トンデモ「研究」の見分け方・古代研究編 :中間目次 :古代を扱った主な「研究ごっこ」のテーマ :

漢字は日本で作られた?


 漢字についての「研究ごっこ」には、他に「漢字は日本で作られた」というものも、古くから様々な形で存在します(「畑」「峠」「辻」などの、中国の漢字に倣って日本で作られた、いわゆる「国字」の話ではありません。「すべての漢字は日本製だ」という説のことです)。三千年以上も前から甲骨文が中国に存在していることなど全く無視したり、あるいは日本の文明をそれ以前まで根拠もなく引き上げたりと、見るからに怪しさ満点ですが、一つだけ決定的な反証を挙げておきましょう。

 それは「うまへん」の字があって、「うみへん」の字がないことです。
 漢字はいくつかの基本的な意味を表す文字が部首となり、部首をもとにしてさらに新たな文字が作られます。部首になる文字は「人」「山」「木」「日」「水」「糸」「竹」「言」など、人々の生活に密着したものが大半です。
 中国では古くから牛や馬が飼われていましたから、これらは部首になっていますし、虎もなじみの深い動物でしたから、その上の部分が「とらかんむり」という部首になっています。
 ところが日本には虎はいませんし、馬ももともとはいなかったとされています。「虎」も「馬」も虎や馬の形をかたどった象形文字です。漢字が日本で作られたのなら、どうして「存在しないもの」をかたどって基本的な文字を作ることができたのでしょうか。
 一方で「うみ」は島国に住む日本人にとって切っても切れない関係にあります。もし日本人が漢字を作ったのなら、「うみ」を表す基本的な文字ができたはずで、それを部首にして「なみ」「しお」など「うみ」に関係のあるものを表す文字が作られたはずです。ところが実際にはこれらは「海」「波」「潮」など「水」部の文字になっていて、「水」とは川の流れをかたどった象形文字です。中国で文明が興ったのは沿海部ではなく内陸の黄河や長江の流域であり、だからこそ川の流れをかたどった「水」が部首となり、「うみ」は部首にはならなかったのです。漢字が日本で作られたのであれば、これらの事実に合理的な説明をするのは不可能です。
 あなたはそれでも漢字は日本で作られたと信じますか?

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