第2章 北陸電力サッカー部アローズ北陸
第1節 チームの紹介
アローズ北陸は、1990年「スポーツを通じて企業イメージの向上と地域スポーツ振興への寄与、職場の活性化を図る」ことを目的に創部、1996年にチーム名を「北陸電力」から現在の「アローズ北陸(ALO's)」と改め、仕事とスポーツの両立をモットーに活動するアマチュアチームである。(北陸電力スポーツウェブより引用)
北陸電力にはサッカー部の他に、バスケットボール部(石川県)、ハンドボール部(福井県)がある。これらが創部された目的は、企業イメージのアップと公益事業のお返しというコーポレート・アイデンティティ(注1)の側面と、また仕事以外での社員の盛り上がりを設けるという側面があった。
1990年の創部以来、1990年には県3部リーグ優勝、1991年には県2部リーグ優勝、1992年には県1部リーグ優勝という順調な成績を残し、1993年には地域リーグの北信越リーグに昇格を果たす。昇格して以降も北信越リーグでは必ず2位以内(優勝経験もある)に入るものの、JFL昇格への最終ステップである、全国地域リーグ決勝大会ではなかなか思うような成績を残すことができなかった。しかし、1999年に全国地域リーグ決勝大会で優勝することができ、翌年からのJFL昇格が決定した。創部から足掛け9年でのJFL昇格となる。JFLに昇格した2000年には、国体が富山で開催され、アローズ北陸とYKKを主体とした富山県代表は見事に優勝(東京都代表と同点優勝)を手にした。JFLに昇格してから昨年(2004年)までのリーグ成績は、年間を通して勝ちよりも負けの方が多く(特に2001年は4勝、2002年は3勝しかしていない)、成績も芳しくない厳しい状況が続いている。〔下記の表を参照〕
アローズ北陸の公式サイトにおける今年(2005年)のチームの構成を見てみる。まずスタッフは監督、コーチ、ゴールキーパーコーチ、トレーナーの4人である。そして選手はゴールキーパー3人、フィールドプレーヤー20人の計23人であり、チーム全体では27人になる。この選手名鑑を見ていて目につくのが、元プロの選手の多さで、23人中13人がJのチームからアローズ北陸に加入している。
公式サイトに掲載されているシーズン中のチームスケジュールを見ると、平日は午後3時から富山市の草島グラウンドで練習を行い、土・日には練習や試合が入り、基本的には試合の次の日はオフになる。しかし、天皇杯予選などで週に2試合行われる場合はオフがないこともある。
チーム自体の目標としては、JFL上位入賞と天皇杯でJリーグチームに勝利することが掲げられ、Jリーグ(J2)入りの意思表明は示しておらず、あくまでもアマチュアのトップを目指している。今のところJリーグ入りを見据えた活動はしていない。
【これまでの歩み】
平成2年度 県3部リーグ優勝
平成3年度 県2部リーグ優勝
平成4年度 県1部リーグ優勝
平成5年度 北信越リーグ2位
平成6年度 北信越リーグ優勝 *震災により全国大会辞退
平成7年度 北信越リーグ2位
平成8年度 北信越リーグ2位、全国大会予選敗退
平成9年度 北信越リーグ2位
平成10年度 北信越リーグ優勝、全国大会予選敗退
平成11年度 北信越リーグ2位、全国大会優勝(JFL昇格決定)
平成12年度 第2回JFL
2000(8位/12チーム)
平成13年度 第3回JFL
2001(15位/16チーム)
平成14年度 第4回JFL
2002(14位/18チーム)
平成15年度 第5回JFL
2003(14位/16チーム)
平成16年度 第6回JFL
2004(10位/16チーム)
【日本におけるサッカーリーグの相関図とJリーグ参加条件】
* Jリーグ参加条件
Jリーグへの参加条件として、@参加クラブの法人化、Aホームタウンの確保、B選手・指導者のライセンス、C チームの保有、D
スタジアムの確保が挙げられる。
第2節 ファンクラブ事務局の紹介
サッカー部創設にあたって、会社側が北陸電力富山支店の労務課にサッカー部の担当を依頼したのが始まり。この労務課の中には人事担当、労務担当、福祉担当(社員の福利厚生)があり、福祉がスポーツ関係を担当していたため、サッカーも担当することになった。この労務課の人々が中心となって、サッカー部創設当時(1990年)から私設応援団のようなものができた。
アローズ北陸ファンクラブ事務局次長のZさんによれば、最初の頃は上司や社員の家族など、身内しか応援していなかったというのが現状だった。ファンクラブが具体的に組織化されたのはサッカー部が創設されてから5年後のことで、それ以降は社外にもPRをするようになり、社外のファンも少しずつ増えていった。その社外のファンが次に友達をつれてくるなどの形で増えていき、今では約500人がファンクラブに加入している。一時期は700人程いたそうで、その頃に比べると今は減ってしまっている。ファンクラブ会員約500人のうち約400人は北陸電力の社員で、残りの約100人は社外である。中には県外の方もいて、富山まで足を運んで応援したり、また自分が住んでいる場所の近くでアローズの試合がある場合、その試合に足を運ぶ人もいる。
私設応援団を前身とすることから、北陸電力サッカー部事務局とはあくまでも別組織ではあるが、ファンクラブ事務局の構成員は多数が北陸電力の社員であるため、北陸電力サッカー部とは密に連絡をとりながら活動をしている。
ファンクラブ事務局の体制は、総務部、応援部、広報部の3つで成り立っている。総務部の仕事内容は、毎年3月の総会及び激励会の計画・運営や、ファンクラブ会員から集めた会費を管理したり、ファンクラブ会員に会員価格でチケットを販売したり、応援部とタイアップして遠征費を組み、バスツアーを企画したりしている。応援部は毎試合の応援団の組織運営を行っていて、どうしたら観客が増えるかという動員計画、シーズン前の駅前でのビラ配りも担当している。広報部というのは主に会報誌の内容を計画している。それぞれの部は部長の下に2〜3人がいるという形なのだが、3つの部を含めると約15人の人がいる。今回の調査に協力してもらった北陸電力の社員の人々は、発足当初からの愛着ゆえに応援しているという人が少なくなかった。
一般の人がファンクラブ加入を申し込む際の連絡は、平日の日中に受け付けており、年会費として3000円が必要になる。会員特典として、会報誌「GOAL!GOAL!GOAL!」の発行や入会記念品(応援)グッズの進呈、特製ポスターカレンダーの進呈などがある。会員から集めた年会費3000円がファンクラブ事務局の運営資金になり、年会費で会員になってくれた人に記念品を贈ったり、選手の名前が書かれた垂れ幕やアローズ北陸のフラッグを作成しているが、他には選手への差し入れもある。しかし、ファンクラブ事務局のAさんは、毎年会費を集めているが、結局活動内容が限定され、規模が小さいファンクラブの財政的な厳しさもうかがえる。
ファンクラブの主な活動は試合における応援だが、それ以外の活動もしている。毎年恒例となっているのが、シーズン前に行われるファンクラブ「総会及び激励会」と、JR富山駅周辺での街頭チラシ配布活動である。
ファンクラブ総会及び激励会
毎年3月中旬に北陸電力本店ビル2F大ホールで行われる。社外会員の方も出席し、シーズン前に選手を激励するのが主な目的。18時から19時半の約1時間半行われ、ファンクラブ会員は2000円の懇親会費を支払う。出席の旨は、アローズ北陸ファンクラブ事務局に電話をして伝える。
街頭チラシ配布活動
シーズン開幕日の約1週間前にJR富山駅周辺で、アローズの試合に関するチラシを配布する。配布する人はアローズカラー(青)のウインドブレーカーを着用する。チラシは、間もなく開催されるJFL公式戦において、アローズの応援を促す内容になっている。また、このチラシを開幕戦に持参すると特典がついてくることをアピールし、開幕戦当日に入場口受付へ提示するよう呼びかけている。この活動はファンクラブ事務局(応援部)のZさんが下記のALO’s HOURSのBBSで知らせていて、チラシ配布当日にボランティアでお手伝いしてくれる人も、ファンクラブ会員、非会員を問わず募集していた。
第3節 ALO’s HOURSの紹介
アローズ北陸のファンサイトの元祖と呼ばれているのが、ALO’s HOURSである。もともとアローズ北陸の公式サイトは北陸電力のホームページに存在しているのだが、その公式サイトの内容はチームの紹介(選手の紹介)、試合日程、過去の戦績、情報BOX(チームの月間スケジュール、サッカー教室の模様、リーグ以外の国体や天皇杯の情報、選手や監督がメディア〔主にテレビやラジオ〕に出演する際の情報)、通信販売である。その中にファンクラブに関する問い合わせのページもあるのだが、内容は充実しているとは言いがたく、試合結果は早めに更新されるものの、それ以外の更新はあまりない。
ALO’s HOURSはこれら会社の公式サイトとは別であり、アローズ北陸を応援する1個人が管理しているファンサイトである。中でもBBSにはサポーター達の書き込みが掲載され、意見交換や情報提供がなされている。ファンクラブに加入している方々がこの掲示板を多く活用しているため、ファンクラブ事務局次長のZさんもファンクラブとしてのお知らせを掲示板に載せている。また、携帯電話からのアクセスも可能で、試合当日にはサポーターが試合の状況や得点シーン、選手交代などの情報を簡単に随時書き込んでいて、試合に行けなかった人がその書き込まれる速報を携帯電話でチェックするということもあるようだ。まさにアローズサポーターにとって必要不可欠な存在になっている。
しかし、アローズサポーターだけが使っているわけではなく、一般の方のアローズに関する意見や疑問も書き込まれることがあり、それに対してZさんや他のサポーターからの返答がある。