ニュースメディアの変容

―その娯楽化傾向をめぐる一考察―

大西 美里

 

 

 

―目次―

はじめに

第1章 ニュース番組の歴史

1−1 テレビ放送の発展

1−2 ニュース番組の変遷と現状

2 娯楽化傾向をめぐる一考察

2−1 広がる問題意識

2−2 娯楽化傾向の要因

第3章 調査の概要

第4章 調査の分析と考察

おわりに

      

参考文献

      資料

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はじめに

 

 私達は、世の中で何が起こっているのかを知るためにニュースを見る。今、何か重大なことは起こっていないだろうか、最近外国で起こった事故はどうなったのだろうか。テレビニュースはその答えとなる情報を手軽に、そして速く伝えることが出来る。もはや、ニュースは生活の中で欠かすことのできないものと言える。

では、どのような情報がニュース足り得るのだろうか。一般的に、ニュースは次の3つの特質を備えている。第1に、ニュースとは人々が新しいと認識する情報である。第2に、ニュースとは公的な情報である。第3に、ニュースとは人々の関心を集める情報、あるいは人々がみずからの利害と関わると判断する情報である。そして、これらの資格を満たした情報のなかから、マス・メディア(制作側)の取捨選択、編集・加工といった過程を経てニュースは作られていく。(大石・岩田・藤田[2000]

また、制作側ではニュースを担当する部局(報道局)とワイドショーやドキュメンタリーなどを担当する部局(情報局、生活情報局、編成局など)の間に明確な仕切りがあるが、一般の視聴者が認識することはまずない。もともと娯楽機能が強いテレビの場合には、ドラマやバラエティー、芸能、音楽など報道以外の番組が多く、また報道・情報系番組にしても朝の情報番組、ワイドショー、スポット(定時)ニュース、キャスターニュース(ニュースショー)、ニュース解説など多様な形態がある。また近年、ニュース番組やワイドショー、情報番組が扱う内容には重複する部分も多く各形態の境界線は曖昧になってきていると言えるだろう。この論文では、様々なメディアの中でも社会的影響力の最も大きいテレビに焦点をあて、このようなニュース番組の現状を探っていくこととする。

第1章では、ニュース番組の変遷、第2章ではニュース番組の娯楽化傾向についての先行研究を見ていき、第3,4章では、内容分析調査からニュースの現状を明らかにする。そして最後に全体のまとめを行っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第1章 ニュース番組の歴史

 

ここでは、ニュース番組が現在の形にまで至る過程を見ていきたいと思う。このニュース番組の歴史については、萩原編著、横山、斎藤、川端、李、福田の『変容するメディアとニュース報道―テレビニュースの社会心理学―』の第1章「ニュースメディアの変遷―「テレビ報道」小史―」から参考にした。

 

1−1 テレビ放送の発展

 日本でテレビ放送が始まったのは1953年である。その年の2月1日にNHK、828日に日本テレビが開局した。その後55年にKRT(現TBS)59年にNHK教育、NET(現テレビ朝日)、フジテレビの3局が開局している。このように最初から公共放送と民間放送の2本立て体制となっていることは日本のテレビ放送の大きな特徴であろう。

 こうしたテレビ局の開局に伴って、テレビ受像機は一般家庭に急速に普及していくこととなる。そして60年代中盤には、テレビ受像機は日本全国にほぼくまなく行き渡り、各家庭の必需品となった。その後、60年にカラー放送が開始すると、白黒テレビはカラーテレビに置き換えられ、75年にはカラーテレビの普及率が90%に達している。

 こうしてテレビ受像機が普及し、放送局や放送時間が増えるにつれて日本人の生活の中でテレビは大きな位置を占めるようになっていく。NHKが1960年から5年おきに実施している「国民生活時間」調査でのテレビ平均視聴時間の推移をみると(1.1参照)1960年から1965年にかけて大幅な伸びをみせた後、75年頃までテレビを見る時間が着実に増えていることがわかる。その後、80年代に入って減少に転じたが、90年代にはいってから再び増加の兆しをみせている。いずれにしろ、65年頃から日本人のテレビ視聴時間は平日で3時間程度、土日はそれ以上の水準を維持しており、人々の生活の中にテレビというメディアが深く浸透していることは明らかである。

 放送時間が拡張し、番組製作能力や放送技術が向上するにつれて、それまでドラマや娯楽番組を中心にしていた民放の番組編成は、80年代以降徐々に報道志向を強めていく。そうした番組編成の動向を検証するために、ビデオリサーチ社の資料に基づき15分以上のレギュラー番組に関して、関東地区全局の報道番組の1週間の延べ方法分数と年間平均世帯視聴率を73年から99年までプロットした、萩原ら(2001)の作成した図を、図1.1に示す。なお、ここでの報道番組はニュースと天気予報に限定されている。(萩原他[2001]p9

これをみると80年代以降、報道時間量が急増しており、90年代に入ってからは安定期に入っている。しかし、92年になると若干落ち込みが見られ95年に入って一時増加したものの翌年また落ち込み、その値で安定しているといえる。一方、平均世帯視聴率においては、約7%から8%の間で推移しており、80年、81年に一時10%を越えているものの放送量が増えた90年代移行も一定の水準を保っている。このことから、報道番組の放送時間枠は80年以降拡大され、また、視聴者にも安定した支持が得られているということがうかがえる。このように、報道の時間枠が拡大し、視聴者の一定の評価が得られた結果、80年代に入ってニュース番組はプライムタイムへの進出を果たすことになる。

 

1.1 テレビの平均視聴時間(NHK「国民生活時間調査」に基づく)

調査年度

平日

土曜

日曜

1960

56

 1時間05

 1時間19

 1965

2時間52

 3時間01

 3時間41

 1970

 3時間05

 3時間07

 3時間46

 1975

 3時間19

 3時間44

 4時間11

 1980

 3時間17

 3時間29

 4時間05

1985

 2時間52

 3時間16

 3時間40

1990

 3時間00

 3時間21

 3時間44

1995

 3時間32

 3時間55

 4時間23

 

1−2 ニュース番組の変遷と現状

前節で述べたように、1953年にテレビ放送が開始され、日本人の生活の中でテレビ視聴が大きな位置を占めるにつれて、報道メディアとしてのテレビの役割も大きくなってきた。

テレビ放送の開始時からニュース報道は行われていたが、当初はテレビの特性を活かす体制や技術が整備されておらず、パターンや写真を使った静止画像以外は既存のニュース映画やフィルム映像が使われていた。(「ニュース映画」とは、最新の重要イベントを数分にまとめたもので、他の映画の合間に劇場で上映されていた。(大石・岩田・藤田[2000]p116))しかし、60年以降になると、民放のニュースネットワークの強化、NHKの全国ニュース、ローカルニュースの放送枠の確立など、取材・放送体制が徐々に整備されていった。また、ビデオ関連機器の性能向上に伴い70年代中盤からは、小型ビデオによる取材システム、ENG(Electronic News Gathering)が広く用いられるようになり、記者による現場リポートや臨場感ある現場映像を重視したニュースの放送が可能になった。さらに89年からは、通信衛星を利用して映像を送るSNG(Satellite News Gathering)によって、ニュースの送受信に関する地理的制約も徐々に少なくなっていった。

このようにテレビ報道の歴史は、放送の制度や技術といったハード面の進歩をおいて語ることは出来ないが、以下からは、ニュース番組の内容や形式といったソフト面に焦点を合わせて、日本のテレビニュース番組の変遷の様子を年代ごとにみていくことにする。

 

1960年代の動向―

ある程度の時間枠を確保して重要ニュースを幅広く伝える総合編集のニュースの始まりは、1960年にスタートしたNHK「きょうのニュース」で、アナウンサーが画面に出て原稿を読むという報道スタイルのニュースであった。一方、TBSが6210月に開始した「ニュースコープ」は、現在のキャスターニュースの基礎を築いたと言える。この番組では、「映像を伴うソフトニュースを最初に流す」「スタジオにゲストを呼ぶ」といった方式を導入するなど、伝統的なNHK型のニュースとは異なる番組作りがされた。

 

1970年代の動向―

キャスターニュースの興隆が、1970年代のニュース番組の特徴の一つである。744月に、NHKはマガジン方式のキャスターニュース「ニュースセンター9時(NC9)」を開始して、新しいスタイルのニュース番組を試みている。この番組では、「映像・音声・色彩の重視、同時速報体制の徹底、視聴者の興味に即応した演出といったテレビ的手法を活用して活字ジャーナリズムからの脱却を図る」ことが製作方針とされた。(植田[1978)このような、視聴者の求めるニュースを分かりやすく伝えるという制作方針は、その後のテレビ朝日「ニュースステーション」など民放ニュースにさらに明確な形で反映されていく。

二つめの特徴としては、ローカルワイドニュースの誕生が上げられる。NHKはいち早く59年に全国的なローカルニュースの時間枠を設けていたが、民放地方局は「地元新聞提供のニュースと天気予報」程度のものだった。しかし、70年に青森放送が90分枠の「RABニュースレーダー」という地域密着型の報道情報番組を成功させたのをきっかけに、他の民放地方局も独自のニュースを取り上げるようになっていった。こうして、ローカルワイドニュースの時間枠が設けられ徐々に内容も充実し、時間帯も午後6時台に定着していった。

 

 

1980年代の動向―

定時ニュースを設けているNHKとは異なり、1980年代に入るまで、民法キー局が視聴率の高いプライムタイムにニュース番組を置くことはなかった。プライムタイムへの報道番組の進出に最も大きな役割を果たしたのは、85年にテレビ朝日が久米宏を起用して夜10時台に設置した「ニュースステーション」の成功であろう。この番組は、2034歳の若い視聴者層に支持され、50歳以上の視聴者が多かったNHKニュースとは異なる視聴者層を開拓していった。これに対抗し、他の民放各局も次々にプライムタイムへ進出し、夜10時台に3本の大型番組が競合するニュース戦争が生じた。

また、この時期には夕方6時台にNHKと民放4局のニュース番組が乱立し、夕方の時間帯においてもニュース戦争の様相を呈していた。これは、各局がニュース番組の時間枠を増やして6時台開始に拡大する、それまでは別番組だったローカルニュースとネットワークニュースを一本化するなどの相次ぐニュース番組の改変によるものと思われる。

こうして80年代には、報道の時間枠が大きく拡張して各局のニュース番組が激しい争いを展開するようになったわけだが、それと同時に海外取材体制や国際映像ネットワークの強化によって、報道の国際化が進んだこともひとつの特徴である。

 

1990年代の動向―

1990年代に入って夜の時間帯のニュース戦争が沈静化すると、民放各局は週日朝の情報番組と週末午前の報道番組の拡充に力を入れ始める。

たとえば、92年には「こちら情報部です(TBS)」「報道2001(CX)」「報道多チャンネル(ANB)」が登場、既存の「サンデーモーニング(TBS)」「ザ・サンデー(NTV)」「サンデープロジェクト(ANB)」など従来とは異なる掘り下げ型の報道番組が週末の午前にひしめくことになった。一方、日本テレビの「ジパング朝6」「ズームイン!!朝!」が強い朝の時間帯に、他局は既存の番組の改変や、新しい番組を開設するなど試行錯誤を繰り返すこととなる。

 また、純粋のニュース番組ではないが、スタジオのキャスターを中心にニュース性の高い話題を紹介していくワイドショーという形式の番組は1960年代中頃に続々と誕生してくる。しかし、これらの番組は、当初のニュース性を重んじたニュースショーから徐々に娯楽的要素を強め、ニュースとは異なるショー番組に転化していく。70年代中盤から男女の愛憎や事件、性問題を売り物にするような番組が登場する。80年代になると、芸能ニュース中心のワイドショーに対する批判が高まり、朝のワイドショーは生活情報番組へと変化していく。芸能ニュース、男女関係、ゴシップ・スキャンダル、生活情報などこの種の情報番組も多様化していく。90年代に入るとワイドショーは、「愛の家族」「統一教会」「オウム騒動」「阪神大震災」「いじめ自殺」などの事件を好んで取り上げていく。当事者・関係者への強引な取材、ドラマ調のナレーション、効果音、BGMなどを用いた過剰な演出、生中継の多用といった手法によって芸能ニュースから事件報道へシフトし、ニュースを変質させていった。

ニュース報道・情報番組は、時代によって取り上げる内容や形式を大きく変えてきた。近年の地上波テレビ、とりわけ民放のニュース番組の特徴は、従来の概念では本来のニュースとは言い難い内容を多く取り入れ、視聴者の興味を惹くために様々な演出上の工夫を凝らしている。また、逆にワイドショーでもニュースを取り上げることが普通になってきており、以前よりもニュース番組と情報番組、ワイドショーの境界が曖昧になるような傾向が生じ、多様化する傾向を示している。

 このように90年代には、週末の報道番組、早朝のニュース・情報番組、午前、午後の時間帯のワイドショーなど報道・情報番組が拡充した。また、夕方の民放番組では料理や生活情報、体験リポートなどワイドショーや主婦向けの情報番組で扱われてきたような内容を取り入れており、逆に情報番組やワイドショーでもニュースを取り上げるようになっている。このことから、以前よりもニュース番組と情報番組の境界が曖昧になる傾向が生じていると言えるだろう。

 

―近年の動向―

 最後に近年の動向としては、前述したように朝のニュースの顔として大きな位置を占めていた「ズームイン!!朝!」が、2001年にそれまでの朝7時開始から5時半開始と開始時刻を早め、「ズームイン!!スーパー」となり3時間という大型の放送時間枠を設けたことが大きな変化である。また、ワイドショーにおいても、現在放送されているのは「ザ・ワイド(NTV)」、「ジャスト(TBS)」の2番組だけであり、後者に至っては従来のワイドショー的な内容は減少し、情報番組や企画ものが大半を占めこのようになっている。このように、近年においてもニュース番組の改変が進んでいることは明らかである。

 

以上、各年代を追ってニュース番組の変遷を見てきたが、いずれにしろ報道・情報番組の消長は激しく、そこで取り上げる内容や形式も時代の要請によって大きく変化せざるを得ない。それは、現状のニュース番組においても同様であり大変興味深い点である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第2章 娯楽化傾向をめぐる考察

 

前章で見てきたように現行のニュース番組では、いわゆる政治や経済、社会問題といった堅い真面目な内容に関するニュース「ハードニュース」が伝えられるばかりでなく、芸能関係の話題やスポーツ、料理、天気などに関するニュース「ソフトニュース」や、娯楽的な内容の企画や特集などの割合が増えてきた。このような状況を指してニュース番組の娯楽化傾向が問題とされてきている。そこでこの章では、主としてこれまでの地上波テレビに関する諸研究を参照しながら、“実際に日本で、そのようなテレビニュース番組の娯楽化傾向が見られるのかどうか、また何がその要因となっているのか”考えていきたい。

 

2−1 広がる問題意識

 この節では、ニュース番組の娯楽化傾向をめぐる研究がどのように進んできたのか、どのような点を指して娯楽化と称されてきたのか、探っていくことにする。

ニュース番組の娯楽化傾向について述べられた研究としては、上滝の19885月から6月にかけて首都圏のNHKと民法5局の夕方のニュース番組を20日間にわたって分析したものが最初であろう。上滝は、ニュースの内容に関して「政治」「経済」「社会」「その他(軍事、皇室、宗教)」をハード、「文化(教育、科学、文化、風俗)」「話題(雑記、歳時記、紀行など)」「スポーツ」「気象」「PR」をソフトと分類している。それによると、1970年代までと比べて風俗、話題、スポーツなどを扱う割合が増加し、内容面でのソフト化の傾向が見られたと指摘している。(上滝[1989]

また、19909月から10月にかけて、NHKTBS、テレビ朝日の夕方と夜の番組を2週間にわたって分析した萩原(1992)は、「ソフト」「ハード」に加えて「バイオレント」という枠を設けた分類カテゴリーを用いて分析を行っている。その結果、()ソフト化の傾向が1990年代に入ってさらに進展したこと、()夜よりも夕方の時間帯の番組でソフトニュースの比率が高くなったことを明らかにしている。

 さらに、萩原ら(1999)は、これらのニュース報道の娯楽化(ソフト化、タブロイド化、演出・脚色化)傾向を踏まえて、199711月から12月にかけての1週間、東京の民放5局とNHK総合および衛星放送(BS1)で夕方以降に放送された主要なニュース番組について、内容・形式に注目し分析をおこなっている。これまでの研究は内容についてのものが中心であったため、形式面についての傾向が示された点は特徴的であるだろう。

 その結果、()テレビニュース番組の娯楽化傾向を考えるにあたって、@番組の中に料理、生活情報など柔らかい内容のものを多く含むという内容面における娯楽化(ソフト化)と、AテロップやBGMの使用の増加といった形式面での娯楽化(演出の過剰化)という2つの側面が密接に関連していること、()内容面での娯楽化(ソフト化)については、ソフトニュースあるいはニュースとは言い難いような内容が、萩原(1992)が分析対象とした90年以降に大きく増加した形跡は認められなかったが、大きい比重をしめていること、()ニュース番組の娯楽化は形式面で特に顕著に現れており、1990年と比べ、BGMやテロップの使用などさまざまな手法が大いに用いられていること、()このような形式面での娯楽化の進行は、NHKではなく民放において著しいことなどが明らかにされている。

 また今日、このような傾向は日本のみならず多くの国においてもみられるようであり、ニュースの娯楽化、タブロイド化の問題として広く論議されるようになっている(Franklin,1997Langer,1998Scheuer,1999など)

タブロイド化の語源は、センセーショナルな記事や芸能人のスキャンダルを売り物にしたタブロイド紙からきており、アメリカでは最近、このような新聞を模倣したニュースマガジンと呼ばれる、報道ドキュメンタリーの名を借りた芸能情報系番組が増えている。

 一方、娯楽化されたニュースを“ニュースザック(newszak)”という概念で捉えたフランクリンは、イギリスのテレビニュースにおける徴候として、()国際ニュースが減少し、スポーツや芸能に関するニュースが増加したこと(ソフト化)や、()スタジオでのおしゃべり

や生中継でのやりとりの増加、音楽やCGなどハイテク技術の多用など形式面の特徴を取り上げている。特にフランクリンは、外国関連報道の減少をニュース番組の娯楽化のひとつの徴候として捉えており、また外国の話題を取り上げる場合でも、「飢餓で死んでいく子どもたち」「無力な難民」など人間的興味に訴えるような物語として提示することが多くなったと主張している。(Franklin[1997]

 このように「ニュース番組における娯楽化傾向」は、国内外を問わず広く論じられ問題とされてきており、今日のテレビニュース番組の確かな傾向であることが裏付けられる。

 

2−2 娯楽化傾向の要因

テレビは主として「映像と音声で伝達するメディア」である。また、テレビは「ニュースも伝えるが、娯楽や教養、教育も提供するメディア」である。これらはテレビのニュースに“テレビらしさ”を与えてくれる。この節では、まずニュースを伝えるメディアとしての特性に注目し、その特性がテレビニュース全体にどのような影響を及ぼし視聴者にどのような効果・影響を与えるのか見ていくことにする。

なおこの節は、萩原編著、横山、斉藤、川端、李、福田の『変容するメディアとニュース報道―テレビニュースの社会心理学―』の第3章「ニュースメディアとしてのテレビ特性」(新聞と対比して報道メディアとしてのテレビ特性を論じたもの)及び、第6章「ニュースの情報提示形態と認知効果」を参考にして、後続の章で行う内容分析を考察するうえで重要なテレビの特性と効果の理念的枠組みをまとめていく。

 

2−2−1 メディア特性とニュース 

1,同時性・速報性

 テレビにとって一番のセールスポイントは、同時()中継が可能であることである。発生と同時に取材現場から生放送で映像及び音声を送り、視聴者に今起こっている事柄を伝えることができる。これは、SNGシステムの普及によるところが大きく、テレビの同時性を本格的に実現し、速報性を一段と強めた。その反面、中継の場合にはデスクによるチェックや判断が加えられない映像と音声を、送り出してしまうという事態も生み出している。もちろんニュースとして何を取り上げるかという判断の際に、このような同時性・速報性を活かせるものを好んで取り上げる傾向があることは言うまでもない。

 

2,時間性とアクセスに関する諸条件

 a.時間帯的拘束性と時間量的拘束性

  テレビニュースは2つの時間的拘束を有している。まず第1に、時間帯についてのものである。テレビニュースはそれが放送されている時間にテレビの前にいなければ見ることができず、時間帯拘束的であると言うことができる。第2に、時間量についてのものである。例えば30分のニュース番組なら、30分という時間をかけなければ見ることができない。今放送されているニュースを早送りするわけにはいかず、時間量的拘束性という特性を持っている。

 b.視聴順序に関する拘束性

  時間に関する3つ目のポイントは、時間の流れについてである。テレビは、放送局が提示する順番でしか見ることができず、視聴順序が拘束されているといえる。

 c.他チャンネル番組との排他性

  時間帯拘束性の結果として、同時間帯に放送されている他社の番組との間に排他的・競争的な関係がある。そのために、放送局の編成担当者は他チャンネルの編成を見て、同じネタでも内容の充実や演出を変える、内容の競合を避けて独自性のある企画をぶつけるという工夫をすることになる。このことは視聴率競争という問題にもつながっていく。

 d.アクセスの場所的拘束性

  テレビには場所の制約が大きい。受像機という道具や放送電波を受信できる環境と設備の存在が必要であり、場所的拘束性をもつ。

 e.日常性・浸透性

  テレビは見たいところだけ見る、何かをしながら見ることが可能であり、ある種の気軽さ、カジュアルさがあると考えられる。これには、テレビがニュースを伝えるだけのメディアではないということが関係しており、テレビメディアは日常性・浸透性を備えているといえる。

 

3,情報の質と量

 a.映像と音声

テレビニュースは動画映像(静止映像も含む)と音声によって伝えられる。テレビはどんな場合にも必ず何らかの映像を必要とする。一方、音声は情報を伝達する役割が非常に大きい。映像と音声どちらも欠かすことのできない要素であり、この2つが複雑に絡み合ってテレビニュースは作られる。

 b.サウンドバイトかリポートか

  映像・音声の使い方について、サウンドバイトかリポートかという問題がある。ニュースに短く引用される政治家などの発言や所見を録画したビデオ素材のことを「サウンドバイト(sound bite)」という。ニュースの伝え方には次の3通りの方法があり、どの方法を採るかによって視聴者に与える印象は大きく異なる。

A.取材者は原稿を書くだけで、その原稿をスタジオなどにいるキャスターやアナウンサーが読み上げる方法。

B.取材された政治家などのサウンドバイト(当人の映っているビデオ映像および同録の音声)で伝える方法。

C.取材者が画面に顔を出して自分自身の声でリポートする方法。

               (萩原編・横山・斎藤・川端・李・福田[2001]p59

Aは最も単純な方法であり、B、Cの方法はテレビの特性をより活かした表現である。いずれの場合にもテレビの場合には、画面に登場する人物が注目されるという特性があり、このことはテレビニュースの基本的な特徴を作り上げている。

 c.映像の多義性

  映像と音声で伝えるテレビニュースは多義的である。例えば、記者会見をしている政治家のサウンドバイトについて、その発言内容を集中して聞いている視聴者や、その表情に注目している人、またその服装に注目している人もいる。こういった具合で、見る側の角度によって様々な解釈が可能である。

 d.短縮の仕方―映像・音声の編集―

  報道内容は必ず現実の短縮である。30分間にわたって行われた大臣の記者会見を例に考えてみる。その場合、大臣の発言の中から内容を最もよく伝えると思われる部分を、数十秒から数分のVTR映像に切り出して使う。つまり、一部をサウンドバイトとして具体的なまま残し、他の部分を捨てるというやり方である。

 e.現実性・訴求性

  テレビは現実性や訴求性にすぐれている。テレビの映像は、雰囲気や臨場感、ストーリーの伝達などに優れ、そこに登場する人物の表情や言葉の裏に隠された気持ちまで明らかにしてしまう。

 f.主題主義とエピソード主義

  上記のような特性を反映して、テレビニュースは主題主義から次第に“テレビらしい”スタイルに移行していった。それは一言でいうと、エピソード中心主義とでも呼ぶべきもので、主題や出来事よりも人物に焦点が当てられる。例えば、大統領選挙の報道において、政策方針など事柄の本質よりも、人物(大統領候補)のパフォーマンスの巧拙や適否が中心に伝えられる、というような具合である。

 g.人物に焦点を当てるメディア

  テレビでは取材対象となる人物だけでなく、それを取材し伝える人物にも注目が集まりやすい。同じニュース原稿を読み上げるにしても、読み手の年齢および性別、姿形や衣装、表情や化粧、声の良し悪し、読み方の巧拙、その人が有する人生経験などによって千差万別である。この点において、ニュースの最終的な伝達者であるアナウンサーやキャスターが重要である。

 h.娯楽性

  以上に述べてきたような諸特性から、テレビは娯楽性に傾斜しやすいメディアである。その原因には、(1)メディア特性の直接的な影響、(2)多くの娯楽番組などを含む番組構成の流れの中におかれているため娯楽番組と同列に見られやすい環境にあることの2つがある。特に、長時間枠のニュースでは、最初から最後まで視聴者をひきつけておくために、各種の娯楽番組的演出が行われることになり、さらにこの傾向を強めている。

 

4,社会的・経済的特性

 a.視聴率競争

  NHKの公共放送と、民放の商業放送とでは、経営方針が異なる。しかし、最低限の採算がとれなければ放送が成立しないという点では同じことであり、経営的諸条件を離れては成り立たない。

  特に、テレビの経済的特性として視聴率競争がある。このことは、前に見たテレビの物理的特性や時間的諸特性によるものであるが、その結果として、それぞれの時間帯においてある水準の視聴率を稼がなければならず、そのことがテレビ番組の内容や演出、出演者などに影響を与える。ニュースにおいても、項目や内容、また取り上げ方や視点などの影響を及ぼしている。また、顧客に注目すると、主たる客層である若年層を惹きつけるために内容・演出を工夫する傾向もある。

  ちなみに、NHKのような公共放送においても同様で、視聴率競争から自由な放送機関は独占の場合を除いて存在しないだろう。

b.経済基盤を支える顧客層

  主たる客層について、NHKと商業放送(民放)では異なっている。まず、NHKの場合には受信料を払っているのは世帯主である。一方、商業放送の場合には、多くのスポンサーが主たる購買層と見ている若年層に見てもらえるかどうかが問題である。このように、どのような顧客に伝えるか、取り込むかといった認識と戦略は、伝えるべきニュースの選択や伝え方にも影響を与える。

 

2−2−2 ニュースの与える認知的効果

1,現場映像の有無がもたらす効果

 第1章でも触れたように、テレビニュース番組におけるニュースの提示形態は、これまで大きく変化してきた。初期のニュースは、「フィルムニュース」のようなニュース映像にナレーションをつけたのみのものであった。その後、スタジオでの席についたアナウンサーが記事を読み上げるだけで現場映像のない「トーキングヘッド」のみのニュースが主流になる。そして、トーキングヘッドを基本に、ニュースの現場映像やグラフィックスが織り込まれる現在のようなニュース形態になった。

このように変化してきたニュースの提示形態について、どの形態が最も視聴者に理解されやすく、記憶されやすいかという研究が行われており「学習効果(learning effect)」と「散漫効果(distraction effect)」の2つの効果が確認されている。

「学習効果」…映像のついたニュースの方がより記憶を高める効果がある。特に、詳細な現場映像がテレビニュースで用いられることによって、テレビニュースの理解や記憶が向上する。

 「散漫効果」…テレビニュースに映像が付与されることによって、映像と音声に不協和を起こしたり、注意を散漫にしたりするという現象。

               (萩原編・横山・斎藤・川端・李・福田[2001]p156

このように、映像と音声の関係は多様であり、ニュースによっては映像が「学習効果」をもたらすこともあれば、散漫効果をもたらすこともある。

 

2,テロップ効果

最近のテレビニュースには、ニュース導入部のトーキングヘッド映像にそのニュースの見出しともいえるようなテロップがついていることが多い。また現場のスポット映像にはその映像を説明する(例えば、その映像の場所や時間、またはその登場人物の名前など)ためのテロップがついている。

テロップに関して様々な実験が行われており、映像の解釈や記憶に影響を与えることが分かっている。このような研究を受けて福田(1999)は以下3点にまとめている。

(1)テロップは視聴者の理解・記憶を高める学習効果を持つ。

(2)背景となる音声情報や映像情報の理解を阻害する効果を持つ。

(3)情報の中の重要な部分を指示する効果を持つ。

(萩原編・横山・斎藤・川端・李・福田[2001]p159

 このようにテロップが視聴者を引きつけることによって、ニュースに対する視聴者の印象を操作することもありうる。

 

3,イグセンプラー効果

 街頭インタビューや、識者のコメント、問題の当該関係者などのいわゆる「生の声」をメディア上に提示することを「イグセンプラー」と呼ぶ。このイグセンプラーは近年テレビニュースでもよく利用されている。

 イグセンプラー効果に関して、イグセンプラーの意見の方向性やその数の構成が、視聴者の世論の認知に影響を与えるということが明らかになっている。例えば、賛成派2名、反対派4名のイグセンプラーを使用した場合、このニュースに対する視聴者の評価が少なからず批判的な方向へ傾いてしまうというような具合である。テレビニュースが報道の中立や公正、客観報道を目指す場合、こういったイグセンプラーの使用に関しても注意が必要である。

 

この節では、テレビというメディアの持つ特性が私達に与える影響を考えてきた。それによると、どうやらテレビニュースはメディアの特性を一層発揮する方向に変化を遂げ、私達視聴者に与える影響も複雑になってきているようである。そして、そのような特性がニュース番組の娯楽化傾向を必然的にもたらしたと言えるだろう。

 

以上の先行研究を受けて、次の章から実際に“テレビニュースにはどのような傾向が見られるのか”娯楽化という視点から探っていくことにする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第3章 調査の概要

 

本章では、萩原他(1999)らの行ったニュース番組の内容分析に基づいて、テレビにおけるニュース報道の特徴を内容、形式の両面にわたって述べ、ニュース番組の娯楽化傾向を中心に、変化の有無や経営形態、放送時間帯などの番組属性による違いを検討していく。

 

3−1 内容分析の方法

 まず始めに、内容分析とはどのような研究方法であるか説明しておく。内容分析とは、アメリカのマス・コミュニケーション研究のなかでひとつの研究法として発展してきたものである。一般に内容分析研究とは、マス・メディアのメッセージ内容を、新聞記事の面積やテレビ番組の放送時間量などの形で定量的に測定し、その測定結果からマス・メディアを考察することとされている。つまり、@人々のコミュニケーション活動の結果を研究対象とし、Aその構成要素(たとえば、記事の面積)を、Bある体系的な方法で(たとえば、面積を「定量的に」測定して)整理・要約しなおすことをいう。(大石・岩田・藤田[2000]p159

今回の分析対象となったのは、20011114()から1116()までの週日の3日間に、民放4局(日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日)とNHK総合で放送された、5時以降の夕方のニュース番組と10時以降の夜のニュース番組である。収録された番組の総数は30本、放送時間に換算すると2405(1847分が純粋なニュース項目の分数)となる。それらの番組名、放送局、曜日、時間枠などを一覧表の形にし表3.1に整理しておく。なお、今回の調査は富山でニュース番組録画を行ったため、民放ではどの全国ネット局がどの地方放送局に対応しているかも示しておいた。

次に、放送局ごとに延べの放送時間(分数)、および後述するニュース項目の数を整理した表3.2の結果を見ていく。放送分数は、テレビ朝日が462分と最も長い時間を報道に充てており、逆にTBS261分と最も短くなっている。また、放送分数が長ければ項目数も長くなっており項目数は放送分数に比例している。しかし、1時間当たりの項目数を見てみると、最も放送分数の長かったテレビ朝日は24項目、逆にTBS31項目と対称的な結果を示した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3.1 収録番組一覧(511番組)

番組名

全国局

地方局

開始時刻

時間

備考

みんまいけ富山/ニュース7

NHK総合

――

1810

85

 

ニュース10

NHK総合

――

2200

55

 

ニュース・プラス1

日本テレビ(NTV)

KNB

1655

120

 

きょうの出来事

日本テレビ(NTV)

KNB

2255

30

金曜は25

ニュースの森

TBS

TUT

1755

60

 

筑紫哲也NEWS23

TBS

TUT

2255

55

金曜は65

スーパーニュース

フジテレビ(CX)

BBT

1655

120

 

ニュースJAPAN

フジテレビ(CX)

BBT

2330

60

 

スーパーJチャンネル

テレビ朝日(ANB)

HAB

1650

130

 

ニュースステーション

テレビ朝日(ANB)

HAB

2155

75

 

注)ここでの開始時刻、時間は通常の放送枠を示す。

 

3.2 放送局別の延べ放送分数、ニュース項目数

 

分数

項目数(一時間平均)

NHK

383

157(24)

日本テレビ(NTV)

326

154(28)

TBS

261

137(31)

フジテレビ(CX)

415

186(26)

テレビ朝日(ANB)

462

190(24)

合計

1847

824(26)

 

 

3−2 内容分析の枠組み

 それでは、実際に収録したビデオを見ながら量的な内容分析の作業に入っていく。まず、ニュース項目を分析の単位として、その内容や形式を数量化するための作業を開始した。なお、ニュース番組には、オープニングの挨拶やインターミッション(中断)、エンディング、あるいはCMなどニュース項目ではない、つなぎの部分が含まれるが、それらはここでの分析対象から外している。また、その日の主要な項目を番組の冒頭にまとめて紹介した部分や途中の予告映像なども分析対象から外しているが、番組の中に設けられたアニメのコーナー、視聴者企画、生活情報、スタジオでのゲストとキャスターの対談などについては、たとえニュースとは言いがたいとしても、それが番組の主要な内容として構成されている限りは分析の対象に含めている。

 今回の内容分析の枠組みは、97年の分析結果との比較を行うために二章で紹介した萩原ら(1999)の先行研究に依拠して作成している。

 まず、分析作業は番組ごとに行われるため、タイトル、放送曜日、時刻、長さ()などの番組属性を数値化して記載する。次いで番組に含まれる個々のニュース項目について順番(ラインナップ順位)をつけ、その長さ()を測定する。ここまでの作業によって、各ニュース項目がどの番組属性で、何番目に何秒間放送されたのかを識別することができる。そのうえで、各項目がどのような報道内容であるか内容・形式の両面から、以下11の項目に従って数値化の手続きを進めていく。なお、こうした手続きに用いたコーディング・スキームを本稿の末尾に収録しておく。(資料12参照)

 

1,コーナー

各ニュース項目が、番組内のいずれのコーナーに属するものかを、@「デイリーニュース」A「ダイジェスト」B「企画・特集」C「スポーツ」D「気象・天気予報」E「その他」の6つのコーナーに識別する。注1)

2,テーマ

各ニュース項目の主たるテーマを@「政治」A「経済」B「外交・国際関係」C「軍事・防衛・戦争・革命」D「犯罪・事件・事故・裁判・災害」E「行事・風物」F「気象・天気」G「スポーツ」H「科学・技術」I「芸能」J「文化・芸術・教育」K「生活・家庭・料理」L「話題」M「その他」の14のカテゴリーの中から選択し、さらに@〜Bをハードニュース、CDをバイオレントニュース、E〜Mをソフトニュースとする。なお、ここでの「バイオレント」というカテゴリーは「ソフト」と「ハード」という2分法では後者に属するものであるが、その中で人間同士の争いや生死に関わるような出来事を独立させてある。注2)

3,主たる舞台

主たる舞台となる場所を@「日本」A「外国」B「日本と外国(国際)」の3つのうちいずれかに分類する。注3)

4,中心的素材

@人間に焦点を合わせたものか「人間を中心」、A人間以外に焦点を合わせたものか「人間以外を中心」を識別し、人間の場合には職種や活動領域、人間以外の場合にはそれらが何かをあらかじめ用意された9つのカテゴリーに基づいて判断する。注4)

5,構成

映像や音声の構成など形式面の特徴に着目し、@キャスターやアナウンサーが読み上げる「リードニュース」注5)か、A現場からの「記者リポート」注6)か、Bビデオに収録された映像や音声を流す形の「ビデオ構成」か、Cあるいはそれらを組み合わせたもの「その他(複合)」の4つに分類する。

6,リード・対話

スタジオでのリード注7)やコメント、あるいは対話、論表・評価の有無やリードを行う人数を記録し、さらにスタジオ映像についてはリードの部分とそれ以外の部分を分けて長さを計測する。

7,発言チェック

誰がニュースを伝えたか、@「メインキャスター」A「サブキャスター(天気・スポーツキャスター等もここに分類)」B「記者・リポーター」C「ナレーター」D「スタジオ・ゲスト」E「コメンテーター(解説員など)」のそれぞれについて男女の別を記録したうえで該当者の発言の有無をチェックする。注8)

8,インタビュー 

テレビ報道番組では、インタビューという形式によって特定の争点に関する意見を提示することがあるため、今回の分析では、その有無をチェックするだけでなく、インタビューされた人たちを@「一般人」A「識者」B「当事者・関係者」とカテゴリー化して、それぞれの該当者数を実数で記入することにした。注9)

9,マスキング

 @映像マスク、A音声マスクを使用したかその有無をチェックする。

10,テロップ                                                             

テレビ画面に頻繁に登場するテロップによる文字情報について@「ニュース項目の見出し」A「ナレーション代わり」B「場所・地名・人名など」C「ニュースやコメント内容の要約」D「外国語発話の日本語字幕」E「日本語発話の文字化」という具合に使用目的や文脈を区別したうえで、それぞれの使用の有無を記録する。10

11,映像・音声

映像や音声を使用したかどうか、映像に関しては@「図表(地図、天気図など)」A「模型」B「コンピューター・グラフィック(CG)」、音声に関しては@「BGM」A「ブリッジ音」B「効果音」のそれぞれについて使用の有無を記録する。

12,ニュースの扱い方

そして最後に、主観的な判断にならざるを得ないが、それぞれの項目で扱われたニュースの提示の仕方について@「視聴者の興味をひくための工夫や演出(工夫・演出)」がどの程度なされていたか、Aその内容はどの程度「ニュースらしいか、報道に値するか(ニュース性)」といった2項目を設定し、それぞれについて「低」「中」「高」の3段階での評価を行った。11

 

 それでは、以上に述べた枠組みに基づいて個々の項目を分析し数値化の手続きを行ったうえで、次の章からは分析・考察を行っていくことにする。

 

 

第4章 調査結果の分析・考察

 

それでは、最近の日本のテレビニュースに見られる全体的特徴について、@内容(ソフト化の傾向)とA形式(演出過剰化の傾向)のそれぞれの側面から検証していく。

今回の分析では、日本のテレビニュース番組の全体的傾向だけでなく年代による変化にも注目する。この点に関しては、199711月から12月にかけての1週間に東京の民放5局とNHK総合および衛星放送(BS1)で夕方以降に放送された主要なニュース番組について分析した、萩原ら(1997)の研究結果を参照していくことにする。また、報道傾向を規定する要因として、経営形態(NHKと民放)、放送時間帯(夕方と夜)の違いも併せて検討していきたい。

なお一言付け加えておきたいのだが、今回の調査は、20019月に起きた同時多発テロという歴史的事件以降、アフガニスタンへの攻撃が行われるという状況の中で行った。そのため、ニュース番組にテロ関連・外国関連のニュースが通常よりも多くなるなどの若干の影響が見られるだろう。しかし、ニュース番組の根本的な性質まで変えてしまうとは考えられない。よって、この点に関しては多少の考慮を加えながら考えていくことにする。

 

1,各コーナーの構成比

 テレビのニュース番組の構成を考えてみると6つに分けることができる。こうしたコーナー別の構成比はそれぞれの番組の性質を反映していると思われるため、ニュース番組の娯楽化傾向を知るうえで大きな手がかりとなるのではないだろうか。

 それでは、項目数に基づいて全体のコーナー別構成比を求め、97年の結果と比較し、さらに経営形態別、放送時間帯別に整理した結果を表4.1に示す。

 

4.1 コーナー別の構成比

 

年代

NHKと民放

放送時間帯

1997

2001

NHK

民放

夕方

デイリーニュース

48%

54.9%(452)

59.2%(93)

53.8%(359)

59.1%(359)

45.8%(121)

ダイジェスト

20%

12.7%(105)

10.2%(16)

13.3%(89)

12.0%(89)

14.4%(38)

企画・特集

10%

10.7%(88)

7.0%(11)

11.5%(77)

12.9%(77)

6.1%(16)

スポーツ

11%

12.7%(105)

10.2%(16)

13.3%(89)

7.1%(89)

24.6%(65)

気象・天気予報

6%

5.0%(41)

8.3%(13)

4.2%(28)

4.8%(28)

5.3%(14)

その他

5%

4.0%(33)

5.1%(8)

3.7%(25)

4.1%(23)

3.8%(10)

 

最初に、全体の傾向から見ていくことにする。割合の高いものから挙げていくと、「デイリーニュース」が54.9%、「ダイジェスト」「スポーツ」がともに12.7%、次いで「企画・特集」が10.7%となり、あとは10%に満たなかった。97年の結果と比較すると、「デイリーニュース」が最も高い比率を占める点は同じであるが、今回はその比重が97年の48%から若干増加している。その代わりに「ダイジェスト」の割合が97年の20%から約7%減少していることが認められる。その他については、「スポーツ」が11%、「企画・特集」が10%と続き、今回の結果と同じような構成比を示している。

次いで、放送局による違いをみると、NHK59.2%、民放は53.8%となり若干ではあるが差が見られ、全体に民放よりもNHKの方がデイリーニュースを重視していることが認められる。民放ではその分「スポーツ」(13.3%)、「企画・特集」(11.5%)、「ダイジェスト」(13.3)に力を入れている。「気象・天気予報」についてはNHK8.3%、民放が4.2%とNHKの割合の方が高くなっている。

さて、97年の結果において「デイリーニュース」の比重が夜よりも夕方の番組で大きくなることが明らかにされているが、それは今回の分析結果にも再現されている。97年においては夕方と夜の差は約5%であった。一方今回の結果では、夕方は59.1%、夜は45.8%となり、約13%の差がみられた。

他に、放送時間帯において差が見られたのは「企画・特集」と「スポーツ」で、「企画・特集」については夕方(12.9%)、夜(6.1%)と夕方の方が約6%と若干多くなっている。「スポーツ」については夕方(7.1%)、夜(24.6%)と夜の方が約18%も多くなっている。

 

考察

以上の結果をまとめると、@全体のコーナー構成比にそれほど大きな差はみられないが、「デイリーニュース」の割合は若干増加傾向にある。A民放よりもNHKの方が「デイリーニュース」、「気象・天気予報」を重視している。BNHKよりも民放の方が「企画・特集」「スポーツ」「ダイジェスト」を重視している。C「デイリーニュース」において夕方と夜の差は以前よりも増加している。D夕方の番組は「企画・特集」に、夜の番組は「スポーツ」により力をいれているという5つの特徴、変化が見られた。

ニュース番組において中心となるのが「デイリーニュース」であることは、「デイリーニュース」が最も一般的な通常のニュース報道であるということからも妥当な結果である。しかし、「デイリーニュース」において今回は若干の増加傾向がみられており、萩原ら(1999)の研究では減少傾向であったが、今回は回復の兆しが見えているといえるだろう。また、民放よりもNHKにおいて「デイリーニュース」が重視されていること、「気象・天気予報」の割合が高いことから、NHKには必要な情報をすべてもらすことなく伝えようとする姿勢がうかがえる。逆に、民放は「企画・特集」や「スポーツ」など視聴者の注目を惹くニュース項目を中心に据える傾向があると言えるだろう。一方、放送時間帯による差はより大きくなる傾向が見られ、特に夕方は企画・特集が多く、夜はスポーツが多くなっている。夕方は主婦向けに企画された情報コーナーや視聴者プレゼントなどのソフトな内容を取り入れており、長時間視聴者を惹きつけておくための工夫と考えられる。夜においてはスポーツの割合が高く、これは、「ニュースJAPAN(CX)」を除く全ての番組がスポーツコーナーを設けていることが原因であろう。

 

2,内容面の構成比

 それでは次に、現行のニュース番組の報道内容についてテーマ、主たる舞台、中心的素材の3項目について見ていくことにする。

 

2−a テーマ(ハード・バイオレント・ソフト)

ニュース番組の娯楽化傾向を探っていく上で、ハードニュースであるかソフトニュースであるかということは重要な点である。

 それでは、項目数に基づいて「ハード」「バイオレント」「ソフト」の全体の構成比を求めて97年の結果と比較すると共に、経営形態別、放送時間帯別に整理した結果を表4.2に示す。

 

4.2 主たるテーマ別の構成比

 

年代

NHKと民放

放送時間帯

1997

2001

NHK

民放

夕方

ハード

31%

14.9%(123)

21.0%(33)

13.5%(90)

15.7%(88)

13.3%(35)

バイオレント

23%

30.5%(251)

24.2%(38)

31.9%(213)

24.1%(135)

43.9%(116)

ソフト

46%

54.6%(450)

54.8%(86)

54.6%(364)

60.2%(337)

42.8%(113)

 

 まず、全体の構成比について97年の結果と比較しながらみていく。最も大きな比重を占めているのはソフトニュースでどちらも同じであるが、その割合をみると46%から54.6%と多少増加の傾向にある。一方、ハードニュースは31%から14.9%に減少し、バイオレントニュースは23%から30.5%に増加している。

経営形態による違いをみると、ソフトニュースはNHK54.8%)、民放(54.6%)とほぼ同じ割合を示している。一方、ハードニュースの割合はNHK21.0%)、民放(13.5%)とNHKの方が約7%程高くなっている。バイオレントニュースはNHK24.2%)、民放(31.9%)と民放の方が約8%程高くなっている。

放送時間帯による違いはバイオレントニュースとソフトニュースに見られる。夕方の番組ではソフトニュースが60.2%と非常に高い割合を占めている。他方、夜の番組は唯一ソフトニュース(42.8%)、バイオレントニュース(43.9%)とバイオレントニュースが夕方に比べて特に高い割合を示している。

以上の結果より、@全体としてハードニュースは減少傾向にあり、ソフトニュースは増加傾向にあるということ、A民放よりもNHKの方がハードニュースに力を入れていること、BNHKよりも民放の方がバイオレントニュースニュースに力を入れていること、C夕方の番組で特にニュース番組のソフト化が進んでいることD夜の番組においてバイオレントニュースが重視されていることが確認された。

 

2−b 舞台となる国・地域(国内ニュースと外国関連ニュース)

外国関連の報道の減少は、ニュース番組の娯楽化傾向の一要因として挙げられているが、実際はどうなっているだろうか。

項目数に基づいて「国内」「国外」「その他(国際)」の全体の構成比を求めて97年の結果と比較すると共に、経営形態別、放送時間帯別に整理した結果を表4.3に示す。

 

4.3主たる舞台別の構成比

 

年代

NHKと民放

放送時間帯

1997

2001

NHK

民放

夕方

国内

75%

70.4%(580)

64.3%(101)

71.8%(479)

78.4%(439)

53.4%(141)

国外

16%

22.0%(181)

23.6%(37)

21.6%(144)

15.9%(89)

34.8%(92)

その他(国際)

8%

7.6%(63)

12.1%(19)

6.6%(44)

5.7%(32)

11.7%(31)

 

 まず、全体の構成比は「国内」(70.4)、「国外」(22.0)、「その他(国際)(7.6)となり、97年に比べて「国内」「その他(国際)」ニュースが減少し、「国外」ニュースが増加して多少の変化が見られる。これは前置きで述べた同時多発テロの関係であると思われる。この点を考慮に入れて、経営形態、放送時間帯の2要因を考えても、「国内」ニュースが最も大きな比重を占めていることに変わりはない。その中で唯一放送時間帯別の夜の番組については「国内」ニュース(53.4%)、「国外」ニュース(34.8%)となっており、97年の結果である「国内」(72%)、「国外」(17%)から比べると、「国内」ニュースの減少、「国外」ニュースの増加が認められる。

以上より、中心となる舞台では@国内ニュースはニュース番組全体の中で約6割以上を占め(夜においては半数)、国内ニュースがニュースの中心であること、A夜の番組においては国外ニュースが重視されていることが認められた。

 

2−c 中心的素材(ニュースの主体)

「人間」に焦点を合わせているのか、「人間以外」を中心素材としているのか、項目数に基づいて全体の構成比を求め、97年の結果と比較すると共に、経営形態別、放送時間帯別に整理した結果を表4.4に示す。

 

 

4.4 中心的素材別の構成比

 

年代

NHKと民放

放送時間帯

1997

2001

NHK

民放

夕方

人間に焦点

38%

38.8%(320)

31.2%(49)

40.6%(271)

32.9%(184)

51.5%(136)

人間以外に焦点

62%

61.2%(504)

68.8%(108)

59.4%(396)

67.1%(376)

48.5%(128)

 

全体としてみると、「人間に焦点」を当てたニュース項目が38.8%、「人間以外」を主体とする項目が61.2%となっており、97年からあまり変化は見られない。経営形態別で見ると、NHK31.2%)よりも民放(40.6%)の方がより「人間に焦点」をあて、民放(59.4%)よりもNHK68.8%)の方がより「人間以外」を中心としている。ここで、NHKにおいて97年の結果と比較を行ってみると、97年では「人間に焦点」が24%、「人間以外に焦点」が76%であった。このことから、NHKにおいても、人間に焦点を置いたニュースへの1割程の増加が見られることが分かる。また、放送時間帯について夜の番組では「人間に焦点」をあてたニュースが51.5%、「人間以外」を中心とする項目が48.5%と「人間に焦点」とするニュースが半数を超えており、これは今回初めて見られた傾向である。

以上から、中心的素材については@NHKよりも民放において「人間に焦点」を当てたものが多いこと、Aしかし、NHKにおいても萩原ら(1999)の調査時よりも「人間に焦点」を当てたものの割合に若干増加がみられること、B夜の番組においては「人間に焦点」を当てたものが半数を超えていることがわかった。

 

考察

内容に関する3つの側面から分析してきた結果をまとめていく。@97年の結果に引き続きハードニュースが減少、ソフトニュースの増加の傾向にある。A国内ニュースが中心であることに変わりはないが若干国外ニュースが増加傾向にある。B夕方のニュースにおいてはソフトニュースが高い割合を占める。C夜のニュースにおいては国外ニュースが多少高い割合を示している。D人間に焦点を当てたニュースが増加している。以上5つの変化・特徴が見られた。

国外ニュースの減少をフランクリンは娯楽化の指標としていたが、今回は逆に国外ニュースの増加が若干見られた。しかし、国外ニュースの増加の中でも、特に人間に焦点をおいたものが増加しているのではないかと推測される。実際に、夜の番組では人間に焦点を当てたもの、国外ニュース、バイオレントニュースの3つが増加傾向にあるという結果が得られた。一方、夕方のニュースでは人間以外に焦点、国内ニュースが中心となっている。

まとめると、全体において娯楽化の傾向が引き続き認められ、特にそれは民放において顕著であるが、NHKにおいても娯楽化の波に反しているわけではない。また、夕方の番組では国内ニュースを中心に地域情報など「企画・特集」を多く取り入れながら伝え、夜の番組では国外で起こった人間の生死に関わるような事件を人間性に訴える形で伝える傾向があるといえるのではないか。

 

3,形式面

 これまでは、主としてニュースの報道内容に関する分析結果をみてきたわけだが、これまで繰り返し述べてきたように、ニュースの娯楽化といった現象を捉えるには、どのような内容のニュースかということだけでなく、それをいかに伝えるか、といった形式面での特徴も併せて考慮する必要がある。そこで次からは、ニュースの伝達形式、テロップ、インタビュー、マスキングなど各種の手法、映像、音響効果の使用など、様々な形式的特徴を取り上げていくことにする。

 

3−a ニュースの伝達形式(映像及び音声の構成)

 まずは、ニュースの伝達形式、映像・音声の種別を全体として捉え、4種類のタイプに分けて考えてみることにする。

 項目数に基づいて、各タイプの構成比を求め、97年の結果と比較すると共に、経営形態別、放送時間帯別に整理した結果を表4.5に示す。

 

4.5 ニュースの伝達形式別の構成比

 

年代

NHKと民放

放送時間帯

1997

2001

NHK

民放

夕方

リードニュース

46%

30.9%(255)

32.5%(51)

30.6%(204)

26.4%(148)

40.5%(107)

記者レポート

5%

8.1%(67)

10.8%(17)

7.5%(50)

7.3%(41)

9.8%(26)

ビデオ構成

36%

46.4%(382)

40.8%(64)

47.7%(318)

54.8%(307)

28.4%(75)

複合(その他)

12%

14.6%(120)

15.9%(25)

14.2%(95)

11.4%(64)

21.2%(56)

 

 まず、全体の構成比を割合の高いものから順に挙げていくと、「ビデオ構成」(46.4)、「リードニュース」(30.9)、「複合」(14.6%)、「記者レポート」(8.1%)となる。97年の結果においては「リードニュース」(46%)、「ビデオ構成」(36%)の順に割合が高かったことから、97年に比べて「リードニュース」が減少し、「ビデオ構成」が増加するという大きな変化が認められる。

 次に放送局による違いを見ると、多少のばらつきはあるものの、NHKと民放共に全体の構成比とほぼ同じような割合を示しており差は見られない。一方、放送時間帯による構成比には変化がみられる。夕方の番組では、「ビデオ構成」が54.8%と半数を占めているのに対し、夜の番組では、28.4%と3割に満たなくなっている。反対に、「リードニュース」においては、夕方では26.4%、夜では40.5%となっている。このことから、夕方の番組では「ビデオ構成」が、夜の番組では「リードニュース」が中心となっているという結果が得られる。しかし、夜の番組では「複合(その他)」も21.2%と高い割合を示している。

 

3−b スタジオでの言動

 スタジオでのキャスターや他の出演者の言動に注目し、その全体的傾向を調べ97年の結果と比較すると共に、経営形態別、放送時帯別に整理した表4.6を見ていく。

 

4.6 スタジオでの言動

 

年代

NHKと民放

放送時間帯

1997年

2001

NHK

民放

夕方

リードの有無

74%

75.5%(622)

82.2%(129)

73.9%(493)

77.5%(434)

71.2%(188)

論評・評価

23%

8.6%(71)

7.0%(11)

9.0%(60)

6.8%(38)

12.5%(33)

スタジオでの対話

19%

14.7%(121)

15.3%(24)

14.5%(97)

14.1%(79)

15.9%(42)

 

まず、リード(ニュース項目前の事前の導入)について見ていく。「リード」を伴う項目は全体の75.5%である。経営形態に注目すると、民放(73.9%)よりもNHK82.2%)。において10%ほど割合が高くなっている。論評・評価の有無については、何らかのコメントがなされた項目は8.6%で97年の23%からするとかなり低く、他の場合を見ても10%に満たない。しかし、夜の番組においては唯一12.5%と若干高くなっている。スタジオでキャスターや出演者の対話がみられた項目においては、どの項目を見ても15%程の比率が記録され97年から若干の減少が見られる。

 

3−c ニュースの伝達者

 誰がニュースの伝達に関与したか、その全体的傾向を調べ97年の結果と比較すると共に、経営形態別、放送時帯別に整理した表4.7を見ていく。

4.7 ニュースの伝達者

 

年代

NHKと民放

放送時間帯

1997

2001

NHK

民放

夕方

メインキャスター

60%

56.3%(464)

65.6%(103)

54.1%(361)

62.5%(350)

43.2%(114)

サブキャスター

36%

41.0%(338)

43.4%(68)

40.5%(270)

34.3%(192)

55.3%(146)

記者,レポーター

17%

20.4%(168)

21.7%(34)

20.1%(134)

20.4%(114)

20.5%(54)

ナレーター

35%

34.2%(282)

20.4%(32)

37.5%(250)

28.8%(161)

45.8%(121)

スタジオ・ゲスト

3%

1.6%(13)

1.3%(2)

1.6%(11)

1.3%(7)

2.3%(6)

コメンテーター

3%

2.8%(23)

5.1%(8)

2.2%(15)

2.0%(11)

4.5%(12)

やはりメインキャスターの発言率が56.3%と最も高く、次いでサブキャスター(41.0%)、ナレーター(32.4%)、記者・リポーター(20.4%)という順になり、スタジオのコメンテーターやゲストの発言率は3%に満たなかった。97年の結果と比較すると、多少の差はあるものの順序の変化はない。しかし、放送時間帯に注目すると、夜の番組において違いが見られ、サブキャスター(55.3%)、ナレーター(45.8%)、メインキャスター(43.2%)とニュースへの関与率の高い伝達者に関して変化が見られる。

 

3−d インタビュー

 インタビューの対象についてその全体的傾向を調べ、97年の結果と比較すると共に、経営形態別、放送時帯別に整理した表4.8を見ていく。

 

4.8 インタビューの対象

 

2001

NHKと民放

放送時間帯

NHK

民放

夕方

一般人

9.7%(80)

10.2%(16)

9.6%(64)

9.5%(53)

10.2%(27)

識者

6.6%(54)

4.5%(7)

7.0%(47)

6.8%(38)

6.1%(16)

当事者・関係者

21.0%(173)

22.3%(35)

20.7%(138)

20.9%(117)

21.2%(56)

 

インタビューの相手としては、やはり「当事者・関係者」が最も多く起用されており、そうした形式を採用した項目は全体の21.0%に達している。「一般人」を相手に通行人などの街の声を聞くといった形式は9.7%、専門家などの「識者」の意見を伺うといった形式は6.6%となり、その利用率は共に低くなっている。その他、放送局、放送時間帯においても同様で違いはほとんど見られなかった。

 

3−e テロップ

 各種テロップの使用率の全体的傾向を調べ、97年の結果と比較すると共に、経営形態別、放送時帯別に整理した表4.9を見ていく。

 

4.9 各種テロップの使用率

 

年代

NHKと民放

放送時間帯

1997

2001

NHK

民放

夕方

項目見出し

85%

66.5%(548)

59.9%(94)

68.1%(454)

43.9%(116)

77.1%(432)

ナレーション代わり

29%

5.7%(47)

4.5%(7)

6.0%(40)

3.6%(20)

10.2%(27)

地名、人名など

82%

75.1%(619)

74.5%(117)

75.3%(502)

76.3%(427)

72.7%(192)

内容の要約

37%

64.7%(533)

48.4%(76)

68.5%(457)

62.5%(350)

69.3%(183)

日本語字幕

7%

15.9%(131)

19.1%(30)

15.1%(101)

11.3%(63)

25.8%(68)

発話の文字化

10%

12.9%(106)

3.2%(5)

15.1%(101)

11.8%(66)

15.2%(40)

 

 テロップの各項目において使用率の高いものから上げると「地名、人名など」(75.1%)、「項目の見出し」(66.5%)、「内容の要約」(64.7%)となり、共に6割以上で使用されている。それ以外の項目では、外国語の発話の「日本語字幕」(15.9%)、日本語の「発話の文字化」(12.9%)、「ナレーション代わり」の字幕(5.7%)の順になっている。経営形態別で比較すると、「内容の要約」や「日本語発話の文字化」は民放の方が多用しており、特に後者の字幕はNHK3.2%、民法が15.1%となっている。

 

3−f 映像・音響効果

 それでは図表、模型、CGBGM、ブリッジ音(BR)、効果音(SE)などの、映像・音響効果の使用率を整理し、その全体的傾向を調べ97年の結果と比較すると共に、経営形態別、放送時帯別に整理した表4.10を見ていく。

 

4.10 映像・音響効果の使用率

 

全体

NHKと民放

放送時間帯

1997

2001

NHK

民放

夕方

図表

22%

26.3%(217)

34.4%(54)

24.4%(163)

21.8%(122)

36.0%(95)

模型

1%

0.6%(5)

1.3%(2)

0.4%(3)

0%(0)

1.9%(5)

CG

11%

14.6%(120)

14.0%(22)

14.7%(98)

10.4%(58)

23.5%(62)

BGM

37%

41.6%(343)

5.7%(9)

50.1%(334)

39.1%(219)

47.0%(124)

ブリッジ音

18%

16.7%(138)

0.6%(1)

20.5%(137)

14.5%(81)

21.6%(57)

効果音

7%

11.9%(98)

1.9%(3)

14.2%(95)

13.4%(75)

8.7%(23)

 

まず、視覚的装置である映像に関しては、図表の使用率が26.3%と比較的高く、97年と比べても増加の傾向が認められる。それに次いで、CGの使用率が高く、14.6%となっている。しかし、模型の使用率については1%とほんのわずかで模型を使うことはあまりないことがわかる。また、経営形態による違いを見ていくと、図表においては民放(24.4%)よりもNHK34.4%)での利用が多くなっている。放送時間帯別を見ると、CGが夜の番組で23.5%と高い使用率になっている。また、模型においては民放(0.4%)よりもNHK1.3%)で幾分多く利用されている。

 次に、音響効果の使用率に移る。全体ではBGM41.6%)、ブリッジ音(16.7%)、効果音(11.9%)という使用率が記録されている。そして、放送局による違いをみると、これらは専らNHKよりも民放で多用されていることが確認される。民放のニュース番組ではBGM50.1%となりその半数以上で流されているとことがわかった。また、音響効果についてはNHKではほとんど使用が認められなかった。

 

考察

以上の分析結果より形式面による特徴や変化をまとめていくことにする。まず伝達形式については、@全体として「リードニュース」が減少し、「ビデオ構成」、「複合」の割合が高くなっており、よりテレビの特性を活かした伝達手段が用いられるようになっていること、Aしかし、夜においては「リードニュース」の割合が高いが、一方「複合」の割合も増加していることがわかった。

次にスタジオでの言動については、@NHKにおいて「リード」の使用率が高いこと、A夜の番組においてコメントの発言率が高いという結果が認められる。誰がニュースに関与したかについては、@メインキャスターの発言率が最も高くなっていること、A夜の番組において、サブキャスター、ナレーター、メインキャスターの順に関与率が高いことがわかった。テロップに関しては、「内容の要約」や「日本語発話の文字化」は民放の方が多用しており、特に後者の字幕は、民法においての使用が中心となっていることがわかった。

最後に、映像・音響効果については、@全体として図表・CGの使用率が増加傾向にあること、A特に図表の使用率が高いこと、B音響効果においてはBGMが最も多用され、とくにソフトニュースで使用されること、C音響効果の使用率は全体として増加傾向にあること、Dしかし、NHKにおいて音響効果はあまり使用されないことがわかった。このことから、映像・音響効果の使用率は97年当時に比べると増加傾向にあるが、それは民放に限ってのことであると言えるだろう。

まとめると、形式面については引き続き様々な手法が用いられる傾向が見られ、それはNHKより民放に、夕方の番組よりも夜の番組に、より顕著に表れているということができるだろう。

 

4、各コーナーにおける報道内容・伝達形式の特徴

 どのようなニュースを、どのような形で伝えるかということは、ひとつには番組内のコーナーの種類によって規定されることが大きい。

 そこで、主たるテーマ、舞台となる国・地域、中心的素材、伝達形式のこれまで検討してきた事項について項目数に基づく構成比をコーナー別に整理して表4.11に示す。

 

 

 

 

 

   表4.11 各コーナーにおけるテーマ、舞台、素材、伝達形式の構成比

 

主たるテーマ

主たる舞台(国)

ハード

バイオ

レント

ソフト

国内

国外

その他

デイリーニュース

17.7%

42.9%

39.4%

61.5%

34.5%

4.0%

ダイジェスト

22.9%

41.9%

35.2%

86.7%

4.8%

8.6%

企画・特集

3.4%

11.4%

85.2%

90.9%

8.0%

1.1%

スポーツ

0%

0%

100%

70.5%

8.6%

21.0%

気象・天気予報

0%

0%

100%

95.1%

0%

4.9%

その他

48.5%

9.1%

42.4%

54.5%

12.1%

33.3%

 

中心的素材

映像及び音声の構成(伝達形式)

人間

人間

以外

リード

ニュース

記者レポート

ビデオ構成

複合

デイリーニュース

30.3%

69.7%

18.8%

13.7%

53.8%

13.7%

ダイジェスト

38.1%

61.9%

67.6%

0%

27.6%

4.8%

企画・特集

44.3%

55.7%

8.0%

4.5%

60.2%

27.3%

スポーツ

91.4%

8.6%

40.0%

0%

46.7%

13.3%

気象・天気予報

2.4%

97.6%

63.4%

2.4%

17.1%

17.1%

その他

21.2%

78.8%

72.7%

0%

3.0%

24.2%

 

 まず、テーマ別の分類に注目すると、「スポーツ」「気象・天気予報」のコーナーで扱われる項目のすべてがソフトニュースに分類されるのは当然であろう。それ以外のコーナーでは「企画・特集」においてソフトニュースの割合が85.2%と際立って高くなっている。97年の結果と比較すると97年は「企画・特集」の中でソフトニュースの占める割合が70%であった。

「デイリーニュース」と「ダイジェスト」においては多様なテーマが取り上げられていることが分かる。最も大きな比重を占めているのは共にバイオレントニュースで約4割であった。そして、ソフトニュースが約3割、ハードニュースが2割と続いている。また、ハードニュースの割合は「デイリーニュース」で17.7%、「ダイジェスト」で22.9%と「ダイジェスト」の方が高い割合を占めている。97年と比較すると、バイオレントニュースの割合は「デイリーニュース」「ダイジェスト」共に32%、ハードニュースの割合は「デイリーニュース」が41%、「ダイジェスト」が31%とハードニュースが減少し、バイオレントニュースが増加する傾向が見られる。

 次にニュースの舞台についてみると、やはり国内ニュースの比重がどのコーナーをみても最も高くなっている。しかし、「デイリーニュース」においては国内が61.5%、国外が34.5%と国外ニュースの比重が他のコーナーに比べて若干大きくなっている。97年の結果と比較すると、国外ニュースの割合は「デイリーニュース」が11%、「ダイジェスト」が35%となっており、ダイジェストの方が国外ニュースを扱う比重が大きく、今回と逆の結果であった。

 ニュースの中心的素材については、当然のことながら「スポーツ」では人間に、「気象・天気予報」では人間以外に焦点をあてることが多い。それ以外のコーナーについては、「人間以外」に焦点を当てる割合の方が高くなっている。97年の結果と比較すると「企画・特集」で変化がみられた。97年は「人間」が25%、「人間以外」が75%であったが、今回は「人間」が44.3%、「人間以外」が55.7%となっており、人間に焦点を当てたものが増加傾向にあることがわかる。

そして最後にニュースの伝達形式について調べてみると、リードニュースは「ダイジェスト」で67.6%、「気象・天気予報」で63.4%と共に6割を超えている。「気象・天気予報」のコーナーでは気象予報士を起用することが多いこと、「ダイジェスト」のコーナーは次々とキャスターがニュースを読み上げていく形式が多いことが原因であると思われる。「デイリーニュース」、「企画・特集」ではビデオ構成が60.7%と最も高くなっている。「スポーツ」ではリードニュースが40%、ビデオ構成が46.7%となっている。また、記者レポートを採用するのは「デイリーニュース」(13.7%)、「企画・特集」(4.5%)、「気象・天気予報」(2.4%)の3コーナーだけで、デイリーニュースでの使用が主流であることがわかる。

 

考察

 各コーナーの特徴については、@「企画・特集」の内容はよりソフトなものに変化していること、A「デイリーニュース」と「ダイジェスト」において97年から変化がみられたことの2つの変化があった。

「企画・特集」では国内のソフトなニュースを、人間以外に焦点を当ててビデオ構成で伝えることが多く、先に分析したように夕方の番組で「企画・特集」の割合が高いことから、夕方の特徴の一つとして上げられるのではないだろうか。また、テロ関連のニュースはバイオレントニュースに分類されることが多かったこと、「デイリーニュース」でテロ関連の国外ニュースが伝えられ「ダイジェスト」で政治・経済の国内ニュースが伝えられることが多かったことから、「デイリーニュース」はその日に起きた最も興味を惹くと思われる項目を扱う傾向が見られ、何か大きな事件や事故があった際には、どのコーナーよりも影響を受ける。そして、「ダイジェスト」においても「デイリーニュース」で扱いきれなかった項目を「ダイジェスト」という形で伝えることなどから、「デイリーニュース」の内容に従って「ダイジェスト」も影響を受けると言えるのではないかと考えられる。

 

 

 

 

 

おわりに

 

この論文では、“現在、ニュース番組は娯楽化傾向にあるのではないだろうか”という問題提起から出発し、実際にニュース番組にはどのような特徴があるのか明らかにしようとしてきた。「ニュース番組の娯楽化傾向は@内容面、A形式面に現れている」という先行研究の結果から、2つの側面に着目し分析した結果をまとめていくことにする。

 

内容面について

(1)97年の結果に引き続き、今回も若干ソフトニュースの増加傾向にある。

形式面について

(2)形式面での娯楽化は進む傾向にある。

(3)NHKよりも民放に娯楽化の傾向があり、民放はテレビ特性を活かした手法を用いる傾向にある。

その他

(4)夕方の番組では「企画・特集」のコーナーが多く、国内のソフトなニュースを多く扱い情報番組のような内容になっている。

(5)夜の番組では人間に焦点を当てた内容や、演出の多用がみられ、より視聴者をドラマ性のある内容で惹きつける傾向がある。

(6)デイリーニュースとダイジェストには関係性があり、その日のニュース項目に影響を受ける。

 

まず、内容面に関しては、政治・経済・外交といった堅い内容よりも、視聴者の興味を惹きつける身近な、生活、地域ニュースといった内容の比率が大きくなること、つまり、ソフトニュースの割合が高くなることが確認された。これは、97年においても同様に確認された点であったが、特にハードニュースが減少しソフトニュースが増加していること、人間に焦点を当てたニュースの増加、国外ニュースの増加が若干見られた。また、国外ニュースにおいても人間に焦点をおいたものが増加しているのではないかと推測される。これは人々によりドラマ性のあるニュースを提供しているといえるだろう。NHKにおいては、民放ほど「ソフト」化は進んでいなかった。しかし、NHKにおいても、その傾向は若干であるが確認され娯楽化の波に反しているわけではない。

次に、形式面に関しても97年同様に、娯楽化の傾向が引き続き見られ、リードニュースが減少し、ビデオ構成が増加するという伝達形式の複雑化や、映像、音響、テロップの多用などさらにこの傾向は強まっていることが伺える。そしてそれは、NHKより民放に、夕方の番組よりも夜の番組に、より顕著に表れていることが確認されている。NHKと民放の違いにおいては、BGMの使用が一般的であるがNHKではほとんど使用されないこと、民放では理解可能な日本語をわざわざ文字化し、視聴者の注意を方向づけるテロップを使用するなどが大きな特徴である。夕方と夜の番組の違いにおいては、映像・音響に関して夕方よりも夜の方が多く使用されていたことがあげられる。

このように、内容面・形式面の特徴や変化から、娯楽化の傾向は97年度より引き続き認められ、特にそれは民放において顕著であることが確認された。しかし、内容面についての娯楽化がこのままさらに進行してしまうかというとそうではなく、4章で述べた「デイリーニュース」の増加に見られるように内容の見直しも多少はされてきているようである。

最後に、その他では内容・形式の両面を総合して導き出された結果をまとめてある。夕方の番組では国内ニュースを中心に扱い、ローカル局主体の地域情報などを「企画・特集」という形でグルメや料理、生活情報、体験リポート、対談、音楽演奏など、ニュースとは言い難い内容を取り入れ伝える傾向にある。これは、夕方のニュースが約2時間の枠を設けた大型番組であるために視聴者を長時間惹きつけておく必要があること、ローカル局において地域情報が多く取り上げられることが要因であるだろう。一方、夜の番組では国外で起こった人間の生死に関わるような事件を人間性に訴える形で伝える傾向にある。これは、夜の番組がその日に起こったニュースを伝えることを中心とし、一つのニュースをより大きく掘り下げて取り上げる傾向があるためであると考えられる。

また、コーナーにおける関係性として、「デイリーニュース」はその日に起きた最も興味を惹くと思われる項目を扱う傾向が見られ、何か大きな事件や事故があった際には、どのコーナーよりも影響を受ける。そして、「ダイジェスト」においても「デイリーニュース」で扱いきれなかった項目を「ダイジェスト」という形で伝えることなどから、「デイリーニュース」の内容に従って「ダイジェスト」も影響を受けると言えるのではないだろうか。

 

結論として、「ニュース番組の娯楽化」とは、どういう種類のニュースや情報を取り上げるかという内容面よりも、それをいかに伝えるかという形式面に強く反映されており、各種テロップやCGなどにみられる視覚装置、BGMや効果音などの音響効果、あるいはスタジオでの対話や現場生中継の多用など、様々な演出によってショーアップしようとする傾向があるといえるのではないだろうか。BSデジタル放送やCS放送、ケーブルテレビ、インターネットが普及し、めまぐるしく変わるメディアの中で、日本のテレビにおけるニュース報道は今後も様々な形で展開し変化していくと考えられる。今回の調査結果に満足することなく、変容するメディア時代におけるニュースの在り方に今後も注意をはらっていきたい。

 

 

 

 

 

 

1)テレビニュース番組の構成を考えると、その日に起きた出来事や新たな展開など通常のニュース報道の形式である「デイリーニュース」、いくつかのニュースを簡潔にまとめて次々に紹介した「ダイジェスト」、事前の準備に時間をかけ番組の売物として新聞のテレビ欄などに掲載されることの多い「企画・特集」、専門のキャスターを起用して伝えられることの多い「スポーツ」「気象・天気予報」などのいくつかの独立したコーナーが設けられている。今回の分析では、萩原ら(1999)の判断基準である以上の特徴に従って分別した。なお「その他」には株式市況や交通情報が含まれている。

2)主たるテーマについて、萩原ら(1999)の判断基準では「その他」が設定されており、ハード・バイオレント・ソフトの3カテゴリーには含めていなかった。しかし今回は、なるべく「その他」に分類する項目のないように配慮し、どうしてもあった場合は「その他」としてソフトニュースに含めることにした。

3)主たる舞台については、日本、外国、日本と外国(国際)の3つに分類した。萩原ら(1999)の判断基準では「その他」も設定されていたが、今回の調査では「その他」に分類されるものがほとんどなかったため設定しなかった。

4)中心的素材について萩原ら(1999)では、「人間に焦点」を当てたもの、「人間以外に焦点」を当てたもののそれぞれを9つのカテゴリーにさらに分類しており、今回もそのカテゴリーを使用した。(資料1参照)しかし、実際の分類の際に下位カテゴリー9つへの分類に際しての詳しい判断基準の説明がなくこの分類は難しかった。そのため、もっとも重要である「人間に焦点」か「人間以外を焦点」かの2点にまず注目して分類し、分析の際に下位カテゴリーへの言及は避けることにした。

5)「リードニュース」はキャスターやアナウンサーの音声を主体としたものであるが、実際に画面にアナウンサーが出て読み上げるという形のニュースは非常に少ない。リードニュースの場合にはビデオ映像や各項目の見出しを伴う場合が多く純粋なリードニュースと言えるものは少なかった。今回はそのような場合のニュース項目においても「ビデオ構成」や「複合」に分類するのではなく「リードニュース」に含めることにした。

6)「記者リポート」は現場を取材した記者の報告を中心としたものである。記者リポートには、生中継でLIVE放送されたものと事前に録画されたものの両方を含めている。今回は、アフガニスタンでの現地リポートなど、生中継・録画の両方において多用されていた。

7)リードとは、スタジオでの次のニュース項目に関する発言や紹介などの導入部分のことである。

8)誰がニュースを伝えたか特に「メインキャスター」と「サブキャスター」の分別について、夜のニュース番組においてはその番組の顔となるキャスターが明確に配置されていたため、そのメインキャスター以外をサブキャスターとした。ここで問題となったのは夕方のニュース番組で、夕方では全国ネット局とローカル局の両方が1番組にまとめられている。そのため、全国ネット局とローカル局のそれぞれで、メインキャスターとサブキャスターを設定することにした。

9)ここでのインタビュー対象は、記者会見等での大統領や政治家へのインタビューは除く。

10)今回の分類では、テロップの「ニュース項目の見出し」「ニュースやコメント内容の要約」の2つについて、前者はニュース項目の最初にテレビ画面の下に表示されるものとし、それ以外のテレビ画面上の右下や右上に表示されるようなものを後者とした。

11)ニュースの扱い方については、萩原ら(1999)においても客観的な判断基準が示されておらず、特に今回の調査では私個人の偏った評価になってしまうことが考えられるため考察の対象には含めなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

引用・参考文献

 

     Tuchman,G.1978Making news. 鶴木真・桜内篤子(訳)(1991)『ニュース社会学』三嶺書房

     大石裕、岩田温、藤田真文(2000)『現代ニュース論』有斐閣アルマ

     御堂岡潔、斉藤慎一、川端美樹、萩原滋、李光鎬、横山滋、福田充(2000)「テレビニュース番組の娯楽化傾向に対する視聴者の評価」『論集(東京女子大学紀要)』51()93112

     萩原滋、斉藤慎一、川端美樹、横山滋、李光鎬、福田充(1999)「変容するメディアとニュース報道―テレビニュースの娯楽化傾向の検証―」『メディア・コミュニケーション』49 130

     萩原滋、横山滋、斉藤慎一、川端美樹、李光鎬、福田充(2001)『変容するメディアとニュース報道―テレビニュースの社会心理学―』丸善出版