第1章 問題関心

 

今日のサッカーは、例年にない盛り上がりを見せている。1993年にJリーグが開幕して以降、サッカーの中継の数は増え、日本代表の試合はもちろん、海外のリーグ戦まで放映されている。また2002年に行われた日韓共催のワールドカップも、サッカー人気に拍車をかけたことは間違いないだろう。

そしてサッカーは今まで野球観戦者には見られなかったスタイルである、サポーターという全く新しい応援団を出現させた。サッカー人気を支える要因の1つに、このサポーターの存在は欠かせないだろう。試合毎にスタジアムまで足を運び、大きな集団となってスタジアムの一部を陣取り、自分が支持するチームを応援する。そしてチームのユニフォームに身を包むか、もしくはチームカラーの物を見に付け、応援しながら試合に熱狂する。『サッカーの社会学』において高橋義雄(高橋 1994)は、彼らが身に付ける物を非日常的「遊び」の世界へ入るための道具、彼らの熱狂する様を「祝祭空間」と表現した。サッカーの試合は非日常的要素を含むお祭りのようなものなのである。

 ここ富山の地にも、Jリーグ(J1、J2)の下に位置し、JFL(日本フットボールリーグ)と呼ばれる全国リーグで活躍するチームが2つある。その中で私の一番身近に存在しているのは、富山市を本拠地とし、北陸電力を母体とするアローズ北陸である。Jリーグのチームのように大々的にニュースに出ることもなく地味だが、アローズ北陸にも小規模ながらサポーター集団が存在している。大きな盛り上がりがさほどない中で、そのアローズサポーターたちはどのようなきっかけで応援するに至ったか、またどのような人々が応援しているのだろうか。高橋義雄が述べた、Jリーグの大きいサポーター集団からなる「祝祭空間」とは違ったサポーターの雰囲気というのは存在するのだろうか。存在するとしたらどのような雰囲気なのだろうか。これらのことを調査していき、結果としてアローズを応援する魅力を述べることが本稿のねらいである。

第2章ではまずアローズ北陸とそのファンクラブについて紹介する。そして第3章では実際に私がアローズの試合を観たときの様子をフィールドノーツから日記風に示す。第4章第2節では今回インタビューに協力してくださった13人のサポーターの発言内容をまとめ、第3節でその発言内容と実際に試合会場で目にする光景を照らし合わせながら分析していく。第5章では、その分析の結果得られたデータを基に考察する。