第一章 問題関心

 

第一節 導入

 

嶋田 翔太

 21世紀を迎えて6年が経過し、戦争の時代である20世紀と比べ、国と国との交流は格段に進んだ。行き来する人の増加、ひいては外国に住まう人々も増加の一途をたどることとなった。経済大国・日本においては、1990年代、入管法の改正による外国人の労働の合法化と、バブル崩壊による不景気が原因の労働力不足と他国の不況が重なったという背景が加わり、多数の出稼ぎ外国人労働者が日本へ流入してくることとなった。図1を見ると日本の外国人登録者数は増え続けている。その中でもブラジル人、特に明治時代に植民していった日本人の子孫である日系ブラジル人の来日が目立つ。加えて、日本の隣国である中国からの流入も無視することはできないものとなっている(図1)。

図1 国籍別外国人登録者数(平成15年末)

国  籍

1985

1990

1995

2000

2001

2002

2003

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

総数

 

850,612

1,075,317

1,362,371

1,686,444

1,778,462

1,851,758

1,915,030

 

中国

1)

74,924

150,339

222,991

335,575

381,225

424,282

462,396

 

ブラジル

 

1,955

56,429

176,440

254,394

265,962

268,332

274,700

 

ロシア

 

b)322

b)440

2,169

4,893

5,329

6,026

6,734

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(出典:日本の統計 2-29より筆者作成)

 


 ブラジル人は静岡県や愛知県などの東海地方、群馬県に多いことはよく知られているが、富山県を含む北陸地方にも多い。図2は富山県の外国人登録者数の年次推移である。1990年から急激に増加し、富山県登録外国人数の中で最多の割合を占めるようになった。北陸地方は、プラスチック関連の製造業などが発達しており、労働力を大量に求めている地域である。そのため、出稼ぎのため働きに来ているブラジル人が集中しているのである。中国人は就学目的の留学生が多く、全国的に広く分布している。ただ、今日では就労目的に来日している人も多いようである(図3)。

図2 在富ブラジル人数の推移



(出典:とやまの国際交流 39号 p.233より筆者作成)

図3 在富中国人数の推移



(出典:とやまの国際交流 39号 p.233より筆者作成)

 さて、出稼ぎ、就学と異なった目的を持って来日した彼らであるが、両者とも日本における在住外国人の2割程度を占め、長期滞在の傾向が強まってきている。これは日本に来て働いてみると思いのほか収入がよく、母国に帰っても仕事の機会に恵まれず、日本にいたほうが水準の高い生活を送れることを知ったためであると考えられる。
 この報告書はそうした長期化の様相を帯びる外国籍家族の生活についてインタビュー調査を行い、併せて、彼らの経験する問題について考察を行うものである。