考証癖が強すぎるとよく人に言われる。確かに考証癖が全くなければ、学問などやってはいられない。わからないことに出くわしたら、すぐに書棚へ飛んで行って辞典や参考書をひっくり返す習性がなければ、少なくとも中国文学の道には進まない方がよい。

 しかし考証癖がありすぎるのもまた困ったもので、日常生活の中でも、ありとあらゆるものを考証したくなるから困る。食料品や洗剤などの入れ物に書いてある「品質表示」や「使用上の注意」が目に入ると、隅々までじっくり読まなければ気がすまない。「クイズ日本人の質問」を見ていても、言葉に関する問題が出るとすぐに辞書を持ち出して、4人の博士が説明し終わる前に正解を見つけてしまうような、興醒めなことをやってしまう。恋人からもらった手紙を並べて字句の考証など始めた日には、百年の恋も醒めるであろう。

 そういうわけで、考証癖の発散のために、論文にはなりそうもない考証の「成果」を、ここに書き連ねてみることにした。中国文学に関することに限らず、また必ずしも考証には限らず、筆者の関心のおもむくまま何でもありとし、朴斎雑志と名づける。勢いに任せて学問的には不正確な記述も多々あろうことをお断りしておきたい。
 まずは以上を持って序となす。 公元2001年11月吉日識す