じようなことをやっていた。フラッグを持ち、振っている人もいる。サッカーでは一種のお約束みたいな光景である。サッカーの試合が始まるあの独特な雰囲気を身近に味わうことができ、胸が高鳴る。中央の6人はアローズの応援歌らしきもの(「君の瞳に恋してる」の替え歌等)を大太鼓を叩きながら歌い、激しく盛り上がっている。選手入場の間に、中央部分には続々と人が集まり、9人になった。大声で監督名を呼び、そのあとに拍手をしていた。向こうのベンチでは名前を呼ばれた監督が手を振って応えていた。監督が丁寧に手を振り返すという光景を始めて見た私は感激したと共に、チーム側と応援する側の温かい一体感を感じた。向こうのスタンド席には350人程(スタンドが約300人、芝生席約50人)の観客が集まっていた。

 13:00 キックオフ。中央の9人はキックオフからずっと歌い続ける。そしてしばらくして水色のTシャツを着た女性が中央部分に加わり、フラッグを持って応援している。10人になった中央部分の人たちは最前列で旗を持ったり(3人)、ドラムを叩いたり(1人)していて、それ以外の人たちはメガホンを持ちながら応援している。芝生席の一番後ろに座っている人たちの中にも、メガホンを持っている人は多い。中央部分にいる人たちが歌い始めてから、5分が経過した。ずいぶん長い間歌っているんだなぁと驚く。アローズ北陸に惜しいシーンがあると、芝生席の6、7割の人が拍手をしていた。私の右隣には中年の夫婦が来て、座った。右斜め前にいる女の子は自分勝手に遊んでおり、興味がなさそう。右側の女性は「負けるな!」(そんなに大きな声ではない)と言っている。辺りを見回してみると、年配のおじさんの姿も多いように感じる。私の左斜め前には年配の男性2人組が座っており、1人のおじさんは通路に置いてあるメガホンを取りに行き、また自分の席まで戻った。通路の中央部分に20個ほど並べられていたメガホンは、試合を見に来た人が自由に取っていいように置かれていたんだと分かった。メガホンを持っている人たちは、中央部分の人たちが歌う応援歌のリズムに合わせてメガホンを叩いている。中央部分の人たちは静まり返ることはなく、1つの曲が終わったら、一呼吸おいて次の応援歌に入るという感じだ。中には3、4分続く応援歌もある。ただし、アローズ北陸が相手チームのゴールに近づいたり、相手チームに攻め込まれていると、応援歌をやめて、そのシーンに注目する。応援において、ある程度の規律が存在しているようだ。中央部分にいるサングラスをかけたおじさん(着ているユニフォームの背番号は13番)は惜しい場面があると、悔しそうなジェスチャーを体全体で表していて、中心的なサポーターの中でも結構目立っている。小さい子供たちは緑の芝生の上を走り回っている。ほとんどレジャー感覚で、自分が動きたくて仕方ないのだろう。私の右側にいる女性は「行け行け!」と言いながら応援していてかなりのめりこんでる模様。そのとき、2人の子供を連れた女性が前を通った。やはり子供連れが多い。中央部分の人たちは、相手チームがファウルをすると、「オーイ!」とブーイングをしていた。そしてすぐにがんばった選手の名前を叫んでいた。先ほど来た水色のポロシャツのおじさんも熱が入ったのか、ついに立って応援し始めた。私の左に座っている夫婦も結構のめりこんでいて、夫の方は「あー、逆!」、妻の方は「今の入れたら気持ち良かったのにね。」などと話している。その話ぶりから、結構な数の試合を見ていて、玄人っぽいなと感じた。

試合が開始して20分が経過した。中央部分は10人のままだ。25分が経過したところで、アローズの選手が相手ゴールの近くでファウルを受け、いい位置でFKを蹴ることになった。ファウルを受けたときは、アローズサポーターの6,7割の人たちがブーイングをしたが、その後に拍手をしていた。そして2人程の子供たちはメガホンを取りに行った。右の夫妻の男性もメガホンで応援していて、リズムに合わせて叩いている。惜しくもそのFKを決めることはできなかった。

前半28分、アローズ北陸はまたもやいい位置でFKを手に入れた。その時分かったのだが、CKFKなどのセットプレーの時には必ず、ブルーハーツの「トレイン トレイン」の替え歌を歌っている。覚えやすく、頭に残るメロディで、私も思わず口にしてしまう。中央部分の右側の体格豊かな人は、体をジャンプさせながら応援している。中央部分の左側の人は大きなフラッグを縦に揺らしている。

前半35分、アローズの選手(北川佳男という選手?)が顔を蹴られ、うずくまり、一瞬会場が静まりかえった。選手は大事にはいたらず、試合に戻った。ゴールキックの時の応援団のかけ声は、キーパーが助走するときには「オーー」で、蹴る瞬間に「オイ!」というもので、どんなサッカーの試合でも見られるかけ声だ。途中で1人の中年男性が芝生席にやってきて、私の前を通った。38分頃には、60歳くらいの老夫婦が私の左斜め前に座った。おばぁちゃんの方は前までメガホンをとりに行き、メガホンを片手に座っている。20代後半の、ちょっと「アキバ系」の入った男性(頭に白いバンダナを巻いている)が芝生席の前方に1人で座っている。その男性の左側には2人の子供を連れた母親が座っている。2人のうち1人の男の子はメガホンを持ちながら遊んでいる。前半も終わりに近づいてきたが、中央部分の応援はほとんど止むことはなく、今度は「グリーン グリーン」の替え歌を歌っている。ほんとに誰にでも覚えやすい歌だ。スタンド席には相手チームの横河武蔵野FCのサポーターもいて、ものすごく大きな声で野次を飛ばしていた。そして、前半も終わりかけた45分、アローズ北陸は決定的瞬間を決めることができず、観客からは「アー」という大きなため息が発せられた。私もいつの間にか試合にのめりこんでしまい、「あー」と口に出して、悔しがった。玄人であろう右側に座っている夫婦の妻は、選手の名前を覚えてるらしく、「がんばれ、石橋くーん(石橋直希)」と叫んでいた。知り合いだろうか??13:49 前半戦が終了した。

 前半が終了し、中央の人たちは太鼓を叩きながら、「アローズ北陸」のかけ声をかけ、休憩に入った。これも試合終了後にはお決まりの応援らしい。グラウンドには再び音楽が流れ始め、控えの選手がアップを始めた。中央の右側の太った男性は、応援席から離れ外に出て行った。トイレにでも行くのだろうか。それとも何か飲みに行くのか。背番号00番の男性も続いて外に出て行き、他の中央の人たちも座り始めた。ハーフタイムは応援団にとってもハーフタイムなのだろう。あれだけ休み無しに叫んでたら、休憩も必要だろうと思った。しかし、応援するときはきっちり応援し、休憩するときは仲良く談笑しながら休憩するというメリハリをつけた姿に、再び感心した。

しばらくすると、抽選会が始まった。友人から聞いたのだが、ハーフタイムの抽選会は毎回恒例らしい。会場に入る時に渡したチケットの半券に書かれた番号を女性が読み上げ、観客は自分が持っているチケットの半券に書かれた番号を見ている。抽選会であたる商品は、オリジナル膝掛け、大塚製薬ペットボトルホルダー、ハンドタオル、アローズ北陸サイン色紙、アローズ北陸キーホルダー、アローズ北陸タオルマフラー、アローズ北陸チケットホルダー、観戦ペアチケットなどがあった。私も自分のチケットの半券の番号を必死で見ていたが、惜しい番号はあるものの1個も当たらなかった。周りの人も、必死で自分のチケットに書かれている番号を眺めていた。ハーフタイム中も観客を飽きさせない抽選会があり、自分もビンゴゲームや宝くじの番号を確かめるようなドキドキ感を味わうことができ、15分間のハーフタイムも苦にならず楽しめた。ハーフタイムには、他の試合の途中経過も放送していた。団体で来ている子供たちはハーフタイム中も相変わらず、思い思いに遊んでいた。まるでサッカー場の芝生席が、自分たちの遊び場になったようにはしゃいでいた。

 1400 後半開始。また前半と同じ3分くらい長めの応援歌が続く。芝生席の1番後ろで立ちながら、メガホンを叩いている人が3人いる。後半開始から3分が経過したとき、アローズ北陸が相手のペナルティエリアでファールを受け、PKを手に入れた。すると応援席にいた7割くらいの人たちが拍手をしている。自分も「ラッキー」と心の中で叫んだ。アローズの選手がそのPKを決めると、中央の3人は大きなフラッグを縦に揺らし、他の応援団員は「君の瞳に恋してる」の替え歌を歌いながら盛り上がっている。すると応援席の9割の人たちが拍手をした。このあたりはさすがホームといったところだろうか。会場全体がアローズの1点に沸き、一体感が生まれ、思わず私も拍手をした。目の前に、母親と娘2人の家族が現れる。娘2人のうち、1人は上半身裸になっている。今日は快晴で、気温も高めなので、絶好の日光浴日和といった感じなのだろう。芝生席には水色のTシャツを着たスタッフが見回りをしていて、通路や私の後ろなんかも、行ったり来たりしている。30代半ばの男性2人組が現れる。アローズ北陸の選手がシュートを外すと、選手の名前を呼び、労いというか励ましの言葉をかけている感じだった。右側にいる夫婦の妻は、相変わらず「石橋くーん」と叫んでいる。右斜め前にいる子供たちは、私の後ろを走り回ったり、芝生の上で寝転んだりしている。そして、母親も子供たちの世話をするために歩き回っていた。後半15分にアローズ北陸の選手が決定的なシュートを外し、全体的にため息がもれる。私も「あー」と悔しがりながら、座ったまま後ろにのけぞった。そのとき右側の夫婦の妻は「惜しい!」と叫んでいた。アローズ北陸がCKを手に入れると、中央の人たちだけではなく、周りの人たちもメガホンを使って応援していた。最初のほうは、中央のサポーターやその付近の観客しかメガホンを使って応援してなかったが、徐々にメガホンを持って行く人が増え、真ん中に並べられたメガホンはなくなってしまった。相手ゴールにボールが近づいたり、セットプレーになると応援にも熱が入っていく。右の夫婦の妻はまた「石橋くーん」と叫ぶ。中央の人たちに目をやると、眩しいのかほとんどの人がサングラスをしていた。中央右側の太った人は個人的に選手名を呼んだり、「逆サイド空いてるぞー」などアドバイス的なことも言っていた。選手名を知っているのはもちろんだが、サッカーの戦略のこともちょっとは知っているみたいだ。中央にいる人たちは、みんなこうなのだろうか?右の夫婦の妻は「よしおちゃん(北川佳男)」と叫ぶ。「よしおちゃん」とやらも知り合いなのだろうか?一体どんなつながりなのだろう?試合中には「粘り出てきたよー」などと叫ぶ人もいる。

アローズが再びCKを手に入れ、拍手が沸き起こる。チャンスに絡んだ選手が「わたなべ(渡辺誠)」というのだろうか、中央の応援団からは「わたなべ」コールが起こった。このときはなぜか数人の子供たちも一緒になって、「わたなべ」コールをしていた。左斜め前にいる老夫婦のうち、おばちゃんも小さくではあるがメガホンを叩いている。しばらくすると、アローズ北陸の選手が相手チームのサポーターから野次を受ける。遅延行為が原因だろうか?野次を飛ばしていた相手チームのサポーターは、反対側のメインスタンドにいたが、その野次の声は大きく、会場に響き渡り、こちら側まで聞こえてきた。会場は一瞬静まりかえったが、すぐに試合は再開された。芝生席の1番後ろで立っている人たちは10人程度で、その中にはユニフォームを着ている人も数人いた。応援の合間には沈黙もあったが、1・2分しか続かない。相手選手にイエローカードが出る。すると、6割の人が拍手をし、子供たちもそれに乗って「イエーィ」と叫ぶ。アローズ北陸は選手交代を行い、中央の応援団は入ってきた選手の名前「カズマ(松下和磨)」を数回連呼する。試合の途中で来場者数が発表され、620人という数に驚く。試合が始まる前から思っていたことだが、来場者数は40人程と思っていた私にとってはビックリな数である。試合も終盤にさしかかり、グラウンドと応援席を区切る小さいフェンスに、8人の子供たちが座っている。そのうちの3人くらいの子供たちは、中央の応援団のリズムに合わせて一緒に応援している。中央にいる右側の太った人は、石原裕二郎ばりに片足をフェンスにかけながら応援している。試合時間がもう残り少なくなった頃、活を入れるためか、「中途半端なことするなよ」と芝生席の誰かが野次を飛ばす。

 1450分 試合終了。1対0でアローズ北陸が勝利する。アローズの勝利に応援席にいたほぼ全員が拍手をする。中央の応援団は、3人が3つの大きなフラッグを振りながら、再び「君の瞳に恋してる」の替え歌を歌っている。すると、試合を終えた選手たちが芝生席までやって来て、観客に向かって両手を挙げ、挨拶をした。そして芝生席にいたほぼ全員が拍手を送り返した。それが終わると中央の7人も、しばし休憩に入った。「川前選手(川前力也:アローズ北陸キャプテン)のマイクパフォーマンスが始まります。」という女性のアナウンスが流れ、川前選手は今日の試合の感想だったり、次節に向けての抱負を語った。野球やサッカーの試合後に行われるヒーローインタビューみたいなものだろうか。川前選手のマイクパフォーマンスが始まると、中央の7人は応援歌を歌いだした。この応援歌なのだが、試合中に数えた結果、約16もの応援歌が存在した。かなりの数に驚き、1つ1つ考えていったんだなぁと思うと、とても感心した。

今日の試合に勝ったため、アローズ北陸は4連勝となり、それを記念して選手から観客席に向かって、サイン入りミニボールが投げ込まれることになった。初めはスタンド席に投げ込まれていたが、3人ほどの選手が芝生席にもやって来た。それを見た芝生席の子供たちは中央に集まり、「自分にくれ」といわんばかりに両手を挙げて待っている。中央に集まってきた子供の数は相当なもので、50人は超えていたと思う。試合中は芝生の上を走り回っていた子供たちも、このときばかりは必死で、投げ込まれたボールに向かって団子状態で取りに行っていた。中央の応援団の人たち(結構いい年)も、子供のマネをしながら、自分も欲しいというようなアピールをしていた(多分本気ではない)。結局芝生席には5個のボールが投げ込まれ、ボールを手に入れることができた子供たちは嬉しそうだった。そのボールを大人がとるようなことはなく、試合に来ていた子供たちに向けて行われるファンサービスのようなもので、選手が子供たちに向かってボールを投げ入れる姿は微笑ましかった。そのような試合後のアトラクションが終わると、中央の応援団の人たちはフィールドに入り、選手の個人名が書かれた横断幕を取り外し始めた。会場では女性のアナウンスが流れ、試合の前の午前中に行われていた、カーテンレザーマッチと呼ばれる少年団同士の試合(芝生のコートを2分して、2試合同時に行われる)におけるグッドプレーヤー賞を発表していた。数人の子供の個人名が会場で呼ばれ、その子供たちは表彰されていた。子供たちにとっては芝生でサッカーをする絶好の機会であり、グッドプレーヤー賞に選ばれたら、一生の記念になるだろうなと思った。

1500 子供たちや保護者、他の観客もぞろぞろと帰り始めた。全体を通しての試合内容は、パスの精度やゲームの組み立て方は自分にとっても参考になり、サッカーの未経験者はもちろんのこと、それなりにサッカーを経験している人でも楽しめるように思った。