3ー3 大人から見たマンガがこどもに与える影響


 3−1では「マンガのイメージ」を、3−2では「マンガと活字メディアの比較」と自分自身とマンガという視点で見てきたが3−3では、そういった個人的意識をふまえて、もし日常生活で子ども(アンケートに答えた人の多くは自分の子どもを想定したとだろう)がマンガを読むことに対し、大人として、また親としてどう感じ、どのような態度を取るのかについて見ていきたいと思う。
 はじめは、Q11〜14、Q19と年齢のクロス表を中心に考察するつもりであった。予想として、例えば20代の若者は比較的マンガに対しては寛容で、30代〜40代は、ちょうど小・中学生の親の年代なので少し厳しい態度をとるなど、興味深い反応が見られるかもしれないと思ったからである。ところが、意外にもあまり年代によって顕著な差は見られなかった。
 そこで方針を変えて、まず単純集計の結果を簡単に説明して、さらにいくつかのクロス表からわかったことをまとめていくことにする。

 単純集計の結果

 Q11、12、19の単純集計の結果を、回答の多い順にならべていく。
・Q11 小説とマンガではどちらをより多く子どもに読んでほしいか。
               (%)
     
同じくらい47.2
小説43.9
マンガ 2.3
・Q12 子どもにとってマンガは悪影響を及ぼすものか。
                        (%)
     
そういうマンガも少しはある73.0
そういうマンガが多い23.2
そういうマンガはない 2.4
・Q19 学齢期の子どもがマンガを読んでいたらどのような態度をとるか。
                     (%)
     
止めもせず奨めもせず55.1
内容によっては止める30.0
内容によっては奨める12.0
 まずは上の結果について考察してみたい。Q11については「同じくらい読んでほしい」と思っている人が47.2%と約半数で1番多く、それよりやや少ない43.9%が「小説」と回答している。「マンガ」と答えた人は2.3%でほとんどいなかった。やはり、小説とマンガの回答には大きな差が見られたのが気になる。2と3の解答だけに着目すると小説の支持者が圧倒的に多いと言える。また、「同じくらい」と答えた人についてはどちらかに価値を置くわけではなく、マンガも小説も平等に扱っていると考えていいだろう。とすると、ここでは「小説派」と「平等派」の二つに区別できるだろう。
 次に、Q12については「少しはある」という回答が73.0%で1番多く、「多い」という回答の23.2%より3倍も上回っている。「少しはある」ということは逆に言えば「ほとんどない」ということなので、必ずしもマンガは悪影響と考えている人が多いわけではないようだ。
 Q19については「止めもせず奨めもせず」という回答が55.1%と半数以上で1番多かった。マンガを読む行為自体がそれほど悪いことと受け止めている人が多いわけではないようだ。また、この中にはあまり良い内容ではないと知りつつ黙認してる人も含まれていると思われる。考えられることは、親として子どもが何をしてるかについて口出ししないとか、何だかの理由や環境によって親子間に距離があるとか、親子や家族内の関係の変化などであるが、この事については、また後で触れることにする。次に多かったのが、「内容にとっては止める」の30.0%であるが、これは親としては当然の態度であるだろうが、子どもにしてみれば口うるさい親として映るかもしれない。また、2と3の回答についてのみ比較すると2の“内容”は普通に考えて決して良いものではなく、3は学問的になど何だかの価値が認められるものであろう。しかし、2に比べて3の回答が12.0%少なかったのはあえて奨めることはしないということだろうか。

 クロス集計の結果

 前にも述べたようにクロス表からはあまり良い結果は得られなかった。かろうじて検定に通った、Q12の「マンガは子どもに悪影響を及ぼすか」とQ19「子どもがマンガを読むことに対してどのような態度をとるか」を図式化した。

 Q12、は1と2をまとめて、「マンガは悪影響を及ぼすことが多い」と考えるグループ(以下Aグループ)とし、3と4をまとめて「マンガは悪影響を及ぼすとは限らない」と考えるグループ(以下Bグループ)の2つに分けた。Q19は、1と2をまとめて「マンガ禁止派」、3はそのままで「中間派」、4と5をまとめて「マンガ推奨派」の3つのグループに分けた。
 図3−3−1を見てみると、Aグループの人は47%が「マンガ禁止派」でBグループの26%の約2倍に近い。ただここで注目したいのは、どちらについても共通して「中間派」が多いことである。図を見ても分かるように、Aグループについてに見れば43%、Bグループについては59%と半数以上を占めている。Bグループの反応については、単純集計の結果からも、マンガを奨めるという態度をとる人自体が比較的少ないので、「中間派」を選ぶ人が多いのはなんとなく分かる。しかし、Bグループについて見てみると、マンガは悪影響を及ぼすと考えながらも、マンガを読むことを止めさせようとしない人が意外にも多いのには矛盾が感じられる。そこには、何か理由があるのだろうか。
 きわめて、個人的な話ではあるが、わたしはマンガを読むのが好きだったためよく親に注意された覚えがあり、口うるさくさえ感じたこともあった。その時の親の気持ちを察すると、マンガ読むくらいなら勉強してほしいということだろう(私自身に日常生活にも問題があったかもしれないが)。親としてそういう気持ちを抱くのは当然な気がする。要するに、マンガ自体が悪影響を及ぼすかという問題以前に、マンガを読むことに費やす時間が無駄に思えるということなのだろう。
 ただ、特にここでは悪影響を及ぼすと感じながら、黙認という態度を取るということについて考えると前述したように、親子関係の変化が関係していると思う。この場合、第3者としての立場から客観的に考えるとマンガを読むことを止めさせようとするのが普通である。では、なぜ止めさせようとしないのか。良く言えば、子どもの行動に干渉せず、子どもの意志を尊重することかもしれない。しかし、逆に言えば子どもに対して無関心、または子どもが何をしているか分からないということではないだろうか。どういう親子関係が理想かについてまでは言えないが、以上の結果から、親子間に微妙に距離あるように感じた。あくまでも推測ではあるが。
(担当 山本 絵里佳)

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