注

 

 

(1) ブラジルから来日し、日本で就労、生活する人々を包含する名称は定まっておらず、一般に用いられる「日系ブラジル人」の他に、「在日ブラジル人」、「日系人」、「ブラジル出身者」などの名称が用いられることもある。池上は、「日系」という語句から連想される日本社会・日本文化との同質性や親和性よりも、ブラジルの文化的背景を有することに起因する異質性に着目し、世代や日系・非日系を問わずブラジルの文化的背景をもつ人々を指す言葉として「ブラジル人」という名称を用いている[池上 2000  p.3]。本論文においても、このような意味合いでブラジル人という言葉を用いることとする。

 

 

(2) 喜多川は、 1990年と1994年に群馬県大泉町でブラジル人の生活構造と意識を明らかにすべく、ブラジル人対象のアンケート調査を行っている。その中の日本語能力という項目では次のようなデータが得られた。

 1990年調査     N=不明

1,読み書きともに自由 17,3% 2,会話なら自由 26,3% 3,どうにか 35,2%     

4,聞くだけなら少し 11,7% 5,できない 9,5%

 

    1994年調査         N=158

1,読み書きともにできる 10,1% 2,会話ならできる 11,4% 

3,何とか意志疎通 48,7% 4,聞くだけなら少し 16,5% 5,ほとんどできない 13,3%

 

 日本語の能力は4年間で低下しており、2001年現在ではさらに低下していることが予想される。喜多川は、「何とか意志疎通できる」や「聞くだけなら少しできる」が増加しているのは、在日日数の長期化によって日本語に次第に慣れてきてはいるが、習熟には至っていないことを示しており、また、世代が進み、若年齢のブラジル人が多くなってきていることも日本語能力の低下を招いていると言う[喜多川 1995 p.174-175]。

 

 

(3) 社会保険に加入している外国籍定住者数に関する統計はなく、また、そもそもどれだけの外国籍定住者が雇用労働者として働き、被保険者資格を本来的に有しているのかを示す公的資料もない[布川 1997 p.200]。しかし、布川は、浜松市で1996年に行われた外国人検診会の受診者データから、日本の社会保険にカバーされているのは10%ほどのブラジル人であると推計している[布川 1997 p.204]。

 

 

(4) (3)と同様の受診者データから推計している[布川 1997 p.193]。

 

 

(5) 島田は高岡市において当地域の日系人の就業構造を明らかにする目的で200010月、日系人対象のアンケート調査を行っている。アンケート回収数65のうち、富山県在住の日系人は57であり、これには3名の日系ペルー人が含まれる。質問項目は、来日時期、来日動機、居住地、職業、生活状況についてである。島田はアンケート調査より日系人の居住地域として回答のあった高岡市とその周辺地域(富山市、新湊市、砺波市、小矢部市、小杉町)を高岡地域と呼んでいる[島田2000 p.55]。

 

 

(6) ブラジル人登録者の多い都道府県は、上位から愛知県(47,561人)、静岡県(35,959人)、長野県(19,945人)となっており、富山県は全国で18番目にブラジル人登録者が多い都道府県となっている[平成13年度版 『在留外国人統計』法務省 p.62

 

 

(7) 島田は、実際の生産現場では日系人はどのような労働力として位置づけられているのかという問題意識のもと、200010月、アンケート回答で最も就業者の多かったアルミ製品製造企業に対してアンケート調査を行っている。高岡市の「アルミニウム懇話会」に加盟しているアルミ製品製造企業48社のうち、31社から回収し、うち11社が日系人雇用の経験があった。調査内容は、企業規模、製品特性、日系人雇用開始年、日系人従業員数、日系人雇用動機などについてである[島田2000 p.60]。