2章 コミュニティFMについて

 

1節 コミュニティFM放送とは

 

コミュニティFM放送とは平成4年1月に郵政省により制度化された、市町村に開設するFMラジオ局である。「コミュニティFM最新開局情報HP」によると、現存の放送局のように特定の人たちが作った番組ではなく地域の特色を生かした番組や、地域住民が参加したり番組制作に参加する2WAYの番組、急を要する番組を提供することや地域に密着した番組を提供する、地域情報の発信拠点として、また地域の振興、その他公共の福祉の増進に寄与する豊かで安全な街づくりに貢献できる「地域のみなさんに育ててもらう」放送局となっている。開局にあたっては、民間および自治体出資の第3セクターが開局にあたって放送事業者となり、総務大臣の免許を受けて開局、運営をする放送局となっている。

放送エリアは市町村の一部、またはその近隣を含む区域のエリアであり、県内一帯や、全国放送とは異なり、それぞれの地域の情報を発信しているので「地域密着型のラジオ」と呼ばれている。また災害時や緊急時には、リアルタイムで停電、断水の状況や救援活動などの情報をきめ細かく提供できるという特色がある。

 平成4年12月に北海道函館市の「FMいるか」が開局し、その後急速に全国に広まった。200512月現在では全国に167のコミュニティFMが存在している。その開局状況が図1に示されている。

 

図1 全国コミュニティFM開局の推移

(電波利用HPより作成 200512月現在)

 

 平成7年に阪神大震災が起こったが、その翌年の平成8年から急激に開局数が増えている。やはり災害時におけるラジオの役割というものは必要であり、コミュニティFMという身近な情報を得られるメディアというものが必要とされるようになったのではないか。

 

 

第2節           先行研究

 

 本論文を書くにあたり、これまでのコミュニティFM放送についての先行研究からコミュニティFMの特徴や問題点などを大まかに調べ、それをもとにさらに問題関心を深めていこうと思う。本節では2つの先行研究についてまとめる。

 

(1)山田晴通,2002,「FM西東京にみるコミュニティFMの存立基盤」より

 

<コミュニティ放送の制度化について>

 コミュニティ放送の制度化は19917月に郵政省が構想を発表し、同年のうちに電波監理審議会への諮問・答申を終え、翌1992年には制度化が整い、4月には関係省令等が公布施行されるという手早さで進められた。このように制度化が迅速に進んだ理由には、立ち上げにかかる初期投資の額がケーブルテレビよりかなり小さいことや、技術の点では、既存のFM放送を踏まえたものであって、新たな技術体系を前提とするものではなかったこと、また、1980年代にいわゆる「ミニFM(1)」の実践が広まり、小規模FM放送の制度化を求める社会的な需要が醸成されていたことも重要な背景である。

 

<コミュニティ放送の経営基盤>

 コミュニティ放送の事業者は現在のところいずれも株式会社である。郵政省は地方自治体の直営は認めないという見解を示しており、自治体は株式会社に出資する形でコミュニティ放送に関与していることが多い。また、商工会議所や大学など他の法人格を持つ組織も、自治体に準じ、事業体としての出資者として関与するようになっている。

 

<ボランティア・スタッフについて>

 他のコミュニティ放送局との対比で、FM西東京の大きな特徴となっているのは「市民スタッフ」とも称される無報酬のボランティア・スタッフである。ボランティアの番組制作への参画自体はコミュニティ放送では程度の多少はあれ多くの局で見受けられることであるが、その中でもFM西東京は、番組制作へのボランティア・スタッフの関与の程度が最も大きい部類に入る事例となっている。

 FM西東京にはフルタイムで制作に従事しているスタッフは5名程度の契約社員しかいない。これに加えて、平日昼間の生ワイド番組のパーソナリティなど、番組単位での契約スタッフが数名いるが、番組制作に関わるスタッフの多くは、ボランティア・スタッフである。ボランティア・スタッフが関与していない番組はほとんどなく、夕方以降の時間帯に多い(生放送ではない)録音番組などには、事実上のボランティア・スタッフだけで制作されている番組も少なくない。

 

 

 

(2)大沼千恵美,2002,「コミュニティFM放送と地域社会――ラジオを使ったまちづくり――」より

 

 本論文では北海道の岩見沢市の「FMはまなす」と札幌市東区の「さっぽろ村ラジオ」という2つのコミュニティFM局の事例からコミュニティFMの役割について分析している。

ここではコミュニティ放送によるまちづくりの効果を以下のように2点挙げている。

「まず1つ目は、地域メディアとして情報を流すことによるまちづくりである。商店街・イベントなどの活性化については、お店と放送をつないだ実例や、イベントに集まる人数が増えたという実例を聞くことができた。また、地域で活動している団体の活動の宣伝・発表の場としての役割は、実際に果たしている。」

2つ目は、住民をボランティアとして起用することによるまちづくりの効果である。まず、番組制作を通して地域に関心をもつようになることが挙げられる。客観的にあらためて町を見直すことができるようになる。また、ラジオの活動を楽しむことによって、住民が生き生きできる。……さらにコミュニティFMにはラジオという世代を問わない媒介を通して、ボランティアに若い世代から高齢世代まで幅広く集まってくる。コミュニティFMは、この世代間交流による若い世代の育成の場として、また生涯学習の場としての役割を担うことも可能であると思う。放送ボランティア内だけでなく、局に出入りする他の団体との連携によるまちづくりの効果もあるのではないだろうか。」

 

 

ボランティアを起用した効果だが、金銭面での事情からボランティアを多く起用するという例もあるようだが、その地域の人々が協力する場を作るということにも意味があるという効果もあることがわかった。

これらの先行研究から分かるように、コミュニティFMには、ボランティア・スタッフという、市民のスタッフが必要とされているといえよう。しかし、市民が実際に関わってラジオ放送を作っていくということが、コミュニティFMという地域に密着した放送局を作っていくために実際にどのような役割を果たしているのだろうか。私が今回実際に調査する富山シティエフエムでもこのような事例があるのか、また地域に密着した放送局にするためにどのようなことが行なわれているのだろうかという点に注目したいと思う。