第3章      富山シティエフエムの概要

 

本章では、調査対象とする富山シティエフエムの概要について報告する。第1節では富山シティエフエムの組織体系など基本的な情報について、第2節では放送されている番組についての説明をする。

 

 

第1節       富山シティエフエムの概要

 

第1項 開局の経緯

 富山シティエフエムは平成9326日に設立、平成9年7月7日に開局した。富山県では、シティエフエムが開局する前、平成8年12月1日に高岡市に「ラジオたかおか」が最初にコミュニティFMとして開局し、以後シティエフエムを含め、新川コミュニティ放送、エフエムとなみの4局が存在している。放送エリアは主に富山市だが、平成17年に富山市が合併により広くなったため、旧富山市以外は全地域カバーされていないが、富山市以外でも周辺の地域は聞くことができる。約50万人をカバーしている。

 開局の経緯について富山シティエフエムの放送部長兼営業部長兼総務部長の宮林さんにお話を伺った。まず阪神大震災後、石川県でたくさんコミュニティFMが開局し、富山県では最初に高岡市でラジオたかおかが開局したので、県庁所在地である富山市にもぜひコミュニティFM局をつくろうということがきっかけになったようだ。それなら地元の新聞社が力を入れようというのが背景にあり、新聞社はニュースや情報をたくさん持っているので、新聞だけではなく、ラジオやケーブルテレビを通してさらに細かい情報を提供できるようにするために北日本新聞社が主に力を入れて開局することになった。富山市という行政側よりも新聞社のほうが力を入れていたようだ。スタジオも北日本新聞社のビルの8階にあり、そこから放送している。

 

 

第2項 財政基盤、組織について

 事業形態は第3セクターということになっているが、実際はあまり第3セクターとは言っておらず、株式会社として運営しているようだ。行政に関しては資本金の10%は富山市が出資している。収入に関してはほとんどが広告収入で、富山市の広報や提供という形で年間何百万かもらっている。富山市とのかかわりとしては、富山市内で行なわれる様々なイベントの告知や、行政情報など情報の提供が多い。そのようなイベントなどを取り上げて放送したりすることで、お金でない番組作りにも参加してもらったりと、お互い協力しあっている関係もある。その他の財政基盤はCM広告収入でまかなわれている。

 社員は現在8名で、そのうち2名が主に営業をやり、その他は放送業務を行なっている。社長、常務、取締役など役員は、北日本新聞の社長、取締役、北陸電力の支店長などが兼任しており、現場で働いている人が8名である。また、契約パーソナリティが4人おり、番組のパーソナリティとして働いている。

 

 

第3項 開局の目的

 まずはやはり防災という目的がある。第1項でも述べたように、コミュニティFM局は阪神大震災後に特に全国的に広まった。災害時にはラジオというメディアが情報源となることが多く、全国的な情報や県域レベルでの情報も必要かもしれないが、実際に必要とする情報は自分の住んでいる地域の情報についてである。富山市では、富山市消防本部に緊急放送割り込み装置というものがあり、その装置のボタンを押して話すとそのままラジオに割り込んで放送されるというシステムがある。それにより、緊急時に避難勧告などを放送する役割を富山市から要請されている。

 また、もう一つの目的は様々な人をラジオに出演させるということである。他の民放局は商業ベースに放送が行なわれているので、ラジオに出るためにはお金がかかる。そうなると、地元のお祭りなどのイベントや、小学生のサッカーチームの試合などはラジオではあまり告知されるというようなことはほとんどない。そのような新聞などでしか取り上げられないような人たちもラジオというメディアに出てほしい、そしてラジオに出ることによって、地域のイベントなどの活性化にもつなげたいという目的があるようだ。第2章でも述べたように、コミュニティFMは地域に密着したラジオなので、このような地域密着という目的がある。この点について以後の章で詳しく分析する。

 

 

第2節 番組について

 

 富山シティエフエムでは自主制作の番組がたくさん放送されている。24時間のうち約4割ほどが自主制作番組である。他の時間は東京のラジオ局であるJ−WAVEの放送を流している。

図2のタイムテーブルを見ると分かるが、生放送の番組も多く放送されている。朝、夕方の帯の番組は主にニュースなど最新の情報を主に扱った番組である。また、昼の生放送や、リクエスト番組ではリスナーからのメッセージやリクエストを受け付けている番組もある。その中でも特徴的な番組を取り上げる。宮林さんに人気番組、また力を入れている番組について伺ったので、いくつかの番組内容について説明していく。

 

 朝と夕方の帯番組は主にニュースや天気予報、交通情報など最新の情報を主に扱った番組である。やはり最新のニュースを伝えることはラジオの主な役割でもあり必要不可欠な部分である。この時間は通勤の時間とも重なり、出勤あるいは帰宅するときに車内で聞いている人が多いのではないかと思う。

 月曜から木曜の午後0時から3時まで生放送されている「ひるどきパンプキン」は、人気番組の一つである。この番組はリスナーからメッセージやリクエストを受け付けていて、番組内でメッセージを紹介する。毎日5〜10通のメッセージがよせられるそうだ。毎日様々なゲストが登場し、イベントのPRやお店の紹介など身近な情報を得ることができるという特徴がある。また、毎日様々な場所から中継がつながり、外の様子などを紹介するコーナーもある。この番組については第4章で詳しく考察する。

 シティエフエムで目玉番組とされているのが、土曜日の午後0時から3時まで生放送されている「BON BON CAFÉ in マリエとやま」である。この番組はマリエ富山6階のサテライトスタジオから公開生放送されている、唯一スタジオ以外から放送されている番組である。この番組もゲストが登場したり、マリエ富山の店の紹介、また北陸で活動しているアーティストのライブの生放送が行なわれる。リクエストも受け付けており、マリエ富山にもこの番組のためのリクエストボックスが設置されている。他の番組ではどのようにラジオ番組が放送されているかは実際に見ることはできないが、多くの人が集まる場所で公開生放送をすることにより、シティエフエムの存在をアピールするという役割も果たしている。

 また再放送も含め、月曜の1240〜、火曜の1830〜、土曜の1345〜の週3回放送されている「みんなの学び舎U」という番組がある。10分ほどの番組だが、この番組は富山市内の小学校の校歌を、実際にその学校の子どもたちに歌ってもらったものや、子どもたちが学校の自慢などを話している様子を収録したものが流れる番組である。校歌という昔からある財産を紹介していくことも大事ではないかということでこの番組を始めたようだが、シティエフエムの中でも地域に密着することを意識した番組であり、学校側や親などにも評判がいいようだ。

 その他にも生放送のリクエスト番組や、最新ヒットチャートを紹介する番組、映画音楽を中心に紹介する番組など音楽を中心とした番組も多い。またベテランのアナウンサーをやっておられた方が最近の出来事などについて話をするという中高年の方に人気の番組もあるので、様々な年齢の人が楽しめる番組を制作しているといえよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

図2 富山シティエフエム タイムテーブル


 

5:00

 

 

 

6:00

 

 

7:00

(1)生放送番組

 

8:00

9:00

 

 

 

 

1000

 

 

1100

 

 

 

(2)自主制作番組

1200

ひるどきパンプキン

 

BONBON CAFÉ in

マリエ

とやま

 

1300

 

 

1400

1500

 

 

 

1600

 

 

 

 

 

1700

 

 

 

 

1800

 

 

1900

 

 

 

 

 

 

2000

 

 

 

 

2100

 

 

 

2200

(3)J−WAVEなどの放送

 

 

2300

 

 

0:00

 

 

 

 

 

1:00

 

 

2:00

 

 

3:00

 

 

 

 

 

 

4:00

 

 

 

(富山シティエフエム タイムテーブル(200512月)より作成)

(1)は自主制作の生放送番組、(2)は生放送ではない自主制作番組、(3)はJ−WAVEなどの他局からの放送を流している時間帯である。