第4章
番組の分析
本章では、富山シティエフエムで放送されている「ひるどきパンプキン」という番組について取り上げる。番組の概要は第3章で述べたが、この番組の特徴として、多くのゲストが出演するということが挙げられると思う。それで、ゲストがたくさん登場するということはどのような意味を持つのか本章で分析する。
第1節 「ひるどきパンプキン」について
まずは「ひるどきパンプキン」の内容をさらに詳しく説明する。この番組では表1にあるように、時間によってコーナーが設けられている。
表1 「ひるどきパンプキン」番組構成
12:40 【月】みんなの学び舎U 【火】ひるパンシネマライン 【木】ごっつおクラブ通信 12:55 リフレッシュ体操 13:10 ひるどきステキLife [月/旅行・火/ヘアメイク・水/グルメ・木/ファッション] 13:50 ひるパントピックス 14:10 ひるどきちゅーしたい! 14:30 フロム02 |
パーソナリティは2人おり、月曜から水曜までが黒瀬典子さん、木曜が垣田文子さんが担当している。この2人は契約パーソナリティである。12時台前半はリスナーから寄せられたメッセージを読んだり、リクエスト曲をかけている。水曜日以外は12時40分くらいからそれぞれのコーナーがあり、「みんなの学び舎U」は第3章で説明したとおり、「ひるパンシネマライン」はファボーレ東宝の方と電話をつなぎ最新の映画情報を伝える。また「ごっつおクラブ通信」では、
13時10分からの「ひるどきステキLife」では曜日ごとにテーマを決めて、それぞれゲストが登場する。この時間帯のゲストはいつも違う人ではなく、隔週ごとなどに出演しているレギュラーのゲストである。また、13時30分くらいからはレギュラーではない、様々な人がゲストに登場する。この点については後で詳しく分析する。
14時10分からは「ひるどきちゅーしたい!」というコーナーで、シティエフエムのスタッフが毎日様々なところに中継に行って、そこの様子を紹介するというものである。
基本的にはこのように番組が進んでいくが、ゲストが多い日などは12時台や2時台にもゲストが登場したりするときもある。
第2節 ゲストの身近さ
(1)ゲストの多様性から
第1節の番組の詳細を見ても、毎日様々な人がゲストとして出演していることが分かるが、どのような人がゲストとして出演しているかということを調べるために8日間のゲストを一覧表にまとめてみた。それが表2である。
表2 「ひるどきパンプキン」ゲスト一覧表
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ひるどきステキLife |
中継 |
その他ゲスト |
その他レギュラー (12:40〜電話にて) |
10/21(木)
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田中さん (富山西武) |
神通川サケ・マス養殖場 |
・富山県立近代美術館 学芸員 片岸さん |
町野さん (呉羽の鮮魚店) |
24(月) |
ショウ・エンレンさん(中国人) |
富山駅前 |
・日本銀行富山事務所 所長 野村さん 副主務 中田さん |
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25(火)
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SAYURIさん (メイクアップアーティスト) |
黒部 欅平駅 |
・富山商工会議所青年部 山崎さん |
村瀬さん (ファボーレ東宝) |
26(水) |
黒田さん (沖縄料理ちゃんぷる) |
八ヶ山園芸生産出荷組合 [ |
・富山県太鼓協会副会長 高橋太鼓店店主 高橋さん ・ 2年生 3人 |
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27(木) |
滝田さん (資生堂販売富山支社 ビューティアドバイザー) |
パンダBaby (パンダ焼の店) [ |
・富山県農林水産部食料政策課食品産業係主任 大森さん |
中谷さん (下吉川の鮮魚店) |
31(月) |
リ・セイさん (大連出身) |
デザインサロン 富山 [ |
・キリンビール株式会社北陸統括社富山支社長 関さん |
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11/1(火) |
SAYURIさん |
アトリエ ヒロ (犬の美容院) [ |
・砺波チューリップ四季彩館 早苗さん(電話) ・アローズ北陸監督 草木さん |
志村さん (ファボーレ東宝) |
2(水) |
富川さん (コーヒー専門店 セントベリー) |
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・自衛隊富山地方連絡部募集課広報班長 根塚さん 本田さん |
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表を見ても分かるように毎日2,3組のゲストが登場する。「ひるどきステキLife」というコーナーには定期的に出演しているゲストだが、他は1回きりの人が多い。銀行の所長さんからサッカーチームの監督、商工会議所の方や中学生までと本当に幅広い人がゲストとして出演している。様々な人をゲストに呼んでいることについて部長の宮林さんはこのようなことを述べている。
「一つはやっぱりどうしても富山に密着した番組をやっていくのにたかだか8人で友達っていないじゃないですか。さっき言ったようにゲスト得るために一所懸命ですからね、なんでもしますからね。新聞見たり雑誌見たり、もうそれと同じで1人(ボランティア)いたら、じゃあゲスト呼んできてとかですね、そういうのでボランティアという言い方はいいのか分かりませんけど、人とのつながりは大事にしてますね。(中略)やっぱり僕ら社会人どれだけ情報、どれだけ人間関係が広い社会人と言えども、なかなかたかが知れてるので。社会人の人だと学生に弱いとか。僕らやっぱり急に女子高生呼んできてくれとかですね、男子中学生連れてきてくれとかいっても、どこ電話したらいいか分からないですけど。(中略)やっぱりいろんなところにネットワーク作っとくのはいいなと。」
ボランティアの必要性について聞いたときの話だったが、地域に密着した番組作りのためには地域の人に出演してもらうということは不可欠であるように感じた。でもやはりたくさんの人に出てほしいと思っても、様々なところにつながりがなければ出演する人にも限界があるので、ボランティアの人を通して誰か他の人を紹介してもらったり、一度来てくれたゲストとのつながりを大切にすることでどんどんネットワークを広げたいという意図もあるようだ。それにより多様なゲストが出演できるようになっているのではないかと思う。
また、富山県で行なわれている中学生の職業体験である「14歳の挑戦」でシティFMに来る中学生に関してもこのようなことを述べている。
「子ども1人出ればですね、親二人はいるし、おじいちゃんおばあちゃんもいるし、学校の先生もいるし、聞いてくれるのではないかと。で、やっぱり聞くんですよね。子どもが出たりしたら。すごいときなんかは、うちの子が出るからって言って写真撮りに来たことありますよ。やっぱり反応がいいので、それがそれこそラジオって反応が分からない媒体なんで、反応がわかるやつは積極的に受け入れるんですよ。それが、ボランティアとは話それましたけど、何でもチャンスがあればぜひ来てくださいっていうのは大事かなと思いますね。(中略)14歳の挑戦とか、商船高専の子なんか来ると、そう今まで番組とか聞いたことないような人が来るじゃないですかね、そんなのがいいなーと思って。KNB(2)やFMとやま(3)には来ないような人を出させてあげられたらなと。」
ゲストに出る人は、主に何かのイベントや店のPRのために出演する人が多いが、その他にも、ゲストという目的ではなく、インターンシップや14歳の挑戦の中学生を受け入れている。ここでも述べられているが、様々な人がゲストに出ることで、その人の周りの、今までシティFMを聞いたことがなかった人が聞いてみるきっかけになるようだ。実際私が調査に行ったときに出会った中学生も、今までラジオをあまり聞いたことがなく、シティFMの存在も知らなかったと言っていた。これをきっかけに家族や先生などもシティFMを聞くきっかけになるかもしれないし、より多くの人にシティFMを知ってもらうためにも、様々な形でゲストに出演してもらったりすることは必要なことなのではないかと思った。「ひるどきステキLife」に出演しているセントベリーの富川さんも、「シティFMほど色んな業種の人が出入りしている場所はない」と述べていた。このようにゲストの多様性には様々な理由があるといえよう。
ここまでで様々な人がラジオにゲストとして出演しているということが言えたが、それが本当に地域に密着していると言えるのだろうか。もう一度ゲストの一覧表を見てみると出演している人は
(2)中継から
「ひるどきちゅーしたい!」のコーナーでは毎日様々なところから中継をしているが、毎週月曜日は富山駅前から駅前のようすを中継するということが多い。そのときに毎回季節に関係したようなテーマで通りすがりの人にインタビューしたりしている。駅などを歩いている人に話を聞くということも、聞いている人に身近な印象をあたえているのではないかと思った。それで中継でのやり取りの会話を分析してみたいと思う。以下の部分が中継のやりとりの様子である。パーソナリティが黒瀬さんで、中継に出ているのがシティエフエムの社員である小原さんである。
黒瀬:小原さん。
小原:はい、ひるどきちゅーしたい小原です。聞こえますか?
黒瀬:聞こえまーす。
小原:私今JR
黒瀬:やっぱりちょうどここちの良い温度ですね。
小原:そうですね。まぁいつもの話であそこについてる温度計若干温度が低いんじゃないかと思ってることが多いので、体感的にはもうちょっと上かなっていう。
黒瀬:うん、22℃くらいあるかもね。
小原:そうですね。ただまぁ過ごしやすい一日となってますね。さて、今日24日は二十四節気のひとつの霜降というんですね。霜が降りると書いて「霜降」なんですけども、一般的に霜が降り始める頃とされてるわけで、昨日は北日本新聞にも載ってましたけど、昨日は立山のほうで初冠雪があったということですね。
黒瀬:うん、冬。
小原:そうですね。もう一歩冬の足音が聞こえてきたような、そんな今日このごろですけど、今日はまぁ街のみなさんに冬支度はもうしましたかということでお話聞いていきたいと思います。こんにちは〜。
A:こんにちは。
小原:お名前教えていただいてもよろしいですか。
A:Aです。
小原:Aさんはどちらにお住まいですか?
A:
小原:あー、温泉のあるいいとこですね。
A:そうです。
小原:
A:ちょっとまだ早いみたいですね。
小原:これからやっぱり色づき始めてくるという
A:11月…11月に入ると紅葉し始めますね。
小原:ちなみに今日はどちらかにおでかけなんですか?
A:はい。ちょっと駅ビルに買い物に来ました。
小原:そうですか。最近ちょっと寒くなる日が多くなってきましたけど、ご自宅で何かコタツを出したとか暖房器具を出したとかありますか?
A:えーっと、コタツを、掘りごたつに布団をかけました。
小原:掘りごたつに布団をかける。
A:夏は掘りごたつにそのまま足をつっこんで、そのままテーブルに使ってるんですけど、今度いよいよお布団をかけて、電気を入れました。
小原:じゃあいよいよ掘りごたつも掘りごたつとして=
A:はいそうです。
小原:そうですかー。今日は富山駅へお買い物ということだったんですけど何か買われたんですか?
A:ええちょっと、明日から孫のところに3軒ほどまわるので、富山のお土産を買いに来ました。
小原:お孫さんはどちらにいらっしゃるんですか?
A:横浜、茨城、千葉にいます。
小原:関東ですね、みんな。
A:みんな関東です。
小原:やっぱり遠いですね。ご主人と行かれるんですか?
A:はいそうです。ドライブしながら行きます。
小原:じゃあ自動車で運転しながら。
A:はいそうです。いつも自動車で、だいたい6時間です。
小原:この季節だと関東のほうはあれですけども、こちらのほうを走らせる分には、なんかねー、山の風景とかも気持ちいいし。
A:はい、気持ちいいですね。
小原:ちなみにお土産は何を買われたんですか?
A:やっぱり、お婿さんにイカ、エビの塩辛とか、子どもにはやっぱりちょっと雷鳥の里とか好きなので買わされます。
小原:お子さんはもう大きいんですか?
A:ええ。大学生から幼稚園まで。
小原:幅広いですねー。じゃあ明日からお気をつけて。お孫さんにもぜひ…
A:はい、ありがとうございます。
小原:ありがとうございます。これ、うちのタイムテーブルとですね、クリアファイルになってるんですけども、ぜひお持ちください。
A:ありがとうございます。
黒瀬:ありがとうございました。
小原:お忙しいところすみません。ありがとうございました。
富山駅に買い物に来た年配の方にインタビューした放送である。この後にもう少しパーソナリティとの会話があり、中継が終わるというパターンである。自分の家の冬支度の様子などを話してもらっているが、実際にそれぞれの家で行なわれているような、聞いている人にも共感できるような印象を受けた。ラジオのパーソナリティの人が自分の様子を話しているよりも、普通の人にインタビューすることで近所の人が自分の家の様子を話しているような身近な印象を受けるのではないかと思う。素人であるがゆえの、作られたものではない本物っぽさというのが、信頼できるように感じる場合があるのではないか。また中継の最初のほうでは、現在の富山駅の様子を実況しているが、ニュースの天気予報を伝えるのではなく、そこから見える温度計の表示から自分の感じたままに伝えているところも、さらにリスナーにリアルさを感じさせることができるのではないか。
第3節 ゲスト出演の気軽さ
ゲスト出演に関しては、相手のほうからラジオに出たいと言ってくる場合もあるが、シティエフエム側から出てくれないかと聞いてみる場合も多いようだ。新聞や情報誌などで興味のある人を見つけたら直接電話してみるとおっしゃっていた。自分から出たいという人はあまり気にならないかもしれないが、普段あまりラジオなどに出ない人が、実際ゲストとして出演するということはかなり大事のように感じる場合もあるのではないかと思う。しかし第1節でも述べたように、様々なジャンルの人がゲストとして出演できているのは、ゲストに出るというハードルの低さがあるのではないかと感じた。それで本節ではゲスト出演の際の実際のパーソナリティとのやり取りから、ゲスト出演の気軽さという点に注目して分析しようと思う。
まずはゲストが出演しているときはどのように進行されているのかということを見るために、富山商工会議所の山崎さんが富山の昆布〆研究会というものを紹介していたときの様子が以下に示す。
黒瀬:(自己紹介後)よろしくお願いします。今度商工会議所青年部のほうでは富山っていうのは昆布〆が結構有名というか、食べ方を知らないという方が結構いらっしゃってるそうなんですけども、富山の昆布〆研究会というのをお作りになったというそうなんですが、どういう研究会なんですか?
山崎:はい、富山昆布〆研究会というのは、富山商工会議所で地域のブランドを確立していこうということを一番の目的に発足した会というわけなんです。
黒瀬:それで、その昆布〆に目をつけられたということなんですが、やはりこれはもう富山にいらっしゃる方、観光にこられる方に、いいものがあるよということを、教えてあげたい、いっぱい自慢はあるんだけども、氷見だと氷見のぶりかなとかそんなに知ってらっしゃる方いらっしゃらないですもんね。
山崎:そうですね、私たち考えたのは逆にですね、このブランドイメージによってですね、まず富山県が日本地図のどこにあるかを明確に指差せない方もおるという風に実際聞いておりますので、富山って何っていうことをキーワードにまずスタートしたというわけです。 (中略) 富山の魅力はたくさんあるんですけど、富山らしさっていうのを一番象徴してるのは何かということを考えたんですけど、ここにはかなりの時間がかかりました。その中で会員の1人がですね、富山らしいもの何かと言った時に「そういえば昆布〆って富山だけじゃないの」っていうたったその一言が一番最初の取っ掛かりだったと思います。みんなで確かにそうだよなって、加賀温泉一泊行くのにも発泡スチロールの容器に入れて(笑)昆布〆持ち歩く。
黒瀬:(笑)もって行きたいです。私ディズニーランド行くときも持っていきました。
山崎:そうですか。ぜひ後で話をしようと思ったんですがただいま富山昆布〆党という党員募集中でありますのでぜご入党いただきたいと。
黒瀬:自分で作っちゃうくらい好きなんです。確かに昆布〆は私たちはものすごくよく知りすぎていてスーパー行っても魚屋さん行ってもあるし、自分で作ることもあるし、当たり前になりすぎていて気がつかなかったかしら。
山崎:そうですね、やっぱり灯台元暗しで。全国的にはやっぱりないことはないわけではないんですね。 (中略) ブランドといってもですね、やっぱりとってつけたものではいけないだろうなという、まず、その地域の人が愛してるもの、本当に大切にしてるもの、このように考えたときに我々富山昆布〆研究会という名前のとおりこの昆布〆を富山ブランドとして全国に発信して富山イコール昆布〆、富山に来たら昆布〆食べないと損だよっていう、またお土産に買うなら昆布〆だと。これが地域活性化につながるという。それによって他のますずしだとかいうものも当然売れ行きは伸びていくだろうと。そういう素人なりの考えを持ってます。
黒瀬:そういえば昆布のおにぎりも富山だけなんですよね。それだけ昆布に愛着を持ってるという。日常やっぱり多く使ってるんでしょ、富山って。
山崎:そうですね。私の調査結果によりますと
黒瀬:そういえば昔昆布を焼いておやつに食べました(笑)
山崎:馴染み深いですよねー。 (中略) 私どものゴールのイメージはやはり昆布〆をこよなく愛する方々に、親戚の方が来たら必ず昆布〆を出してあげてほしいし、お土産にどうぞ持っていかれと言って持たしてあげてほしい。そんな地道なことからどんどん全国に、富山になんかうまいものがあるらしいよということからどんどん広がってってですね、ぜひ富山イコール昆布〆ということでどんどん引っ張ってっていただいてそして最終的に我々のこのモデルケースといいますかね、ちょっと参考になったのが仙台の牛タン、仙台へいくとですね、牛タンののぼりがたくさん、食べないと損だなぁ、おいしかったからお土産にという一つのヒントになる事例もありますしね。博多に行ったら明太子、名古屋に行ったら名古屋コーチンというように全国区になって、その土地に行ったら買わないと損という感じですよね。
黒瀬:そういうものになっていくということですよね。この研究会っていつ発足したんですか。
山崎:正式には8月末に発足いたしまして向こう3年ほどで何とか成果をあげて全国に昆布〆富山にありということをもっていきたいと思ってます。
黒瀬:ということはこれからの旅番組にも富山を中継する際には必ず昆布〆でますね。
山崎:もうそのように切にお願いしたいところであります。 (中略) 今週食祭とやま2005というもの
黒瀬:いろんな方がいらっしゃるので、その1人1人が発信していくことによってものすごく広がっていくということも考えられますよね。 (以下省略)
このように、主にパーソナリティが質問をして、それに答えていくという形でゲストが話していく。話す内容はゲストも用意していると思うが、ただ自分たちの活動やイベントのPRだけを紹介するのではなく、パーソナリティの方との会話という形で進んでいっているように感じたので、ゲストも普通の人に話すような感覚で話せているのではないかと思った。さらにもう一つの例も挙げる。これはキリンビール富山の関さんがゲストで登場したときのやりとりである。
黒瀬:こんにちは。よろしくお願いします。
関:よろしくお願いします。
黒瀬:お待ちしておりました。
関:そうですか。
黒瀬:関さんとお話できると聞いて心待ちにしておりました。
関:ちなみにどれくらい飲まれるんですか。
黒瀬:どれくらい飲まれるって、そんなことないです(笑)。関さん今紅葉シーズンですけどね、紅葉をバックに缶ビール飲むのもおいしいですが、素敵なところ行ってこられたんですってね。
関:よろしいんですか、お話して。実は先週の土曜日に立山黒部アルペンルートに行ってまいりました。あいにくですね、お天気は雨でしたけど、黒部湖まで行ってきましたよ。
黒瀬:どうでしたか?
関:韓国の旅行の方がいっぱいおられましたね。あのー、日本人が2割くらいで、外国のツアー、特に韓国の方が8割方。そして私どもは11工場あるんですね。全国に。もちろん北陸ですと白山市にございますが、たまたま長野県側でしたから、滋賀工場ってあるんですよ、滋賀県に。製造の。一番絞りを軽く2本飲んできました。おいしかったですねー。
黒瀬:おいしいですよねー。景色をおつまみにビールを飲むという。最高ですね。
関:最高です。黒部湖を見ながら、良かったですよ。
黒瀬:そういったように、次もどこか行こうとかいう予定はあるんですか。
関:今週は3日文化の日ですよね。そしてまた土日ありますから、4日お休み取りますと4連休じゃないですか。
黒瀬:あ、ほんとだ。
関:世間では。もしできたらお天気もありますけど、佐渡に行きたいと思ってるんですよねー。
黒瀬:11月あたりだと結構晴れる日が多いんですけどねー。通常ね。
関:ええ。今週の週間予報ですが、3日まではなんとか。
黒瀬:あー、土日雨でした。
関:雨みたいなんですね。ですから3日4日あたり行くといいんでしょうかねー。
黒瀬:ねらい目ですね。
関:えー、直江津経由で。どうでしょう。
黒瀬:いいですね。飲み物を。
関:ええ(笑)しっかり飲んできたいと思いますね。
黒瀬:持って行くもののお話ししましょう。テレビでもう、すっかりおなじみになってます、ぐっさんのあの人がもうぴったりですね。
関:あの、第3の営業マンですね。
黒瀬:すぐにぐっさん、のどごし。みたいな。それくらいコマーシャルでは話題になってるんですが、このキリンののどごし生、かなり絶好調みたいですねー。
関:おかげさまでですね、今年の4月6日に発売いたしまして、キリンのどごし生のですね、2千万ケースを突破いたしました。 (以下省略)
この例を見ると良く分かるが、このやり取りはゲストを紹介して本題に入る前のパーソナリティとのやり取りである。全くビールに関係してない話題ではないが、世間話のような感じで最近あったことについて話をしている。これはゲストが登場するコーナーに関して共通に言えることだが、ゲストがPRしたいことだけではなく、それに関連したような個人的な話など様々な会話がなされている。他の局に出演する際はどうかわからないが、ラジオに出る最低限の必要性というのは自分の伝えたいことを簡潔にPRするだけでもよいのかもしれない。ゲストとのやり取りに関して、この番組のパーソナリティを務める黒瀬さんはこのように述べている。
「ゲストが入ったときは、例えばこれを紹介したいから来られたってときもありますよね。PRをしに。だけどPRをするんだったら書いた書面を私が読んだほうがうまくというか、きっちり説明できるけれども、この人がせっかくここに来たんだから、聞いてる人にこの人の印象も残るような、この人を引き出せるようなそういうことは心がけてますけどね。聞いてる人がその人のこととイベントのことがつながって残るような。」
内容を伝えるだけなら、パーソナリティが原稿を読めばよいかもしれないが、それだけではなくゲストをスタジオに呼んで話してもらうということには、その人の人間性やその人の印象も伝えることができるのではないか。それがゲストを呼んで話を聞くということの目的なのだと思う。その点に関して重要なのは、ゲストが登場するコーナーの時間がポイントになっているのではないか。宣伝内容を伝えるだけならば数分もあれば十分であるが、この番組においては、約10〜15分ほどゲストが登場している。15分もあれば必然的に宣伝内容だけでなく、世間話のような会話も生まれてくるのだと思う。そのような会話は第2節でも述べた身近さにもつながるかもしれない。また、世間話のような気軽な会話で番組が進むということで一度ゲストに出た人も今度何かPRしたいときに、また気軽にラジオに出てPRしようと思うのではないかと思うので、ゲスト出演というハードルを低く感じさせる要素になっているのではないか。さらにまだラジオに出たことがない人も、ラジオでのそのようなやり取りを聞いて、自分もラジオを利用するきっかけになるかもしれない。
また、ゲスト出演に関しては番組内のやり取りだけではなく、シティエフエムが気軽に来ることができる場所なのではないかと思う。私が今回調査に行ったときにも、ちょうど番組中にゲストが何組か出演したのだが、ゲストに出るということは、番組に出る前に綿密な打ち合わせをして番組に望んでいるのではないかと思っていたが、ゲストに出る方も、自分が出演する時間の2,30分間前にシティエフエムに入り、自分で話すことの準備をしたりして、出番までそのまま待っていた。パーソナリティの方もゲストの出演するコーナーの直前にスタジオから出てきて挨拶をし、そのままスタジオに一緒に入ってすぐに番組が始まった。ゲストの方もコーナーが終わればそのまま帰っていくといった感じだった。パーソナリティも事前にゲストについての情報は得ていると思うが、そのように気軽に宣伝していくことのできる場所になっているという印象を受けた。また、ゲストというのはスタジオに来ないと出演できないというわけでもなく、店をやっていて出かけられないという人などは、電話で同じようにお知らせをしたり、またシティエフエム側から中継に行ってお話を聞くというスタイルもとることができるので、それぞれにあった仕方で番組に参加できるということも気軽に出演してみようと思える要素ではないかと思う。
第4節 市民の参加
第3章でも述べたが、富山シティエフエムでは社員8人と、契約パーソナリティ4人が主に番組を担当しているが、その他にも市民が参加している番組もある。サラリーマンや、地元でミュージシャンとして活動している人などがボランティアで番組を担当したり、レギュラーで定期的に番組にゲスト出演している番組がある。契約パーソナリティは番組ごとに決まった額の給料をもらっているが、その他の人は一月に交通費程度の謝礼のみである。それらの人を第2章の先行研究でも述べたように、放送ボランティアと呼ぶのだと思うが、先行研究で述べられていたようなボランティアの組織などはなく、あくまでも番組のパーソナリティを担当していたり、ゲストという形で出演し、番組の裏側の技術的な仕事をやっている人はいない。それで本論文ではボランティアという言葉は使わないでおこうと思う。そのような市民の方に番組に出演してもらうことには何か意味があるのだろうか。また実際にパーソナリティやゲストとして定期的にラジオに出演している人にとって、シティエフエムとはどのような存在なのだろうかということを本節で述べようと思う。
様々な時間帯に市民パーソナリティが出演している番組があるが、今取り上げている「ひるどきパンプキン」の「ひるどきステキLife」というコーナーは、月に1,2回レギュラーで出演しているゲストがいる。このコーナーはレギュラーといっても、形式的には普通のゲストと同じようにパーソナリティの人との会話で進んでいく。第2節のゲストの一覧表にもあるが、そのほかにも以下の人がこのコーナーにレギュラー出演している。表3を見てほしい。
表3 「ひるどきステキLife」のレギュラーゲスト一覧表
月/旅行 |
・ ショウ・エンレンさん ・ リ・セイさん ・ JTBの方 |
火/ヘアメイク |
・ メイクアップアーティスト SAYURIさん ・ エステティシャン和楽の方 |
水/グルメ |
・ コーヒー専門店セントベリー 富川さん ・ 沖縄料理チャンプル 黒田さん ・ フランス料理ル・ポワソニエ 竹田さん |
木/ファッション |
・ 資生堂ビューティーアドバイザー 滝田さん ・ 富山西武の方 |
この中で第1、3水曜日に出演している
富川さんは2年半前くらいからシティエフエムに出演するようになった。最初は
また宣伝効果としては、ラジオを聞いたことがきっかけで何度も買いに来てくれる人がいるようなので、その点でも効果はあるといえよう。しかしラジオに出演するということに関しては、宣伝のためだけではなく、ラジオを通して様々な文化を広めることができるのではないかと言っていた。コミュニティFMの存在に関しては、ラジオは一番身近なカルチャーだと思うと言っていた。確かにラジオを聞いていると毎日様々な情報が流れてくる。「ひるどきパンプキン」の番組だけでも様々なジャンルの人が登場し、多くの情報をあたえてくれる。家にいながらにして、コーヒーの知識や、ヘアメイクやファッションなど様々な情報を得ることができる。同じことは新聞や雑誌などにも載せられているかもしれないが、文字で書いてあると自分の興味のない情報はあまり読まないかもしれない。ラジオというメディアはすべての情報が耳から入ってくるので、関心がなかったことでも話を聞いているうちに興味を持つことができるかもしれないので、文字のメディアにはない特性ではないかと思った。そこがラジオというメディアの特徴なのかもしれない。
そのような様々な情報を流すためには、シティエフエムの社員だけでは情報にも限界があるので、多種多様な分野の市民の参加という存在は重要な存在であるといえよう。これらの市民の参加というのはシティエフエムの中ではどのような位置づけにあるのだろうか。本節の最初にも述べたが、シティエフエムにおいてのボランティアでの市民の参加というのは、番組を担当するパーソナリティとしてや、ゲストとして出演するという参加がある。またそれに加え、インタビューにも応じてくださった「ひるどきステキLife」に出演している富川さんのような、定期的なレギュラーでゲストとして出演している人もいる。このように考えると様々な市民の参加の仕方があることがわかるが、そのようなボランティアで参加している人たちの位置づけについて部長の宮林さんは「シティエフエムのサポーターのような役割ではないか」と述べていた。市民のパーソナリティとして番組を担当している人についての話を伺ったときの言葉だったが、これはゲストとして出演することも含め、市民の参加すべてに当てはまる言葉なのではないかと思った。確かにラジオは情報を提供するメディアである。ニュースなどの情報提供はもちろんだが、地域の情報を提供するというのがコミュニティFMの役割である。その地域の情報というのはシティエフエムの社員だけでは多くの情報を伝えることは難しいだろう。情報を探すだけならある程度の情報は提供できるかもしれないが、実際にその情報に関わっている人にしか伝えられない細かい情報も多い。そのように実際に市民にしか伝えられない情報を伝えるためには、市民の参加が必要であり、それがシティエフエムの情報源となっているといえるので、市民参加の役割はシティエフエムのサポーターであると言ってよいのではないだろうか。また、様々な参加方法があるので、ラジオに出るということのハードルが低くなり、さらに多くの市民が参加できるということはサポーターの強化ということにつながるだろう。